2023.3.13 刈谷日劇 『ケイコ 目を澄ませて』第8ラウンド
3月10日に第46回日本アカデミー賞の最優秀賞の発表があった。
各部門で受賞されたみなさま、おめでとうございます。
石川慶監督『ある男』が最優秀作品賞をはじめ8部門を受賞された独占状態の中で『ケイコ 目を澄ませて』の岸井ゆきのさんが最優秀主演女優賞を受賞されたのは強く目を引くものがあった。
日本アカデミー賞よりも歴史のある映画賞はいくつかあるが、受賞式の模様がテレビ中継されるなど、華やかさや注目度としては一番であろうし、これを機に受賞作品を観たいと思われた方も多く居られるだろう。
そんな折、刈谷日劇での上映期間が再延長されていて、3月30日までとなっていたので、ぜひ劇場でご覧いただけたらと思う。
私もまんまと8冠につられて『ある男』を凱旋上映中のMOVIX三好へ足を運ぶと、受賞効果を感じるなかなかの客入りだった。
内蔵をえぐるボディブローのようにズシリとした痛みを感じる重量級の見応えに8冠受賞も納得した。
その中で、最優秀助演女優賞を受賞された安藤サクラさんは『百円の恋』で第39回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞されていて、こちらも女子ボクサーを演じられていた。
ひきこもりが中年ボクサーに恋をしてから人生が一変してプロのリングに上がるというストーリーで、ぷよぷよに見える体は力士と同じ太り方をしていて、脂肪の下には鍛え上げられた筋肉を蓄え、短期間で脂肪だけ減らして筋肉を浮き上がらせ、二重あごから鋭い表情へと、映画の最初と最後ではまるで別人。
撮影中に何度も気を失いそうになりながらも限界まで力を振り絞ったという凄まじいまので女優魂に、予告編を観ただけでも感動が蘇ってくる。
その予告編にチラッと姿が見えるトレーナー役の松浦慎一郎さんは学生時代からのボクシング経験を活かして『アンダードッグ』や『BULE/ブルー』等々のボクシング映画にも出演されていて、『ケイコ 目を澄ませて』でもいい味を出している。
『ある男』でもボクシングが重要なシーンとなっていたので、もしや?と思って検索したら松浦さんが監修されていた。
ケイコのミット打ちのシーンも松浦さんあってこそで、どちらの作品にも携わっていることから、ある意味日本アカデミー賞の影の主役と言っていい。
以前ブログでご紹介した元プロボクサーの中村淳一さんが経営されていた『まんぷくカフェMACK』が中村さんの体調を理由に閉店されたので、この場を借りてご報告まで。
いくつものテレビ番組で紹介されたこともあってお客さんは入っていたが、毎日夜明け前から夜遅くまでほぼ休みなしで働けば、そりゃ体は悲鳴を上げるわ。
少しのひきこもり期間を経て、現在は会社員として働かれているが、どうやら相変わらずじっとされていないみたいで、本人曰く「自己満足のトレーニング」をやめられないのはボクサーあるある。
中村さんの言葉からはリングに上がるまでの自分との過酷な戦いを知る仲間や対戦相手をリスペクトする気持ちが伝わってきて、拳を交えた敵は一生の友にもなり得ることを教えてくれる。
岸井さんのラストの表情もそのことを示唆しているように思える。
池袋シネマ・ロサにて、3/11(土)〜3/24(金) の期間レイトショーにて上映中の谷口雄一郎監督『あのこを忘れて』。
インティーズ業界のアカデミー賞と言える?中之島映画祭で優秀賞を受賞された素敵な作品である。
劇場公開、おめでとうございます。
日本アカデミー賞ほど華やかなリングではないが、ドレスもタキシードもないTシャツにGパンの受賞式だが、映画への想いは負けていない。
関東でご高覧いただいている方が居られましたら、ぜひ劇場にてご覧ください。