読者のみなさま、こんにちは。シリーズ第2弾は『他車にあおり運転スイッチを押させない運転とは』についてのお話です。

最初に一つお断りをさせていただきますが、いかなる理由があろうとも、あおり運転が正当化されることはないということ。これは大前提です。

ただし、自身に対するあおり運転が何のきっかけも無く突如として始まるとは考えにくく、あおられる側にも何らかの原因があった(あおり運転スイッチを押してしまった)と考える方が自然ではないかと思うのです。

たとえ「私が優先で非はあなたにある」と言ってみたところで重大な被害を被ったのでは全く割に合いませんよね。だからこそ、生身の体を晒しながら走るライダーにとって大ケガや命に直結するあおり運転被害から身を守る運転とは?を第一に考えることが大切だと思うのです。

そこで今回は、バイク歴、4輪歴ともに30年以上。バイクだけではなく普段から4輪にも乗る私、行政書士ライダーが『究極のあおり運転被害回避ライディング』について実際のバイク被害を例に考えてみたいと思います。

2つの堺市あおり運転バイク死亡被害事件


【アシタノワダイさんの動画】事件の様子やその後の裁判で殺人罪を認定したポイントなどがマンガで再現

 

まず1件目は、「はい、終わり」発言が注目を集めた2018年7月2日に起きた事件。

報道などによると、大阪府堺市内の幹線道路で被害者バイクに左側から追い抜かれた加害者はその直後にあおり運転を開始。約1分間、1キロにわたり急接近しながらのクラクションやパッシングを繰り返します。

加速に勝る被害者バイクに一度は引き離されたものの猛追跡。その後追いついた加害者は、その勢いのまま右側車線を走る被害者バイクに約100㎞/hの猛スピードで追突し殺害したのです。(2020年7月殺人罪が確定)

 


【動画】MBS NEWS あおり運転“執拗に追いかけ…被害者は逃げようとする姿

 

そしてその約4年後、偶然にも1件目と同じ通称「泉北1号線」の目と鼻の先で2件目の事件が起きます。

2022年3月28日午後6時半ごろ、加害者運転の4輪は異常接近や幅寄せを繰り返しながら執拗に被害者バイクを追い回します。被害者が加速し車線変更で逃れてもピタリと背後へ。

そんなあおり運転を約3分間、4キロにわたって続けた挙句、最後に被害者を追い抜くと、急ハンドルで被害者バイクの直前に割り込んで被害者を衝突に追い込み死亡させました。

これら2つの事件の加害者は、ともにあおり運転だけではなく自車4輪を被害者バイクに衝突させることで相手の命を奪うという暴挙を働いていますが、もし被害車両がバイクではなく加害者と同じ4輪だったら、そもそもあおり運転自体も起きなかったのではないかと私は考えています。

バイクのもつ特徴があおりスイッチを押してしまう!?

2つの事件で見えたバイクだからこそ注意したいあおり運転スイッチを押させない運転とは…。その点を探るべく2つの事件をもう一度振り返ってみます。

まず1つ目の事件から。この事件では、加害者が『左側から追い抜かれた』直後にあおり運転を開始したことが伝えられており、この点について、左側から追い抜いたバイクも悪いという声があるのも事実です。

しかし、調べてみたところ、右側車線を走る加害者4輪が左側車線を走る被害者バイクの直前もしくは直後方向から左側へと車線変更を開始、それに気付いた被害者バイクが『急ハンドルと急加速で避けただけ』ではないかと私は思っています。

真相は実際のドラレコ映像を確認しないと分からないのですが、いずれにせよ『左側からの追い抜き』によって加害者のあおり運転スイッチが押されたことは間違いなさそうです。

それに対して2件目の事件には『左側からの追い抜き』のような接点すらありません。被害者バイクが前、加害者4輪がその後ろという位置関係でともに左側車線を走行中、突如加害者4輪があおり始めたようなのです。

一見性質が違うようにも見える2つのあおり運転被害事件ですが、両者には、被害車両がバイク(特に中型以上)だからこそ当てはまる特徴があると思うのです。

4輪から見たバイクの特徴

無理なすり抜けや信号待ちでの先頭争いなどの故意行為は論外として、その特徴をひとことで言うと、4輪の運転席から見るバイクは『小さくすばしっこい邪魔な存在』なのではないかと思います。

 

考察①
1つ目の事件の加害者4輪が、被害者バイクがすぐそばを走っているにもかかわらず左側車線へと車線変更を開始したしたのは、4輪よりも小さいバイクを見落としていたか距離感を見誤っていたのではないか。

また、そうではなくバイクの存在を認識しながら車線変更をしたとすると、小さく見えるバイクを小さく見えるがゆえに自分より弱い邪魔な存在と錯覚し、多少強引に車線変更しても減速して後退するだろうと判断した可能性も。

ところがそんな小さく邪魔なはずのバイクが急加速でこともあろうに自分より前へと走り出たことに腹を立て、それがあおり運転スイッチを押したのではないか。

 

考察②
2件目の事件の舞台にもなった「泉北1号線」は、一般道とはいえ一部自動車専用区間があるなど都市高速道並みに流れが速い道路として地元では知られています。そんな泉北1号線の左側車線で被害者バイクの後ろを走る加害者4輪。

追い抜きたい。が、追い抜こうにも右側車線が詰まっており車線変更すらできない。小さいバイクが少し左に寄ってくれれば追い抜ける。なのに前のバイクはなぜ寄らない、俺の邪魔をするのか。おそらくそんな思いを拗らせたであろう加害者が自ら一方的にあおり運転スイッチを押したのではないか。

以上はあくまで私の考察ですが、そう考えるとストンと腑に落ちるのです。


【2つの事件の舞台となった泉北1号線】

バイクの特徴を再認識し自分を守る運転を

視点を変えると、もし左側車線を走るのがバイクではなく4輪なら見落とす可能性は少なかったのではないか。ましてや4輪を認識していたなら被せるような強引な車線変更をすることはなかっただろうし、もしそうであってもバイクのような瞬発力を期待できない4輪の場合、加速で前に出るのではなく減速して後退せざるを得なかったのではないか。

また、前を走るのがバイクではなく4輪なら「左に寄れるだろ?」とはならなかったはず。だから4輪で詰まっていた右側車線への強引な車線変更ではなく、左側車線で前を走るバイクに対し、どけとばかりにあおる選択をしたのではないか。

そう考えると、今回取り上げた2つの事件の被害車両がバイクではなく4輪ならそもそもあおり運転自体起きなかったのでは、と思うのです。

そしてもう一つ。バイクは4輪に比べ圧倒的に加速や車線変更が容易で、すばしっこく動くことができます。それゆえに逃げ回りやすいのも事実。小さい相手が逃げれば追いかけたくなるのは人の常。特にあおり運転をするような輩は追い回せば追い回すほど怒りを増幅させるのではないでしょうか。

さらに、2つの事件では衝突の末、命を奪われるという最悪の結果を生じています。この点についても、いくら頑丈な鉄の鎧で守られているとはいえ、もし相手が同じ4輪なら加害者自身もそれ相応の被害を受ける恐れが高いのに対し、車体の小さいバイク相手なら自身のダメージは小さいはずと直感的に判断したのではないか。

さらに言うと、もし相手が自分より大きいトラックやダンプならあり得ない選択だったのではないか。ところが小さいバイクだったからこそ衝突という暴挙を選択するに至ったのではないか。と思えて仕方がありません。

以上のことから、バイクが必然的に持つ『小さくすばしっこい邪魔な存在』という特徴が、ライダーにそのつもりはなくても加害者のあおり運転スイッチを押すことがあり得る。バイク乗りはそのことを肝に銘じるべきであると考えるに至りました。

最後に言いたいこと

あおり運転だけでも十分悪質な犯罪行為であるにもかかわらず、あおり運転の末に衝突させることをも選択できる人間がいようとは私には想像もできませんでした。ですが、その想像もできない暴挙が実際に起こり、私たちは同じバイク乗りの2人もの尊い命を失いました。

おふたりの命に報いるためにもこれ以上の犠牲者を出してはならない。そのためには普通なら想像できないようなことも想像するライディングを心掛けるべきではないか。そしてそれこそが『究極のあおり運転被害回避ライディング』だと私は思うのです。

「そんなことができるのか?」という声が今にも聞こえてきそうですが、私はこう考えます。
それは『君子危うきに近寄らずライディング』です。

ということで次回、『君子危うきに近寄らずライディング』とは?について具体的に考えてみたいと思います。

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コメント一覧
  1. れじ より:

    そもそもこういうキチガイどもが免許を買える制度がおかしい。
    行政に責任があるのをいい加減追求していくべきだ。

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