日本が核兵器禁止条約に署名できない2つの理由
公開: 更新:
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月27日放送)にテレビ東京・政治部官邸キャップの篠原裕明が出演。日本が署名をしない方針を示した核兵器禁止条約について解説した。
加藤官房長官「核兵器禁止条約に署名しない方針に変わりはない」
核兵器禁止条約が2021年1月から発効されることについて、加藤官房長官は10月26日、臨時閣議後の記者会見で、核廃絶というゴールは共有しているとした上で、「わが国のアプローチとは異なるものであるから、署名は行わないという考えに変わりはない」と述べた。
飯田)いままでと変わりはないというところですか?
篠原)そうです。ただ、日本が世界で唯一の被爆国であるということを考えると、純粋な中学生や高校生の立場であれば、「なぜ日本はこの条約に参加しないのか?」という問いは出て来ると思います。
飯田)そうでしょうね。
核抑止論まで禁止されてしまうと、日本の安全保障政策の根幹が揺らいでしまう
篠原)それに一言で答えるなら、「この条約が核の保有だけではなく、“核を使うぞ”という脅しも禁止している」ということなのです。日本は皆さんもご存知の通り、アメリカの核の傘のなかにいる。もし日本に他国が悪さをして来れば、「そっちにアメリカの核が飛んで行くかも知れないよ」という構図のなかで、日本の安全保障が保たれているわけです。
飯田)ええ。
篠原)ですから、その条約が禁止している核抑止論、そこまで禁止されてしまうと、日本の安全保障政策の根幹が揺らいでしまうということです。でも、そこまで政府ははっきりと説明しないのです。昨日(26日)の加藤官房長官の会見の言葉を借りて述べますと、「現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、同時に地道に核軍縮を前進させる道筋を追求して行くことが適切だ。わが国のアプローチとは異なる。現状で核兵器保有国のみならず、非核兵器保有国からも必ずしも支持を得ている状況ではない」と。
飯田)そうですね。
批判を避けるためにわかりにくい言葉を使う加藤官房長官
篠原)加藤官房長官はわかりにくい言葉を使うのですが、要は「日本の現実の安全保障の脅威、北朝鮮などに対応する必要がまずあるのだ」と。「核軍縮を進める必要があるのはもちろんわかってはいるが、この条約は非核保有国からも、必ずしも支持を得ていませんよ」ということを言っているのです。でもこれは、実態を反映した言葉とは言えません。日本政府というのは、国際政治の実態に踏み込んだ説明をしたがりません。実際にすると批判されてしまうからです。例えば岸防衛大臣が25日に地元の山口で、「核保有国が乗れないような条約になっている部分について、有効性に疑問を感じる」と言った。これはまさに実態に即しているのです。「日本がお世話になっているアメリカのような核保有国が納得してくれないなら、日本は乗れないよ」と。でもこう言ってしまうと、やはり岸防衛大臣の発言には批判が集まってしまいました。正直に話すと批判されるので、建前で話さざるを得ない。核保有国の理解ではなくて、「非核保有国の理解が得られないから」というロジックになって行くのです。
飯田)そうですね、「核を持っていない、日本みたいな国で入っていない国もあるじゃないですか、だから入らなくていいのですよ」と、やんわりと言う感じ。
批准している50ヵ国は力を持っていない国々なので、日本はまだ乗れない
篠原)それから50ヵ国の批准している国の内訳を見ますと、中南米、アフリカ、南太平洋諸国など、国際政治ではそれほど力を持っていない国々です。核兵器はアメリカとロシアで全体の9割を持っているわけですから、そういう意味では、国際政治のパワーバランスのなかで、この50ヵ国は大きな力は持っていない。だから日本はまだ乗れないというところですね。
飯田)ぶちまけて言ってしまうと、中南米やアフリカ、南太平洋諸国は、常時核の脅威にさらされているところではない。日本のように何百発もの核弾頭を積んだミサイルがこっちを向いている国とは違うんだよと。しかし、そこを前提として議論しないと、守って行けないのですよね。
篠原)理想と現実を取り払って、腹を割って話すという状況をつくらないといけないと思います。
飯田)建前の揚げ足取りに終始してしまうのですよね、国会がね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。