バイクの走りが今ひとつのときに、疑いのまなざしを向けてしまう部品のひとつに「キャブレター」がある。本当に、キャブに問題があるのか?否か?も気になるが、ここでは、旧車キャブの分解洗浄時の注意ポイントに注目してみよう。

シリンダーヘッドに直マウントのキャブ

初代OHVエンジンのスーパーカブや、OHCエンジンでも1973年頃まで生産されたスーパーカブ50/70ではダウンドラフトタイプのキャブレターを標準装備していた。日頃から走り回り、新しいガソリンを利用していれば起こる問題ではないが、今回のメンテナンスでは、キャプ本体の内部通路の詰まりが発覚。それが原因でアイドリングしなかったようだ。

カタチこそ違っても機能部品は同じ





カタチこそ違ってもキャブレターの役割は同じだ。アイドリング領域をつかさどるスロージェットやパイロットジェット。スロットルの開け始めから中速域をコントロールするジェットニードル。全開領域の燃調をコントロールするのがメインジェット。それらにガソリンを供給するのがフロートチャンバーであり、フロートチャンバー内のガソリン量を常に調整しているのがフロート&フロートバルブである。このスーパーカブ用キャブレターはダウンドラフト仕様で別体フロートを持つ。俵型のフロートが油面に浮かんでいるが、ガソリンが流れ込み油面が高まると、それを制御するフロートバルブがガソリン供給穴をふさぐ(オーバーフローしてしまうため)。このキャブのフロートバルブは、ジェットニードルのような針先のような構造となっている。

「燃調キット」でオーバーホール



キースターブランドから発売されている燃調キットは、1パッケージ=1気筒用なので、4気筒エンジンなら4セット、単気筒なら1セットが基本になる(FCRなどのレーシングキャブ用には4気筒でも1パッケージ品がある)。この商品が人気の理由は、ガスケットやパッキンやOリングなどの部品が1パッケージで入っているため、キャブセッティングばかりではなく、オーバーホール用としても利用価値が高いところにある。特に旧車の場合は、ガス漏れや滲みが不調の原因になっていることもあるので、単品購入しなくても、1セットのパッケージ商品は嬉しいものだ。フロートバルブセットの同梱も嬉しいところだ。

スロー系通路が詰まっていた!!

パイロットジェットを洗浄したり新しくなったところで、そこへガソリンを供給する通路が詰まっていてはアイドル不調の原因になってしまう。通路サイズを拡大しないように通気させたいところだが……。

通路回復で「禁じ手」を使ったが……



キャブレター洗浄剤やクリーナーを吹き付けたところで、通路が完全に詰まっていると、その汚れはなかなか溶解洗浄することができない。ジェット類の汚れ詰まりを通気させるときにジェットリーマを利用するが、そんなときには、いきなり同等サイズを使うのではなく、まずは通路サイズよりも明らかに細いリーマを使って通気させることから始めよう。さらに徐々に広げ、最終的にはリーマに頼らずキャブクリーナーなどに浸して汚れを溶解し、本来のサイズを確保するのが正解。すべての汚れ取りをリーマ頼りで行ってしまうと、本来のジェットサイズに影響し、打刻数値を信用できなくなってしまうからだ。交換不能の埋め込み固定型ジェットの場合は、特に要注意だ。このキャブの通路つまりはマイクロドリルをピンバイスに固定し、通路拡大しないようにまずは通気させ、それからキャブクリーナーケミカルを利用して通路を洗浄した。

キャブレターは操作感が何よりも重要





キャブメンテナンスを実践したときにはエアークリーナーエレメントのコンディションやスロットルケーブルの操作性も確認するのが良い。乾式エレメントは、見た目は汚れていなくても、濾紙の劣化でボロボロに崩れてしまうことがあるため、定期的に交換したいものである。スロットルケーブルは軽く作動するのが基本中の基本なので、途中で折れていたり、あまりに操作性が重いときには新品ケーブルに交換し、作動部各部のすり合わせクリーニングとグリスアップを確実に実践しよう。

POINT

  • ポイント1・キャブ本来の機能を理解することで、見えてくるのが本当の不調原因
  • ポイント2・詰まった穴や通路をほじるときには、最低サイズのキリやリーマでまずは通気回復から開始
  • ポイント3・当たり前の機能や各部の作動性を良くすることで、コンディションが良くなるのは他の部品と同様にキャブも同じ

エンジン本体のコンディションがどうであれ、まずはエンジン始動にトライしてみたくなるのが、不動車再生の第一歩であり、醍醐味でもある。エンジン始動の条件は、良い燃料に、良い圧縮に、良い火花の「三拍子」が揃わなくてはいけない。そんな三拍子に大きく関わるのがキャブレターである。仮に、燃料タンク内がサビサビで、そのまま使うことができなかったり、燃料コックが汚れで詰まっていることもあるので、そんな時には、通称「点滴タンク」を利用することで、第一条件の「良い燃料」を確保することができる。第三条件の良い火花を確認するためには、スパークプラグを取り外して、プラグキャップにプラグを差し込み、ネジ部分をシリンダーやシリンダーヘッドへ押し付けてアースさせ、キックやセルを押してクランキングしてみよう。スパークプラグの電極に「バシバシッ」と火花が飛べば良いが、飛ばない時にはプラグキャップとプラグコード(ハイテンションコード)の接続具合を確認しよう(ねじ込みが緩んでいたり腐食していないか?)。ポイント制御の点火方式なら、ポイント接点の汚れ落としや磨きも実践してみよう。

プラグ電極に飛ぶ火花を確認出来たら、良い圧縮があるか確認してみよう。プラグを外した状態のプラグ穴に指先を軽く押し付け、キックを踏み込んでクランクシャフトを回転させてみよう。その際に、プシュプシュッと力強く指先から圧縮が漏れるなら良いが、そうではないこともあるので、ここではコンプレッションゲージを利用して、圧縮圧力を「数値」として確認してみよう。数値確認すれば、ある程度の良し悪しを判断することができるはずだ。

「三拍子」揃えばエンジンコンディションは期待できるが、ここで、キャブレターが今ひとつのコンディションだと、エンジン始動は困難になってしまう。そこで、おもに分解クリーニングをメインにしたメンテナンスを実践することになるが、分解洗浄によって各種通路の詰まりが無くなっても、ガスケットやパッキン類にダメージがあると、その後のエンジン始動時に、ガス漏れや滲みが気になってしまうものだ。単品部品で揃えても良いが、旧車エンジンのキャブレターなら、キースターの燃調キットにラインナップが無いものか?確認してみると良い。今回、不動車再生にトライしているホンダスーパーカブC100は、ラインナップに適合設定があったので、燃調キットを購入した。

最終的には、エンジン始動に成功し、アイドリングさせることもできた。しかし、そこまでたどり着くには難題もあった。エンジン始動は難なくできたが、アイドリングしないのが最大の問題だった。そこで、パイロット系を再確認すると、別体フロートから流れたガソリンが吸入負圧で吸い上げられ、パイロットスクリューで空気と混ざってスローポートから吸い出されてアイドリングする仕組みだと確認。そんな通路に詰まりを発見したのだ。別体フロートから流れ出たガソリンは吸い上げられるが、そのキャブ本体通路が詰まっていたのだ。ばらく乗らなかったことで、ガソリンガ残留しやすいこの箇所のガソリンが変質=タール化し、詰まってしまったのだろう。ダウンドラフトタイプのキャブではあるあるトラブルのようだった。

通路にダメージを与えないように通気させ、さらに汚れを分解洗浄後にエンジン始動したところ、トントントンッとアイドリングしつつ、気持ち良く吹けるエンジンに回復することができた。まずはエンジン始動できて、ひと安心である。

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