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モーター スポーツ コラム 2024年11月8日

いよいよ始まる“2024鈴鹿最終決戦” スーパーフォーミュラ最終戦プレビュー

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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ランキングTOPの坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)。

2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権も、シリーズチャンピオンが決まる最終大会がやってきた。今回は鈴鹿サーキットを舞台に週末に2戦連続で行われる。

全9戦のうち7戦を終えて、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が86.5ポイントで首位につけ、それを牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が72ポイント、野尻智紀(TEAM MUGEN)が70ポイントで追いかける状況となっている。

その他にも岩佐歩夢(TEAM MUGEN/55.5ポイント)、福住仁嶺(Kids com Team KCMG/46ポイント)、山下健太(KONDO RACING/43.5ポイント)の合計6人がチャンピオン獲得の可能性を残している。ただ、ポイント差を考えると最終的に上位3人による争いになりそうな気配だ。

改めて前回を振り返ると、富士スピードウェイを得意とする坪井が2連勝を飾り、シーズンの流れを変えるような快進撃をみせた。2レース開催のフォーマットでは、調子が良ければ一気にポイントを稼ぐことができると言われてきたが、まさにそれを体現するかのような結果となった。

一方の牧野は、1レース目の第7戦は予選での失敗が響いて4位、第8戦は展開に恵まれず3位となった。ライバルたちとは異なり予選でポイントを獲得できなかったのが少々痛手となった。

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ランキング2位の牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。

8月のもてぎ大会までランキング首位を死守していた野尻も、富士では苦戦。2レースとも7位と満足いく順位で終えられることができず、坪井にリードを許すことに。他のカテゴリーとは異なり、年間7大会で行われるスーパーフォーミュラでは、流れを掴むということも王座獲得の上では大事な要素となってくる。そういう意味では、最終大会が開幕する前の段階では、坪井が流れを持っていると言って良いかもしれない。

チャンピオン決定戦に向けて勢いはつけられたものの、決して楽観視している様子が全くないのが坪井陣営。レース後にTOM’Sの山田淳テクニカルディレクターが話した時も「富士は我々が2連勝できたけど、鈴鹿に行くとその逆も十分にあり得る。だから気を引き締めていかないといけない」と、緊張感が増している様子だった。
ひとつの週末で流れが一気に変わる可能性がある……それが2レース開催の“コワイところ”なのかもしれない。

もうひとつ、今年の王座争いの行方がまだ定まりきっていない要素として挙げられるのが、それぞれに長所と短所があるということだ。

ここまでの戦いぶりを見ると、決勝レースで一番安定して強いのは坪井。富士スピードウェイでの第4戦と第7戦で優勝した時は、いずれも後方グリッドから順位を上げてピット戦略で逆転していくというパターンで、昨年の宮田莉朋と同じような展開を作れていた。

逆に言えば予選でトップ3圏内に入れるかどうかがキーポイントとなりそう。鈴鹿はコース上での追い抜きが難しい分、いくらレースペースが良くて戦略に長けていたとしても、予選のポジションがレースの行方に大きく影響してくる。しかも、舞台となるのはホンダ勢が得意としている鈴鹿で、今季の坪井が唯一ノーポイントで終えた場所でもある。

坪井陣営からは「開幕戦でダメだったところの原因は分かっている」という声は聞こえるが、何が起こるかわからないのがスーパーフォーミュラ。予選でどこまでトップに近づけるかが、ひとつの注目ポイントとなりそうだ。

同じような点が課題となりそうなのが、ランキング2番手の牧野。振り返ると、今季開幕前のテストから毎回好調な走りをみせ、予選前のフリー走行でもトップタイムを記録することがあった。しかし、いざ予選になると最後の合わせ込みがうまく噛み合わずにトップ3圏外で終わってしまっている。実際に今季牧野が予選ポイントを獲得できたのは第2戦オートポリスのみ。「今年は牧野が速い」と言われ続けてきたなかで、それが思うように結果として表れていないのが現状だ。

前述の通り、鈴鹿は追い抜きが難しいためスタートポジションが非常に重要となってくる。予選から流れに乗れれば、勢いに乗って2戦連続で大量得点を稼ぐという姿も見られそうだ。

そして、3度目の王座を狙う野尻。今季は開幕戦で優勝を飾り、中盤戦もランキングをリードしてきた。ただ、内容面で見ると決して他を圧倒する速さや強さがあったわけではない。ある意味で、それを露呈したのが前回の富士大会だったような気がする。

逆転優勝を狙う野尻智紀(TEAM MUGEN)

それでも、調子が良くないところから当日のコンディションに対してマシンを合わせ込んで予選で結果を残してくるというのが彼とTEAM MUGEN陣営の強みだ。実際に第6戦、第7戦ともに決勝では沈んだが予選では両レースともトップ3に入ってポイントを獲得している。鈴鹿は開幕戦で予選3位・決勝優勝と力強い走りを見せたが、その時とは開催時期も異なるため、未知数な部分も少なからずある。

ある意味で“敗戦”だった富士2連戦を終えた後「僕のレースキャリアでこれ以上ないくらい頑張ったと言える1ヶ月にしなければならない」と語っていた野尻。果たして、その答えがどうなのか。今週末の鈴鹿で明らかになる。

昨年はアクシデントにより1レース目の決勝がほとんど走れないままで終わり、実質的な1戦勝負のような展開となった鈴鹿大会。まずは今年に関しては大きなアクシデントなく無事に終わってほしいという気持ちがあるが、それに加えて“鈴鹿での2連戦”がどのような展開になっていくのか……。今年もまた多くのファンに後々語り継がれていくようなチャンピオン決定戦になることを期待したい。

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文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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