2019年に罰則が強化されて以来「保持がダメならスマホホルダーはOK?」「注視っていったい何秒?」などなど、ながら運転についての情報はネット上に溢れかえっていると言っても過言ではないと思います。

そんなスマホホルダーはスクーターからマニュアル車までほとんどの車種に対応、普及しており、それだけに「いったい何が正解?」というライダーの方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、バイク歴35年目を迎える私、行政書士ライダーが「ながら運転の真実」と題し、ながら運転違反について道交法に沿って徹底解説させていただきます。

ながら運転(道交法第71条)とは何を指すのか?

罰則強化が大きく報じられたこともあってスマホを使いながら運転すると違反になるということはほとんどのライダー、ドライバーの方はご存じだと思います。でも、使いながらとは具体的にどういうことを指すのかと聞かれればどうでしょう?

ながら運転について定める道交法71条にはこんな風に書かれています。早速本物の条文を見てみましょう。

自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る)を通話のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。(道交法第71条第5号の5 一部編集済み)

できるだけ原文を変えずに読みやすく編集したのですが、さらにまとめるとこうなります。

道交法第71条第5号の5まとめ
ライダーやドライバーは
運転中に
スマホを手に持って通話や注視したり
固定されたスマホやナビの画面を注視してはダメですよ
ただし停車中はOK

以上のことから、キーワードは2つあります。

①手に持って(保持)

ライダーやドライバーは、運転中はハンドルやアクセル、ブレーキなどを手足で確実に操作する必要があります。そのため、運転操作に必要ないスマホを手に持って運転することは基本的にNG。そこから1歩進めて、通話や画面を見る(ゲームやSNSなど)ためにスマホを手に持つこと(保持)が直接違反として定められたという訳です。

ですので、通話や画面を見ず単に手に持っているだけならこの違反には当たらないということにはなりますが、だからといって運転操作に必要ないスマホをわざわざ手に持って運転することはやはりおすすめはできません。(安全運転義務違反に抵触するため。同違反については別記事で配信予定)

②注視

クルマと違ってバイクの場合、スマホを片手に運転することはそもそも想定し難いですよね。ライダーが注意すべきなのはこの『注視』の方です。わざわざ手に持たなくてもスマホホルダーにマウントすることでスマホを注視することができてしまうからです。

なお、『注視=見る』だけでもダメなので操作することはもちろん厳禁です。

ただし、『見る』と言ってもバックミラーを見る程度のチラ見から画面に見入る程度までいろいろですが、「どのくらいの時間で注視となってしまうのか?」。ここがライダーにとっての最大の関心事だと思います。

ですが残念ながら、何秒でアウトというような具体的な数字の基準はありません。警察官の判断次第ということになります。とはいえ、取り締まる側の立場で考えるとチラ見だけならバックミラーを確認するのと区別はつかないはず。

注視と判断されるということは、少なくとも進行方向を見ていないことが明らかに分かる程度の見方にはなると思われます。①にも共通しますが、どうしてもホルダーのスマホが見たい、操作したい時は安全に停止してからにして下さい。

インカムはOK?~公安委員会規則にも注意が必要~

実は、ながら運転は先ほどの5号の5だけではなく第6号にも定めがあります。ではまず、条文を見てみましょう。

前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項(道交法第71条第6号)

この第6号はご覧の通り「道路における危険を防止」するためなどという漠然とした表現になっています。そのための具体的な中身は公安委員会が定めます。それを受けて全国の都道府県公安委員会が地域の実情に応じて規則を定めているのです。(公安委員会とは警察を管理監督する組織ですが、ほぼほぼ警察と同じと考えてもらって大丈夫です)

例えば私の地元・京都では京都府道路交通規則が定められていて、道交法第71条第6号の中身について次のように書かれています(ながら運転に関係する部分を抜粋)。

(9) 傘を差して大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車…(中略)…を運転しないこと。…(後略)
(13) (前略)…イヤホン、ヘッドホン等を使用しているため、安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような状態で車両等を運転しないこと…(後略)※京都府道路交通規則第12条

要するに、傘を差しながら運転とイヤホン等をしながら運転に必要な音等を聞けない状態で運転することはダメということになります。公安委員会規則は都道府県単位なので、京都府の規則は大阪府など他府県には適用がありませんが、規則の内容は概ね似ています。気になる方はご自身の運転エリアの規則をご確認ください。

余談ですが、京都府の規則にはこんなのもあります。

(8) 大型自動二輪車又は普通自動二輪車のまたがり式の乗車装置に運転者以外の者を乗車させて運転するときは、前向きにまたがらせること。

当たり前すぎて思わず笑ってしまいました。

さて、イヤホンについては、ヘルメットが必須のライダーにはあまり関係ないと思いますが(摘発例も見つかりませんでした)、インカムが気になるところですよね?

インカムも『イヤホン、ヘッドホン等』の『等』に含まれるため、安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような状態、つまり大音量で音楽等を聴きながら走るとこのながら運転違反になってしまいますのでご注意を。

 

罰則一覧はコチラ

注視については、何秒か定義がない……

ながら運転の真実と題し、できるだけ具体的に分かりやすく解説させていただいたつもりですが、いかがでしたか? ライダーとは切っても切れない道交法ですが、条文となると一般の方には取っ付きにくいですよね。ですが、すべては条文から始まります。

ということで、今回はがっつりと道交法の条文をお示ししながら何をすればながら運転になってしまうのかについて解説させていただきました。

ところで、ここまで読まれたライダーの方がどうしても気になる点、それは「そうは言っても注視って何秒くらいなの?」ではないでしょうか。

道交法も含む法律には、中に出てくる用語についてハッキリと定義をする規定を置いていることも少なくありません。ですが、この『注視』については道交法にも施行令にも規則にも警察庁の通達にもどこにも定義がないのです。それでもヒントだけでも知りたいという方の参考になるのがコレ。

 

この中に

運転者が画像を見ることにより危険を感じる時間は運転環境により異なりますが、各種の研究報告によれば、2秒以上見ると運転者が危険を感じるという点では一致しています

との記載があり、少なくとも2秒以上は注視と考えてよいと思います。(2秒未満ならOKという訳ではありません)

最後に。

最新の摘発件数(令和3年)が公表されており、それによると全国の道交法第71条第5号の5(保持+注視)違反は290,735件/年(バイク&クルマの合計)。減少傾向にはあるものの、それでも1日当たり約800件が摘発されている計算です。

それではみなさま、ルールを守って安全にバイクライフを楽しもうではありませんか。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    くねくね道をバイクで走るとき,ブラインドカーブの先の曲がり具合を知るために,スマホのナビを利用している。
    このライターは「どうしてもホルダーのスマホが見たい、操作したい時は安全に停止してからにして下さい。」というけど,
    いちいち停まってナビを見ていたら先に進めない。
    「あつものに懲りてなますを吹く」のことわざみたいに間の抜けた教訓だ。

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