2023.4.13 センチュリーシネマ
『GOLDFISH』
『ケイコ 目を澄ませて』リターンマッチ (再上映) 第10ラウンド
主演の永瀬正敏さんは1966年生まれで、私は64年生まれ。
born in the 60’s
聴いてきた音楽はほぼ同世代である。
鑑賞中、1979年リリース、THE JAM 『PRIVATE HELL』が頭の中で鳴っていた。
誰よりも近く ー 君は自分自身の中に見る
鏡に映るイメージ ー 君が理想としていた姿
日々が過ぎゆくごとに ー 少しずつ
君は思い出せなくなる ー 自分の求めていたものを
顔の輪郭をたどる指 ー それは空をかすめる
年老いた君の顔ーかつては美しかったその顔は
今そこにあるけど、同じとは思えない
プライヴェイト・ヘル
自分自身の中に見る感情や肉体の衰えを探りながら、夢や希望が色あせていく、年をとることの葛藤をポール・ウェラーがシャウトする。
1978年に結成したパンクバンド、亜無亜危異のギタリスト藤沼伸一さんによる初監督作品。
年代や状況によって受け取り方はそれぞれだろうが、60’s としては還暦を過ぎてもミュージシャンとして精力的に活動を続け、新たな分野にも挑戦されている藤沼監督の姿に心を奮い立たされた。
80年代にムーヴメントを起こしたパンクバンド『銃徒 (ガンズ)』は、永瀬さん演じるイチを中心に30ウン年ぶりの再結成を目指すのだが、当然にメンバー内の温度差が生じる。
他のメンバーが、過去の自分を取り戻したい思いや金銭的事情などで前のめりになる中、北村有起哉さん演じるハルは過去の自分が求めていたものを思い出せなくなっていた。
それが切なく儚い。
北村さんが演じていることを知らなければ誰なのかわからないくらい、スクリーンの中にはハルが居るだけだった。
無亜危異の実際の話を題材にして脚色されたストーリーは、ハルが傷害事件を起こす前のイチとの関係性なども描かれていて、当時を知る人には興味深いだろう。
パチンコや古いテレビゲームに明け暮れ、シンナーで歯はボロボロのアル中、そんなどん底でもがくハルを何があっても献身的に支える有森也実さん演じる雅美が一番パンクしていたし、途轍もなくかっこ良かった。
金魚 (GOLDFISH) はフナを鑑賞用に交配させたもので、金魚鉢の中でしか生きていくことがでない。
食う気にはならないしな。
コラボ商品として売られていたマーシャルビール。
椎名林檎さんが「マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ」と歌う『丸の内サディスティック』に登場するベンジーこと元ブランキー・ジェット・シティの浅井健一君は高校のクラスメイトだったが、今も衰えぬ感性を持ち、ハイスピードで新作リリースして、第一線を走り続ける姿は自分のモチベーションになっている。
永瀬さんがブラジャーをして撮影するシーンはブランキーのアルバムジャケットからの着想だろう。
上映時間が5分重なっていたが、鑑賞後スムーズに案内していただいたスタッフの方の配慮により、『ケイコ 目を澄ませて』の再上映の最終日に第10ラウンドを無事鑑賞することができた。
ありがとうございました。
『GOLDFISH』と『ケイコ 目を澄ませて』には共通点があって、どちらも上映時間が99分。
鑑賞するにはジャストサイズで、いい映画でも長いと2回目は考えてしまうが、99分なら気軽にまた足を運べる。
10ラウンドまで行ったのは上映時間もあるだろう。
『GOLDFISH』はこの地方では刈谷日劇でも予定されていて、そちらでも鑑賞したいと思う。
これまでもいろいろと書いてきたが、木村知貴さんと同じくまばたき厳禁のちょい役でご出演されていたカトウシンスケさんについて書いていなかった。
2022年マイベストテンの9位に選ばさせていただいた『誰かの花』の主人公で、『ある男』のボクシングジムのトレーナー役と言えばわかる方も多いだろう。
今もっとも観たい俳優のひとり。
脇役の方々も素晴らしかったが、ちょい役も贅沢なのは三宅唱監督に依るところだろう。
ケイコとジムの会長に触発されて、毎月1000km、1年で12000km、自転車で走ることを今年の目標としてブログにも書いたが、今現在1944kmで目標の半分ちょっとのペース。
「自分との戦いやろ」、「がっかりだよ」と、トレーナーの声が聞こえてきそうである。
暖かくなってきたので、これからバンバン挽回して、あと10kgの減量とペダルを回し続ける脚力を手にしたら来年は峠や山を登るヒルクライムに挑戦したいと思う。
プライヴェイト・ヘルに堕ちないためにも。