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野球 コラム 2023年6月9日

打率4割は夢のまた夢?それとも・・・ルイス・アライズに託したい希望

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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ルイス・アライズ

ルイス・アライズ

1941年のテッド・ウィリアムズ以来の4割打者誕生か?と色めき立つのは尚早かもしれないが・・・

現地時間6月7日、マーリンズの安打製造機ルイス・アライズは地元ローンデポ・パークでのロイヤルズ戦で4打数2安打、打率を.403まで引き上げた。レギュラーシーズンの1/3を越えるチーム63試合目での段階での打率4割は大したものだ。

メジャー5年目のアライズはベネズエラ出身の26歳。ツインズ在籍の昨季は.316でア・リーグ首位打者に。アーロン・ジャッジの三冠王を阻止したとも言える。トレードでマーリンズに移籍した今季も首位打者になれば、史上2人目の両リーグでの打率タイトル獲得で、それを2年間で達成となれば初の快挙だ。

もっとも、ウィリアムズ以降もこの時期まで4割を維持したケースは10度もある。しかし、言うまでもないが、だれもが最終的に4割を達成していない。

シーズン終盤まで4割を維持したケースとしては、チーム134試合目だった1980年のジョージ・ブレット(最終的には.390)、107試合目の1993年のジョン・オルルド(.363で閉幕)がある。

また、ストライキで短縮シーズンとなった1994年、トニー・グウィンはチームが117試合を消化し自身は110試合出場の時点でシーズンが終わったが、打率はなんと.394だった。最後の4割は、チーム36試合目の5月15日だったが。

アライズは今度どうだろう。常識的には4割は難しいと考えるべきだろう。その根拠の一つに、彼の異常に高いBABIP(本塁打を除くインプレー打率)で、何と.417もある。BABIPは一般的には「長いスパンでは3割前後に収束するもので、これが極端に高い打者は幸運に恵まれていると考えるべき」と言われている。したがって、今季のアライズの場合もシーズンが深まるにつれBABIPとともに打率が低下する可能性は高い。

一方で、「長いスパンでBABIP3割」は一般論でしかなく、個別の選手では例外が多々ある。俊足の選手は凡ゴロも内野安打に変えてしまう。イチローがそうで、彼の通算BABIPは.338と高い。シーズン安打数メジャー記録(262)を達成した2004年(打率.372)に至っては.399だった。

アライズの場合もトレンドとしてはBABIPは低下していくだろうが、極端には下がらないかもしれない。BABIPの外にある、本塁打、四球、三振とも彼は少ない。積極打法で四球は少ないが、それ以上に三振は少ない。今のメジャーでは大雑把に言えば4打席に1度三振するのが普通だが、アライズの三振率は4.6%と、四球(7.9%)以上に少ない。また、本塁打も今季は4月11日にサイクルヒットを達成した際の一本のみだ。ということは、彼の打率はBABIP次第と言えよう。

それでも理性的には、「さすがに4割は無理でしょ」ということになるだろう。しかし、半世紀以上もMLBを見守ってきたぼくは、過去何度も「絶対無理」と見られていた金字塔が樹立されるのを見てきた。

長い間、三冠王は1967年のカール・ヤストレムスキーを最後にもう出ないだろうと言われていた。ルー・ゲーリッグの2130試合連続出場も、ロジャー・マリスのシーズン61本塁打も、タイ・カッブの通算4189安打も、ハンク・アーロンの通算755本塁打も不可侵と見られていた。しかし、その後どうなったかはご存知の通りだ。

これからも長年MLBを見守り続ければ、そのうち、ジョー・ディマジオの56試合連続安打もひょっとしたら破られるかもしれない。30勝投手だって、投手の起用トレンドが変われば可能性はあると思う。なにせ、本塁打王とサイ・ヤング賞の両方を争うという破天荒な選手すら出てきたのだ。そうなると、4割打者の誕生も絶対にないとは言い切れないのである。

そんなことをいま一度認識させてくれたアライズには感謝だ。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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