ボルトやナットがサビてしまって「どうにもこうにも、緩みそうにない……」といったケースに出くわすことは多々ある。そんな時に、様々なアイデアの引き出しを持っているのが、ベテランクラスのサンデーメカニックである。ここでは、ボルトにまつわる様々な事象やトラブル、そしてトラブル回避を想定し、ケミカルのチカラに頼って「現状最善」を目指してみよう。

ボルトのかじり焼付き防止用ケミカル



長年に渡る締め付けでカジッてしまい、緩めようとしても、なかなか緩まなかったり、緩んだっ!!と思ったら、実はボルトが折れていた……なんて経験、ありませんか?バイク用部品の締結の中で、特に、そんなケースが多いのが、マフラーやエキパイフランジの締め付けボルトやナットやテールパイプとサイレンサー本体を締め付けるボルトナットなどなどだろう。後々、そんな事象が起こりやすいと知っていれば、ボルトやナットの締付け時に専用ケミカル剤をネジ山に塗布してから締め付けるのも良い対策だ。マフラー系パーツは、高温と冷却の繰り返しによって、ネジ山が腐食しやすくなり、それが原因で、サビつきやネジ山のかじりを発生させてしまうのだ。このような箇所で利用するボルトやナットの固着防止定番ケミカルとして利用されているのが、かじり防止剤。焼付きを防止するためのカッパーグリスやアンチシーズと呼ばれる各種ケミカルである。

緩んで欲しくないボルトに「ロック剤」



締め付けボルトの中でも、重要保安部品であるブレーキローターの締め付けやブレーキキャリパーボディの締め付けボルトには、メーカー指定でネジロック剤、ネジの緩み防止ケミカルを塗るように指示されているケースが多い。特に、分解組み立て時には、塗布してあったケミカルがネジ山を汚していたり、ゴミとなってネジ山に堆積残留していることもあるので、分解したボルトのネジ山は、ワイヤーブラシや不織布シートで擦って汚れを除去してからパーツクリーナーで洗浄。それから新しい緩み防止ケミカルを塗布して締め付けよう。ネジの緩み防止ケミカルには高強度、中強度などがあるため、サービスマニュアルを参考に使い分けよう。また、タップリ塗り過ぎるのは良くないので、ボルトの太さを考慮して容器ノズル先端から適量塗布しよう。

ベアリング外周の滑りに気がついた!?



ボルトやナットに限ったことではなく、本来なら「固定されていて正解」なのに、外周が滑っていたり、滑った様子があることに気がつくケースがある。例えば、バイクの随所に組み込まれているボールベアリングがそれだ。新品ベアリングに交換しようとホイールやホイールハブからベアリングを抜き取ったところ、本来ならしっかり圧入されているはずのベアリングが、比較的スムーズに抜けてしまうことがある。完全に滑っていたら、ほぼ無抵抗で抜けてしまい、そうなるとケミカルのチカラではどうにもならない(オーバーサイズ化などの修理が必要になる)が、やや緩かったり、アウター側に回転した形跡がある際には、嫌気性封着ケミカル剤(空気に触れない状況になると接着効果を発揮)を使うことで、ベアリングアウターの滑りを回避することも出来る。ここではスリーブリテーナーという商品を利用。

暖めてガツンと冷却→潤滑で効果絶大!!



ボルトやナットがなかなか緩まない……。このまま力尽くで緩めようとしたら、ボルトがネジ切れてしまうかも?と思えるようなときに利用するのが「熱」である。場所によって使い分けが必要だが、ハンディトーチやバーナー、工業用のハンディヒーターがあれば、ボルトやナット、もしくはその周辺をしっかり温めることで、その後の作業がスムーズに進行することもある。つまり「熱膨張」によって、きついネジ山の締め付けを緩め、ボルトやナットを緩めやすくするのだ。

ここで利用しているのはロックタイト社のフリーズ&リリース。国内ケミカルメーカーからも同種のケミカルが発売されているので、イザといったときに手元にあると、本当にありがたい気分に浸れることがある。ヒーターでボルトとナットをしっかり温めたら、ネジ山付近に同ケミカルをブシューッと噴射。すると熱膨張で広がった隙間にケミカルが浸透し、さらにフリーズ効果でボルトが急冷されてごく僅かに収縮し、ボルトナットを緩めやすくする特徴を有している。

POINT

  • ポイント1・工具だけに頼らず高性能ケミカルに頼ることでトラブル回避することができる
  • ポイント2・あらかじめ高性能ケミカルを利用することで、後々の分解メンテナンス時に楽々スムーズに作業進行できる
  • ポイント3・ 「熱膨張」を利用することで、さらに効果的にメンテナンス進行できることもあるので、ガスバーナーやハンディヒーターは所用したい

バイクのメンテナンス時には、様々なケミカル「=化学的に製造された製品」を利用したり、併用することが多い。時には、ケミカルが必要不可欠なことも多く、ケミカルを利用するか否かによって、後々のバイクコンディションに大きな違いがでてしまうこともある。例えば、グリスや防錆浸透剤、液体ガスケットなどは、数多くのサンデーメカニックが利用する、まさに「ケミカル」である。

ここで紹介するケミカルも、ベテランサンメカなら日常的に利用することが多い商品ばかりだが、各種グリスや液体ガスケットなどと比べ、明らかに「一歩踏み込んだ商品」である。「えっ!?そんな便利なものがあるの?」なんて驚くビギナーサンメカも、きっと数多いはずだ。

例えば、ノーマルマフラーを取り外してスペシャルマフラーへ交換する、とか、4イン1の集合管を取り付けたことがあるライダーは数多いと思う。そんな部品交換を実施する際に、必ず必要なのが「作業段取り」である。マフラー交換だったとしたら、交換するマフラーと工具があれば大丈夫、という訳ではない。エキパイ固定部分にはリング状のエキゾーストガスケットが入るが、このガスケットを新品部品に交換しなかったことで、後々排気漏れが発生。その排気ガスの漏れを防ごうと、さらにエキパイフランジボルトやナットを締め付け、結果的にはボルトをナメてしまったり、最悪でボルトが折れ込んでしまったりなどなど、酷い目に遭ったこともあるサンデーメカニックも、中にはいるはずだ。

そんなマフラー交換を実践する際には、エキゾーストガスケットの交換はもちろん、次の作業時に、それらの締め付けボルトやナットがスムーズに緩められるように、ボルトのカジリ防止ケミカルを利用するのが良い。マフラーのエキパイ固定部分やサイレンサー接続部の締め付けボルトのネジ山に専用ケミカルを塗布することで、ボルトやナットを緩める際に、ネジ山のカジリや焼付きを防止することができるのだ。

ネジの緩み防止ケミカルは、すべての締め付けボルトに使うものではなく、緩んでしまったら問題がある「重要保安部品を固定するボルト」などに利用されることが多い。どんな部分に利用されているのか?自身が所有するモデルに適合したメーカー純正サービスマニュアルがあれば、塗布ポイント詳細に関して記述があるため参考にすることができる。サービスマニュアルを閲覧できる機会がある際には、機種やモデルにかかわらず、どんな部分に「ネジの緩み防止ケミカル」を利用したり「グリスアップを施す」など、参考にするのも良いだろう。

メーカー純正の新品ボルトにあらかじめ「緩み防止剤」が塗布されるようになってからは、取り外したボルトを洗浄&ネジ山をクリーンナップして「ネジの緩み防止剤を塗布して」などとの記述はなく「新品ボルトへ交換」と記載されている例が多い。新品部品へ交換、もしくは再利用するかの判断は、あくまで自己責任になるが、もはやそんな世の中であることもしっかり理解した上で、バイクいじりを楽しみたいものだ。

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