【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

バイクは日々進化しているが、昔にも優れた楽しいバイクがいろいろあった。そこで、自分の経験も踏まえて、「今あったらいいのになぁ」と思うバイクを振り返り考察したいと思う。第一回は「ホンダ・AX-1」について。

前段として先日、レッドバロンの「譲渡車検」付き中古車のメディア試乗会で久しぶりにAX-1に乗る機会があったのだが、これが実によく走るので驚いた。もちろん、完全に整備されているとはいえ、昔のマシンの実力をあらためて思い知ったのだった。これはお伝えせずにはいられないということで筆を執った。

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デュアルパーパスの先駆けとなった実験的モデル

AX-1は1987年に発売された。モーターサイクルの新機軸(AXIS)を提案する1番目のモデルというのがネーミングの由来だとか。オンロードスポーツとオフ車を掛け合わせたようなスタイルが特徴で、今で言うデュアルパーパスの先駆け的な存在だった。ネーミングからも分かるようにホンダをして実験的なモデルだったと言える。

当時はレーサーレプリカブームが終焉に向かい始めた頃だったが、とはいえ、4ストのフルカウルモデルや2ストのモトクロッサーレプリカがまだまだ勢力を誇っていた時代で、AX-1はそれほど注目されてはいなかったと記憶している。

バイク便で証明された最強の都市型スクランブラー

自分も脱サラして間もない頃、バイク便で日銭を稼ぐ毎日を送っていたのだが、そのときバイク便ライダーの間で絶大な人気を誇っていたのがAX-1だった。
バイク便は速く届けてなんぼの世界。当時はインターネットやスマホも存在せず、企業から預かったフロッピーディスクをまさに1分1秒を争って客先に届けていた。

そんな実力主義でその日の稼ぎが決まるバイク便ライダーが求めていたのは、混雑した街中でもスイスイと前に出られる軽量でスリムな車体と、信号ダッシュでいち早く加速に乗れる瞬発力のあるエンジンを持ち、燃費に優れ維持費も安く済むマシン。
つまり、究極の実用性能を求めていたのだ。その意味でAX-1は最強の“都市型スクランブラー”だったと言えるかもしれない。

実力の高さはスペックが証明している

スペックもそれを物語っている。水冷4スト単気筒DOHC4バルブ排気量249ccエンジンは当時いち早くホンダが新開発したNSシリンダーを採用し、最高出力29ps/8,500rpm(最大トルク2.6kgf-m/7,500rpm)を発揮。
角断面スチール製ダイヤモンドフレームにアルミ製スイングアームとプロリンク式リヤショックを備え、前後ディスクブレーキとチューブレスタイヤ対応のアルミキャストホイールに、フロント19インチ&リヤ16インチのオン・オフ兼用タイヤを装備するなど足まわりもハイスペックだった。

そして、極めつけは乾燥重量114kg(車重124kg)という競技用車両にも匹敵する圧倒的な軽さ。そして、シート高も810mmとネイキッド並みに低かった。スリムな車体で足着きも良く、大きなハンドル切れ角と1350mmの超ショートホイールベースUターンも楽々。
大型リアキャリアも標準装備など、まさにバイク便のために生まれたような仕様だったが、それは実用性を兼ねたスポーツモデルとしての優秀性も示していた。

ちなみにホンダの現行モデルで割と近いものではCRF250L(タイプLD)になると思うが、参考までにスペックは最高出力24ps(最大トルク2.3kgf-m)、車重143kg、シート高830mm、ホイールベース1430mmとなっている。時代もコンセプトも異なるので同じ土俵では比べられないが、それでもAX-1の突出した実力はイメージしてもらえると思う。

今の技術で「AX-2」を出してほしい!

話を戻して、先日の試乗会ではショートサーキットでも試乗したが、鼓動感のある元気のいいエンジンとクルクルと曲がる軽快なフットワークで、現代の250ccスーパースポーツに迫る走りを見せてくれた。そして、何よりも操るのが楽しいマシンだった。

その後、期待された「AX-2」が世に出ることはなかったが、今でこそ同様のコンセプトを持った、便利で楽しくスポーツもできる都市型スクランブラーがあってもいいと思うのだ。

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