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ボルトナットや鉄製のビスより軽くて部品の加工も容易なため、カウルや外装パーツの取り付けに多用されているのがプッシュリベットです。製造時の作業工程数が少ないメリットもありますが、意外に取り外し方で迷うユーザーも少なくないようです。リベット本体は手前に引き抜いて外しますが、抜け止めのロックは押して外すのがポイントです。
裏側に手が入らなくても施工できるのがプッシュリベットの利点
下側のプラスビスはフレームのステーに固定され、そのパーツに重ね合わされる別のカウルがプッシュリベットで固定されている。スピードナットとタッピングビスを使うより軽量になり、貫通穴を開けるだけなのでパーツ製造時の加工も単純で簡単になる。リベットを外すには平ポンチや六角棒レンチなどで中心のピンを押し込む。
金属部品同士をつなぐにはボルトナットや片側に雌ネジを切ってボルトで締め付けるのが一般的であり、かつては樹脂同士をつなぐのも一方に成型時にナットを埋め込んだり、ゴムの弾性を利用したウェルナットを使う例が多くありました。対して昔はスクーターの専売特許みたいなものでしたが、現在ではスーパースポーツやビッグバイクでも使われているのが樹脂製のプッシュリベットです。
バイクだけでなく自動車の内装の組み立て時にも多用されるプッシュリベットは、メーカーによってクイックファスナー、トリムクリップと呼ばれることもありますが、どれも樹脂製でワンタッチで取り付けできるのが特長であり利点です。パーツ同士が複雑に重なり合う場所ではボルトナットのナットを押さえることができなかったり、板状のスピードナットをはめるほどのフランジが確保できないこともあります。
そんな時、組み付け部分に貫通穴さえあれば固定できるプッシュリベットがとても重宝します。金属製のボルトナットやスピードナット、タッピングビスを使わないことで重量を軽減できコストも削減できます。またリベットだけで締結が完結するので、ボルトをかじった、雌ネジをナメたというトラブルもありません。
コストダウンが気に入らない、パーツ同士がガッチリ締結されていない感じが嫌だという意見もありますが、簡便なプッシュリベットはますます増えていくでしょう。
- ポイント1・軽量で受け側の準備が不用で、貫通穴に挿入するだけで部品を締結できるのがプッシュリベットの特長
中心のピンを押し込むとロックが外れる
ピンが押されるとピンによって拡張していたリベットの足が閉じて穴から抜ける。ここでリベットの裏側に指が届くので押し出しているが、リベット取り付け位置が袋状で裏側に手が入らなくても、ピンを押せば頭を引っ張るだけで抜くことができる。
ところがこのプッシュリベット、取り外し方を知らないと想像以上に苦労します。プラスドライバーで回せそうな十字穴がついたリベットもありますが、主流は中心部に丸い点があるタイプです。リベットの頭とツライチのピンを引き抜くことは至難の業で、ヘラを突っ込んで引き抜こうとしてもビクともしません。
ピンがリベットの頭とツライチの時、リベットの足はピンによって押し広げられて抜けなくなっているのと同時に、広がった足によって重なる2つの部品は強く固定されます。だからリベットの頭と部品の間にヘラやマイナスドライバーを突っ込もうとしても、部品の裏側では広がった足がクサビのように食い込んでしまいます。
ではどうするか?答えは簡単で、中心のピンを軽く押し込めば良いのです。ピンを押すとリベットを拡張する力が抜けて足が細くなり、すんなり引き抜くことができます。ピンを押しすぎるとリベットの裏側に落下してしまい、それがエンジンやシートレール部分の束になった電装品の中に落ちてしまうと探すのに苦労するので、力を入れすぎないようにしましょう。
またリベットの種類によっては、ドライバーで回すものや手前に引くものもあります。しかし丸いリベットの頭の中心にピンがあるタイプに関しては、手前に引くのではなく押して突っ張り力を抜いてから手前に引き抜くのが標準的な手順です。
- ポイント1・プッシュリベットを抜き取る際は頭の中心部分のピンを押し込むことでロックが解除される
プッシュリベットを取り付ける際はピンを手前に引き出しておく
プッシュリベットを抜く際に押し込んだピンは、取り付ける前に頭より手前側に押し戻しておく。これでリベットの4本の足はすぼまり、カウルの下穴に通る。
下穴にリベットを挿入してピンを押す前の状態。ツライチまでピンを押し込めばカウルの裏側でリベットの足が開いてパネル同士が密着する。下穴がはっきり確認できない車体の下周りで手探りでカウルを合わせてリベットを取り付けると、下側のパネルにリベットが通らない状態でピンを押し込み接合不良が起きることがある。ボルトナットやスピードナットとタッピングビスであれば、ねじが締まらないことで異常に気づくが、プッシュリベットはパネル1枚でも見かけ上ロックが効いてしまうので注意したい。
取り外したリベットを再使用する場合、先に押し込んだピンを上面より手前に引き出します。ピンがツライチの時に広がったリベットの足は、手前に引き出すことですぼまり、部品の穴に通ります。そして通した後でピンをツライチまで押すことで足が広がりロックされます。
何度か着脱を繰り返したり無理に引き抜こうとすることで、リベットの足が折れてしまうことがあります。ボルトナットの場合はネジ山修正などの作業が必要になりますが、プッシュリベットはそれ自体を新品に交換するだけです。足が4本のリベットの場合、1本が折れても3本である程度の張力が確保できますが、それがカウルの合わせ面だった場合パネル同士が微妙に動いて擦れ合い、キシミ音や傷の原因になるので交換した方が無難です。
その際にはリベットのサイズにも注意が必要です。プッシュリベットは下穴径と同時に足の長さも重要です。重なり合うパネルが厚い部分に取り付けるリベットは、薄いパネルを固定するリベットより足が長く、拡張するのも先端側になりがちです。そのため長いリベットを薄いパネルに取り付けると、ピンをツライチまで挿入してロックしても、開いた足がパネルを充分に押さえることができず、パネルが密着しなかったりリベットがガタ付くこともあるので注意が必要です。
スクーターの外装を取り外す際、いくつものパネルに複数のプッシュリベットが使われていることがあるので、どこから外したかが分かるようにチャック付きのビニール袋などで管理しておくと組み立て時の誤用を避けることができます。
- ポイント1・取り外したリベットのピンは頭より手前に引き出すとロックが解除される
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