十二月また來れり、早く夏にならんか。 - 日々の与太

十二月また來れり、早く夏にならんか。

十二月また來れり。
なんぞこの冬の寒きや。

 この冒頭が不自然ではない寒さがようやくやって来たか。

 つい先日まで、

というような気温があり得たことは、今年のこととして記憶にとどめて置かなきゃな。

 気候変動の結果、日本の気候は四季から二季へと変わりつつあるという話もあるが、ずいぶん以前、日本は本来亜熱帯に近い気候でそもそも二季と見たほうがよく、四季が云々されるのは実は中国古典文学の影響でそう感じる気分が生まれたに過ぎないのだという話も目にした覚えがある。目にしたときには驚いたのだけれど、考えてみれば夏服・冬服の別はあっても「春服」「秋服」といった言葉はそれほど一般的ではない。学校の制服だってそうだろう。四季の別が截然としたものならば、制服だって四季折々に変わっていて然るべきだ。けれど、もし実際に春服・秋服の別がある学校があったとしたらば、お洒落に過ぎやしませんかい、ってなふうに感じそうぢゃないか。つまり、メンタルには春・秋はないでもないけれどフィジカルには二季なのだ、と考えてみるとなんとなく納得出来ないでもない話ってことぢゃないか。要は、目にはさやかに見えねども中国古典文学にぞ驚かれぬるというわけで、春・秋はnullってことだな。

 

 風の音つながりなのかどうか、ひとつついでに。

 すでに日本語による報道もなされているに違いないだろうに、何を今さらなところなのだけれど、耳目にした限りでの「風の音」付き日本語報道*1、ちょいと話が雑に過ぎやしませんかね?

 上のヴィデオ、英語のキャプションをちゃんと読んでいればおわかりのことと思うのだけれど、一般に報道された「風の音」はインサイトから送信されたデータの「音」そのものではなく、聴き取りやすさの便を図るためにピッチを上げたものになっている。でも、その点に触れた日本語報道は見当たらないみたい。

 再生ページ下欄の説明によれば、

The seismometer readings are in the range of human hearing, but are nearly all bass and difficult to hear on laptop speakers and mobile devices. We provide the original audio and a version pitched up by two octaves to make them audible on mobile devices. Playback is suggested on a sound system with a subwoofer or through headphones.……

というわけで、2オクターブも高い音になっているというのだ。これって是非とも断っておくべき情報ぢゃぁないですかね?*2

 火星の大気圧は地球より遥かに低いものであり、音量だってずいぶん上げなきゃぁヒトの耳にはなかなか聞き取れないものなんぢゃないかしら。ピッチの問題共々、そういうところに思い至らせる言葉があってこそ、わざわざ火星という異界の「風の音」をヒトビトに知らせる意義もあるんぢゃないか、というのは、野暮なお節介ということになるのが今の俗世というものなんでござんすかねぇ*3

 

 それにしても、朔太郎の声は一本調子な上に力のもらないものなのだな。やっぱり寒いのは厭なんだろうな。まぁちゃんとしたヒトならば、そうですよね、そうに決まってますよね。

 

風の歌を聴け (講談社文庫)

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*1:cf. 「米探査機、火星で「風の音」を初めて入手 一般公開」(CNN.co.jp)hatebu「火星の”風の音” 初めて捉えた NASA」(NHKニュース)hatebuなど。実際のところ、ここで取り上げている問題に関しては、英語圏での報道だって似たり寄ったりみたいなのだけれど。

*2: さすがにテレビだとこれくらいのことは伝えるところもあったんぢゃないかと思うのだけれど、どうなんだろう、実際のところ?

*3: NHKのページだと「データを元に」云々といった文言で、暗に「風の音」は生のデータぢゃないぜってところを匂わせてるけれど、それだけぢゃぁ意味がない。知っているヒトと知らないヒトとの間の格差を感じさせるだけの厭ったらしい云い方ぢゃないか。