2023年1月24日、バイクを取りまく環境について話し合う第4回「二輪車委員会メディアミーティング」が開催された。昨年10月以来となる今回のミーティングでは、二輪車業界活性化につながるヒントについて意見交換が行われた。

このイベントは自工会二輪車委員会が主催するもので、ゲストにバイクと脳の活性化について研究を行う東北大学加齢医学研究所所長・川島隆太氏を呼び、二輪専門メディアや一般紙、ライフスタイルメディアなどが参加した。

活性化し始めた二輪車業界を維持できるか

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二輪車委員会委員長 日髙祥博氏(ヤマハ発動機株式会社社長)

イベントの開会にあたり、二輪車委員会委員長・日髙祥博氏(ヤマハ発動機株式会社社長)は「ここ数年はコロナ禍においてのアウトドアレジャーにバイクがうまくマッチしたと思われますが、私は今年こそが二輪車業界にとって勝負の年になると考えています」と語り、今回のメディアミーティングで業界を盛り上げるための意見を交換できれば、とした。

また、行動制限が解除されはじめた現状について「旅行や外食などこれまでの遊び方も復活してきました。こうした環境で、せっかく活性化し始めた二輪車業界を維持できるかどうか、今の良いトレンドを継続することができるかどうか、昨今入ってきていただいた若者を繋ぎ止めることができるかどうか、今年はそういったことが試される年になると考えています。皆さまとともに活性化している業界を盛り上げていきたいと考えておりますのでどうぞ色々ご意見、お知恵を拝借させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします」とあいさつを締めくくった。

「モトインフォ」が気付いた二輪車業界の現状とは

はじめに、バイクの楽しさや利便性などの情報を発信するWEBメディア『モトインフォ』から、取材を通して浮かび上がった、バイクに対する読者の意識について発表が行われた。

交通安全のためには個人の意識が重要

まず「バイクの安全のためには、ライディングレッスンと同様に個人の安全意識が重要である」という仮説について、3つの例が示された。

1つ目は三ない運動の代わりに始められた高校生向け交通安全講習の取材を通し、高校生が事故の危険を考え、安全運転を心がけるようになったこと。2つ目は、クシタニが各地で開催する「コーヒーブレイクミーティング」について、“コーヒーで一息ついて落ち着く”という効果を見込み、各地から開催の要望があること。そして、伊豆スカイラインで行われる安全運転の呼びかけ事例を示し、安全とはライダー一人ひとりの自制心の上に成り立っているということ。

これら3つの事例から、「安全のためにはレッスン同様、個人の安全意識が重要」とした。

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世代が変わり、親は反対勢力からアシスト勢力に

次に話されたのは、親世代の意識の変化について。ここ数年のバイク業界の活性化は、親世代のアシストがあるのではないかという仮説だ。

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図のように、若者の親世代がかつてのバイクブーム世代と重なる。また、教習所や自動車大学校生へのインタビューでは「親戚が・親が乗っているから自然に」という意見もあった。

プラスの変化とマイナスの変化について

続いて、二輪車業界を取りまくプラスの変化とマイナスの変化も取り上げられた。

プラスの変化については、各地で災害対策に利用するバイク活用が増えていること、若者の旅の夢に「バイクで日本一周」という意見が多いこと、日本ツーリングでインバウンド需要の復活が期待されることなど。

一方マイナスの変化として、ライディングレッスン盛況の裏にバイクへの不安があること、中高年層の胸部プロテクター装着率が低いことが挙げられた。

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出典:大分県由布市ボランティアバイク隊

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出典:⼀般社団法⼈⽇本⾃動⾞⼯業会(2022年9月調査)

バイクを運転すると脳が活性化する

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東北大学加齢医学研究所所長 川島隆太氏

意見交換会の中では、バイクが私たちにもたらす効果について、バイクの運転と脳の働きを研究する川島隆太氏による発表も行われた。川島氏は加齢による脳の能力の低下防止について専門に研究する傍ら、プライベートでもバイクでの走行を楽しむライダー。体感として「ライディングにより活発な思考力が生まれるのではないか?」というイメージを、長年の実験により実証を重ねた。

バイクが心身に与える効果とは

まず、車両を運転するときの脳(前頭前野)の活動について、マニュアル車運転時のほうが全般的に活動が高いことが解説された

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続いてはバイクの運転習慣が認知機能や心の健康に与える影響について。日常的にバイクを使うグループとそうでないグループに分けたとき、バイクを生活のなかで使ったグループは様々な認知機能の向上とストレスの軽減が見られた。

この結果から、バイクを生活のなかで使うことは、脳と心の健康にポジティブな影響を与えることが考えられるとした。

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安全運転と脳の関係について

最後に安全運転と脳の関係についての発表もあった。

川島氏は安全運転行動の3要素として認知・判断・操作(+予測)の3つを挙げ、これらを司る「背外側前頭前野」の機能を鍛えれば安全運転能力が向上するのではないかという仮説を示した。

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そこで、交通安全に関する脳トレの開発と効果を検証した結果、脳トレを行ったグループにおいて運転技能や認知機能などが有意に向上した。

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この脳トレは、プロの運転手においても認知機能が向上したうえ、運転の質の向上も見られた。

また、二輪車委員会委員長の日髙氏は『モトインフォ』の上半期人気記事ランキングのベスト10に川島氏による『バイクに乗ると“脳が”活性化する』という記事がランクインしていたことを挙げ、「二輪車業界活性化につながるヒントがあるのではないかと考えているところです」と語った。

意見交換会の詳しい内容は日本自動車工業会のブログに掲載されている。
■第4回「二輪車委員会メディアミーティング」を実施 https://blog.jama.or.jp/?p=3421

情報提供元[ 日本自動車工業会 ]

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