旧車を美しく仕上げる中で、特に、気になってしまうのがメーター類だろう。現代のメーターは、液晶表示や電子制御を採用しているため、さっぱり理解できないし、理解したいとも思わないのが正直な気持ちかも知れないが、旧車に多い機械式のアナログメーターなら「ダメもとのつもり」で、美しくすることはできる。バイクに跨がったときに、最初に凝視するのがコックピットのメーターだろう。そのメーターが故障していたり、指針が正しく作動しない時には、プロのメーター修理屋さんに依頼しなくてはいけない。しかし、修理やオーバーホールではなく、単にメーターガラスを磨きたいとか、指針先端をきれいに仕上げたいとか、文字盤の汚れを現状以上に良くしてみたい、などなど、精密機械であるメーター本来の機能とは関係ない部分ではあるが、努力することでもそれなりの効果を得ることができる。それが旧車の機械式メーターでもあるのだ。ここでは、あくまで参考として、こんな方法でメーターをバラし、周辺パーツをクリーンナップできるという事実を、ご覧いただければと思います。

メーターリムが「カシメ固定」なら

メーターレンズのリムが金属部品(60年代後半以降のモデルはステンレス製リムの採用が多い)の場合は、裏側(ボディ側)のカシメを起こすことで、リムを取り外すことができる→ガラスレンズを分解することができる。カシメを起こしたい部分にしっかりチカラが加わり、伝わるように、メーターのリムサイズ外周に合致した横締めホースバンドを用意し、リムの外周を締めてみよう。リムが広がらないように固定したことで、作業進行しやすくなる。カシメを起こしたときに逃げてしまうチカラをバンドが保持しいくれるのだ。

カシメ起こし工具は「すべて自作」しよう

メーター修理用の工具、といった専門的な商品は販売されていない。このカシメを起こす工具は自作するのが一般的だ。プロショップでも、すべて工具類は自作している例が多い。各サイズのマイナスドライバーが複数ある場合は、先端を削ったり曲げたり磨いたりして、自分にとって使いやすい工具を自作すればよい。画像の2本は、いずれもマイナスドライバーをベースに自作したもので、形状が完成した後にバリが無くなるようにサンドペーパーでバリ取り研磨を実施し、さらにバフ掛けして磨き、リムにキズを付けにくくしてある。ドライバーの軸部分がメーターボディに触れ、ボディにキズを付けないように、ドライバーの軸には燃料チューブやゴムチューブを被せて保護している。

1箇所にばかり集中しないでカシメ起こし

カシメられている部分は、少しずつ、徐々に、平均的にカシメを起こすように心掛けよう。今回は、ぐるりと3周ほど、少しずつカシメを起こした後に、パコッとレンズリムを取り外すことができた。樹脂側ボディにキズを付けてしまわないように「テコの原理」の支点になるボディ外周には、ビニールテープを2周巻いた。1箇所ばかり集中してカシメを起こすと、カシメ部分に無理なチカラが加わり、リムが裂けてしまうこともあるので注意が必要だ。

カシメを徐々に起こしながらある程度まで達したら、リムを外す方向にチカラを入れつつ細いマイナスドライバーを差し込み、タイヤをホイールリムから抜き取るかのようにリムを取り外す。このメーターは過去に分解された痕跡があり、リムのカシメ部分がヨレ気味になっていた。メーター指針を抜き取るには、2番サイズのマイナスドライバーを2本準備して、マイナスドライバーの面部分の軸寄りを少し曲げ、文字盤を固定するプラスビスの頭を支点に指針の下にドライバー先端を入れ、クイッとテコの原理で抜き取るのが良い。指針は画鋲の針のようなメーター主軸に押し込み、固定されている例が多い。

レンズはガラスクリーナーで洗浄

レンズを取り外し、指針を抜き取ったら、文字盤を固定しているプラスビス2本を取り外すことで、メカニズム部分と文字盤を分離することができる。ガラスレンズは、ガラスクリーナーで汚れを洗浄してから水道水で流そう。毛羽立たないネル生地のウエスを用意し、しっかり拭き取ってから乾燥させよう。乾燥後は、メガネの曇り止めスプレーをメーターレンズの裏側(文字盤側)へ、シュッとひと吹き。さらに毛羽立たない新しいネル生地ウエスでサッと伸ばして(拭き取るのではない)乾燥させる。このメガネ用の曇り止め剤が、曇りの発生防止に意外と役立つのだ。文字盤の汚れは中性洗剤で洗浄し、水道水で洗い流そう。文字盤が乾燥したら、水性のUVカットクリア(つや消し)をキレイな水で希釈し、ペイントガンで文字盤に薄く少しずつ塗り重ねよう。一気に吹き付けると液ダレが発生するためNGだ。この水性UVカットのつや消しクリアの仕上がりが、実に良い雰囲気になる。文字盤の反射も無く、見やすいメーターになる印象だ。

「失敗が怖い=分解しない」それも勇気

メーター本体の心臓部分は決して分解することなく、外側からのクリーニングおよび、各種ギヤ&摺動部分へのグリスアップを実践した。過去にはカウンター軸心部分を固定するEクリップを引き抜き、オドメーターのカウンターを完全分解&洗浄クリーンナップした経験もあるが、今回、カウンター関連のドラムは一切分解せず、家庭用洗剤を綿棒に吹き付け(かんたんマイペットを利用)、カウンター文字の汚れを外側からクリーンナップ。さらに未使用の綿棒で拭き上げてみた。

指針先端は目視確認しやすく

抜き取った指針は積極的にレストア進行した。指針は白ペイントのベースに先端だけ蛍光オレンジに塗られたアルミプレス部品だった。かんたんマイペットを直接吹き付けてしばらく待ち、綿棒で擦って汚れを落としてから水道水で洗浄。黄ばみが目立つときには、漂白剤をスプレーし、天日に干しながら洗浄乾燥させることで、黄ばみをある程度は落とせるようだ。蛍光オレンジは細筆で厚めに塗り、洗濯物干しに挟んで乾燥させた。

復元は分解作業の逆手順で行おう。文字盤を復元したら指針を戻すが、主軸部分への押し込みが甘いと、走行振動で指針が抜け落ちてしまうことがあるので、親指で指圧するように主軸白丸部分をしっかり押込もう。クリーニング済のガラスは裏面を指先で触れることなくリムにセットし、リムとガラスを一体にしてからボディにハメ込む。カシメを起こした部分を再カシメする際は、まな板のような厚めの板の上にメーターを伏せて置き、板超しにウォーターポンププライヤーを利用してカシメ部分を2~3回に分けて徐々に曲げ込み、最後にカシメ固定するのが良い。作業手順は人それぞれであって、やりやすく作業性が良く、仕上がりが良い方法が一番なので、ここでの解説は、あくまでひとつの参考例として考えて頂ければと思います。

POINT

  • ポイント1・リムのカシメ起こしには自作ツールが必要。100均ショップで見つけた道具や工具を、自分なりに使いやすく改造しても良い
  • ポイント2・指針抜き取り用のテコ棒はマイナスドライバーを2本用意して湾曲させるように曲げると作業性が良い
  • ポイント3・メカニズム部分のハミ出た旧いグリスは綿棒で除去し、高性能グリスを塗布する際には爪楊枝の先端を利用するのが良い
  • ポイント4・レンズリムを再カシメする際には、リムの露出側を工具で直接触れるのではなく厚めの板を利用し、リム全体でチカラを受けると作業性が良い

旧車のメーター故障でよくある例と言えば、走行時の指針がピョコ、ピョコっとハネたり、特定の速度域やエンジン回転域に達すると、指針が異常に作動する、といった例である。メーター本体のトラブル例も確かに多いが、良否のジャッジをする前に、注意深く観察したいのが、メーターを駆動する「ケーブルコンディション」である。例えば、指針がピョンピョン跳ねるので、ケーブルを取り外してインナーケーブルを抜き取ったところ、何本ものワイヤーが編んで作られているインナーの中で、一部のワイヤーが切れ掛かって飛び出していることがあった。その僅かな飛び出し部分(僅か2ミリ程度)が、アウターケーブル内を回転する時に引っ掛かりを生じ(その瞬間にケーブルの回転に変化が生じ)、指針の異常作動を誘発させていたようだ。そんなときには、新品ケーブルに交換することで、あっさりトラブル解消できることもある。

メーター指針の作動がヘンだと感じた時には、タコメーターケーブルを取り外し、インナーケーブルのコンディションを確認した後に、メーター本体を手で持ち、タコメーターケーブルを車体の外側で接続してから作動確認してみるのも良いだろう。実は、タコメーターケーブルの取り回しが悪く、車体部品と干渉し、それが原因で異常な指針振れを起こしているケースも少なくないのだ。旧車メーターで、ケーブル金具の寸法が同じなら、タコメーターケーブルにスピードメーターを接続することもできる。急な回転上昇は避けなくてはいけないが、低回転域なら、タコメーターの駆動力で、スピードメーターの作動状況を確認することもできる。

ここでは、スピードメーターの分解清掃を実践しているが、この手の作業は、本来ならプロショップに依頼すべき項目である。しかし、メーターの作動コンディション的には特に問題がなかったのと、ダメもとでのトライなので、ここでは「DIY清掃にチャレンジ」してみた。ある一線を超えるまで手を出してしまい、逆に正常なメーターを壊してしまうこともあるので、あくまでメカニズム部分は汚れ取りと注油&グリスアップだけ作業進行した。それでも指針の汚れを落としてから先端に蛍光オレンジを塗布したり、メーター文字盤を洗浄して水性でUVカットのつや無しクリアを吹き付け、同時にガラスレンズを洗浄したことと合せて、文字盤の目視的雰囲気はかなり良くなった。

以前、マスクメロンの表面のように文字盤がヒビ割れていたので、なんとかならないものかと分解したところ、中性洗剤で薄めたぬるま湯に文字盤を沈め、しばらくしてから不要になった歯ブラシで軽く擦ったら、みるみるヒビ割れ汚れが落ち、文字盤が美しく蘇ったこともあった。今回も利用した水性でUVカットのつや無しクリアを吹き付け、乾燥後に組み込んだところ、以前のボロな風合いとは大違いで、素晴らしく好印象に変貌したこともあった。メーターの分解清掃は、決して簡単な作業ではない。仮に、不要なメーターがあるのなら、是非チャレンジしてみて欲しい。成功した暁には、驚くほどの満足感を得られるはずである。

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