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野球 コラム 2022年10月28日

アストロズ対フィリーズのワールドシリーズは新プレーオフ元年にふさわしい

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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アストロズ対フィリーズ

アストロズ対フィリーズ

2022年ワールドシリーズは、現地時間10月28日にヒューストンで開幕する。

アストロズとフィリーズの対戦は、日本のファンにはやや訴求度に欠けるかもしれないが、新しいポストシーズン・フォーマットが採用された今季にふさわしいマッチアップとも言える。

今季、アストロズはリーグ最多の106勝(ア・リーグで100勝以上は同球団のみ)を記録した。ここ6年間で4度目のワールドシリーズとなる。リーグ優勝を逃した2回も、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(LCS)まで進出している。球団史上初の世界一となった2017年のサイン盗みですっかり悪役イメージが定着してしまったが、今季も結果的には「来るべくして来た」感がある。

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一方のフィリーズは、東地区3位からの勝ち上がりだ。今季から、ポストシーズン出場が各リーグ5枠から6枠に拡大されたが、その最終6枠目からワイルドカードシリーズ、地区シリーズ、LCSを制して来た。

ワールドシリーズには、レギュラーシーズンでの実力ナンバーワンのチームがプレーオフも勝ち抜いて進出してほしいと思う反面、「勝った者が強いんだ」風の短期決戦ならではの意外性、スリルも求めてしまう。その意味では、ワールドシリーズの醍醐味を味わえる顔合わせだと言えるのではないか。

両チームには、それなりのサイドストーリーもある。

アストロズの場合は、もちろんサイン盗みの汚名返上だ。ゴミ箱をガンガン叩く(これが、電子デバイスを駆使して盗んだサインの最終伝達手段だった)ことなしでも世界一になれることを証明する絶好のチャンスだ。

また、この6年間のうちに、2017年世界一のコアメンバーのジョージ・スプリンガー(2021年ブルージェイズへ)とカルロス・コレア(2022年にはツインズへ)が、他にもゲリット・コール(2020年ヤンキースへ)やザック・グリエンキ(2022年ロイヤルズ)など、主力が続々とFAで流出したが、それでも若手の台頭やタイムリーな補強で戦力を維持しているのは賞賛に値する。

首脳陣も変わった。2017年のワールドシリーズ制覇は、「数字に強いが人間味に欠ける」とも言われたジェフ・ルーノウGMとスタンフォード大出身でセイバーを解するAJ・ヒンチ監督のコンビで掴んだが、今はイエール大学で歴史学を専攻したロマンか派?でもあるジェームズ・クリックGM(もちろん統計分析にも精通している)と、オールドスクール派の代表的存在である73歳のダスティ・ベーカー監督が、選手を纏め上げている。

一方フィリーズでは、6月3日、22勝29敗の時点でジョー・ジラルディ監督の首が飛んだ。しかし、代理を務めることになったロブ・トムソンは、そこからワイルドカード最終枠を獲得するまでチームを立て直した(その結果、10月10日には「代理」が取れて正監督に就任した)。

近年のフィリーズは、2019年春のブライス・ハーパー獲得に象徴される大枚をはたく補強を連発しながらも5割前後をウロウロする存在だった。しかし、2020年12月に編成部門の最高責任者に就任した、将来無視(言い過ぎか)でWin Now派のデーブ・ドンブロウスキーは、補強の手を緩めなかった。結果的には、それが実を結んだことになる。

実は、両球団は1980年にナ・リーグのLCSで相まみえたことがある。2012年まで、アストロズはナ・リーグ所属だったためだ。

当時唯一のプレーオフだった5回戦制のLCSで両者は対決。フィリーズが3勝2敗で勝利(最終的には世界一に)したが、5試合中4試合が延長戦だったこのシリーズは、ポストシーズン史上に残る名勝負のひとつとされている。

今回もそれに劣らぬ熱戦を期待したい。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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