File01 惑星ソアクルへの乗客輸送① ストライキの尻拭い
別作品の制作に煮詰まった時に、一行二行と書き貯めていたものが貯まったので、放出してみました。
スペースオペラは無理なので、こんな感じになりました。
壮大な宇宙戦争も無理なので、せいぜい小競り合いくらいです。
用語も適当だったりするのでご容赦ください
6/6 サブタイトルを改編しました
運んできた貨物の受け渡しを済ませて、いつもの貨物配達受付に戻ってくると、受付嬢のササラが俺を呼び止めた。
「やあやあ。待ってたよスネイル」
「誰がスネイルだ。俺の名前はショウン・ライアットだ」
このササラという受付嬢は、ある理由から俺をスネイル=カタツムリと呼ぶ。
確かに俺は、人命がかかっていない限りスピード重視の急ぎの配達を嫌う。というかしない。
海賊に追われてるとか、超新星爆発が起こるとかでない限り、法定速度プラス5くらいまでしかださない。
というか、俺の船は軍の払い下げで旧式なため、そんなに速くないうえ、故障も怖いからだ。
その為、ノロマ野郎と言う意味でスネイル=カタツムリと揶揄されているのが理由の1つだ。
その代わり、無事故無違反の自己記録は更新中だ。
ちなみにこのササラという受付嬢は、仕事は出来るが人をイラつかせる天才だ。
「君に急ぎの仕事だよ」
「断る」
配達を終わったばかりなのに冗談じゃない。
補給も終わってないのに。
「報酬は緊急チャーターって事で30万クレジット。目的地は惑星ソアクル。運ぶのは人間2人。燃料満タンのおまけ付き」
「惑星ソアクルなら高速定期便があるじゃないか」
銀河になだたるコズミックエーギル社自慢の大型高速旅客船『ヘブリング1』こいつを導入したスターフライト社の高速定期便はなかなか人気なはずだ。
「それがストを起こしちゃってさあ。3000人以上が足留め状態なんだよ」
「なんか前もしてなかったかあの会社」
「倒産の臭いがするね~」
他人事なため、呑気に無責任な発言をするササラ。
まあ、スターフライト社は関係者の間では余り評判はよろしくない。
「差し詰め足留め食らった客の依頼だな」
「ごめーとー♪銀河標準時で明日までにソアクルに行きたいんだって」
「言っとくが、最大船速で行けとかはお断りだ」
「その辺りは説明してあるから大丈夫♪」
銀河貨物輸送業者組合は、俺のような貨物輸送業者と契約し、荷物を届けさせることで業務を執行している。
貨物輸送業者を裏切るようなことをすれば、契約する貨物輸送業者が居なくなり、業務が出来なくなる。
無論、その逆をすれば貨物輸送業者は組合から追放になり、業界からも閉め出される事になる。
タチの悪い受付嬢だと、依頼人からの報酬を50%ピンはねしたり、密輸品だとしりながら輸送させ、発覚したときは無関係を貫いたりするやつがいる。
こいつは言動はムカつくが、仕事に関しては信用出来る。
移動には、少し速度を出せば10時間くらいですむし、燃料満タンはありがたい。
「で、お客さんは?」
「ターミナルの待合に居るから、今連絡するよ」
実はこういう急な人間の輸送は、俺にはよく回ってくる。
その理由としては、俺の船が貨客船である事だ。
といっても、貨物室に居るよりはマシ。という程度の客室モドキがあるだけなのだが。
船のローンも残っているし、短距離でもあるので、引き受けることにした。
暫くして、宇宙港にやってきたのは、ビジネススーツに身を固めた中年の男と、キャリアウーマンの見本のような30代の女の2人組だった。
「オルバート・カルザンと申します。急な依頼で申し訳ない」
「秘書のロベリア・レナルです」
男はビジネススマイルを浮かべ、女は眉間にシワを寄せて苦い顔をしていた。
「貨物輸送業者のショウン・ライアットです」
ちなみに2人とも初対面であり、服装もフライトジャケットなので、失礼な格好ではないはずだ。
なのになんで女の方は眉間にシワを寄せて苦い顔をしているのかが分からない。
「レナルくん。いつまで眉間にシワを寄せているのかね。彼に失礼だろう」
「失礼しました。ですが、出発直前にストなんてスターフライト社の社員の正気を疑いますよ」
どうやら苦い顔の原因は、かの高速定期便が原因らしい。
「とりあえずこちらですので」
失礼が無かったならと、自分の船に案内する。
「まったく。チケットの払い戻しもしないなんて冗談じゃないわ!」
「パイロットの事故も多い様だしな」
どうやらかのスターフライト社は、関係者以外にも評判はよろしくないらしい。
俺の船は、下部貨物室型輸送貨客船というやつで、貨物室の上に操縦室やエンジンやなんかがあるタイプだ。
船体カラーが白なのは払い下げた時からで、船名は色をもじって『ホワイトカーゴ』だ。
その停泊地に到着すると、馴染みの作業員がエネルギーチューブを外したところだった。
「ようショウン。ガスは満タンにしといたぜ。払いは組合持ちとは羨ましいぜ」
「サンキューデニス。戻ったら整備を頼む」
こいつはデニス。この宇宙港の作業員であり優秀な整備士でもある。
なので、この宇宙港にいるときは、コイツに整備を頼むようにしている。
「燃料は入ったので、早速出ましょう」
乗船用のタラップが降りているので、お客2人を案内する。
俺の船『ホワイトカーゴ』の船内は、入り口から入って左に船首の操縦室。右に長いソファーが2つとテーブルが置いてある。
お客にはここにいてもらうことになる。
その奥には、キッチンやトイレやシャワー、自室がある。
「そこのソファーにどうぞ。直ぐに出発準備しますんで」
タラップの入り口と、貨物室に降りる為の降り口の蓋をしっかりとしめると、操縦席に入る。
貨物室の扉が閉まっているのを始めとして、全てのチェックを完了させると、管制塔に通信をいれる。
「管制塔。こちら登録ナンバーSEC201103。貨客船『ホワイトカーゴ』。出港許可を求む」
こちらの通信に答えたのは、中年の男でこの前夫婦喧嘩をして奥さんにぶん殴られて前歯を折ったコビーだ。
『こちら管制塔。『ホワイトカーゴ』出港を許可する。戻って直ぐにまた出発とは景気がいいな。原因はあのデカブツか?』
「了解、管制塔。この急ぎの仕事の原因は視界に入れないように努力するよ」
デカブツというのは、ストライキ中の『ヘブリング1』のことだろう。
まあ、向こうは旅客港でこちらは貨物港だからはちあわせるとこはないだろう。
『お客さん。出港許可がでたから出発しますね』
マイクを船内に切り替えて、出発を報告する。
「エンジン点火。微速前進」
別にいちいち声を出さなくてもいいとは思うのだが、ギルドの規則な上に、ブラックボックスを取りつけられているため、言わざるをえない。
宇宙港の外縁部まで船を進めたのち、超空間跳躍可能な宙域まで第一船速で移動すると、エネルギーチャージをしてから超空間に入ることになる。
その移動の途中、宇宙港の中で存在感を出しながら居座っているヘブリング1を遠距離から見ることができた。
「超空間跳躍の座標軸固定。目標惑星ソアクル。エネルギーチャージ開始」
そして数分でチャージは完了し、
「エネルギーチャージ完了。超空間跳躍開始」
超空間のトンネルをひたすらに進む事になる。
「超空間に侵入。これより自動航行に移行する」
ジャンプの瞬間は緊張するが、超空間に入ってしまえば、あとは自動航行にお任せだ。
そして一息つこうとしたとき、
「あー来ちまったか」
向こうにつくまでは持つかと思ったが、ダメだったらしい。
落ち着くまで暫くまってから、お客に説明するために操縦室のドアを開けた。
すると当然、
「誰かな君は?キャプテンの彼はどうしたのかね?」
男性客には鋭い視線をむけられ、女性客はバッグに手を入れたままこっちを睨み付けていた。
おそらくバッグには銃が入っているのだろう。
「すみません。これ、見てもらえますか」
俺は自分の身分証を差し出す。
女性客が近寄って身分証を受けとると、男性客に渡した。
男性客が中身を確認すると、
「君はシュメール人か。なるほどなるほど」
どうやら理解して貰えたらしい。
「それにしてもずいぶん変わりましたね…」
女性客はバッグの口を閉めながら、俺を見つめている。
シュメール人というのは、過酷な環境に陥った人類の進化の結果とも、遺伝子操作による改良人類とも言われている、雌雄同体のヒューマノイドのことだ。
普通のヒューマノイド同士でもたまに産まれることがあるため、人権や権利は完全に保証され、差別的な扱いもされることも、今はない。
産まれる時には男女どちらかの性別で産まれてきて、成長するともう片方の性別に変身する事が出来るようになる。
その為、シュメール人は例外なく中性的な容姿になる。
俺の場合、白い髪の色と蒼い眼の色はそのままに、短かった髪は腰まで伸び、身体は細くなり、身長も少し縮むが、胸だけは無駄に巨大になるのだ。
ちなみに変身時に髪や身長が伸び縮みするシュメール人は、100人に1人はいる。
「しかし、なぜ変身したんだね?」
もっともな質問だが、これには種族的な理由がある。
「すみません。『月のもの』が急に来てしまって…」
「それは仕方ないですね」
女性客はくすりと笑いながら理解を示してくれたらしい。
ちなみにこれが、俺がカタツムリ=スネイルといわれている最大の理由だ。
なおそれをシュメール人以外が口にすることは、差別的な発言に近いことだけは明言しておく。
ちなみに『月のもの』というのは、シュメール人が生存用の機能を維持するための身体生理現象で、月に一度、産まれた時とは逆の性別になってしまうというものだ。
大抵は1日か2日で終了する。
だが今は、それよりは大事なことがあった。
「すみません。前の配達から休憩無しでのフライトなので、ちょっと着替えてきてよろしいですか?」
前の配達場所からの帰還コースが小惑星地帯を抜けるコースだったため、ずっと操縦桿を握っていて、汗をかいたまま着替えを出来ていないのだ。
「ああ。無理をいったのはこちらだからね。気兼ねなくしてくれたまえ」
「有り難うございます」
許可を貰うと、自室から着替えを取り出してシャワーに向かった。
シャワーを終えると、着替えといってもさっきと変わらない、タンクトップにフライトズボンにフライトブーツ。腰には護身用の短針銃の収まったホルスター。フライトジャケットを羽織るスタイルでお客の前にでる。
「では私は操縦室にいますので、なにかあったら声をかけてください。トイレは手前から2番目ですので」
かなりあっさりめの対応だが、馴れ馴れしくされるのを嫌う客もいるので、これくらいがちょうどいい。
操縦室から離れるのも良くはないしな。
さて、読みかけの小説でも読むことにしよう。
惑星オルランゲアを出発してから3時間。
時々計器や外の情報を確認したりしながらも、何事もなく進んでいた。
出発したのが午前9時ごろだった事を考えると、そろそろ昼飯の時間だ。
諸々をチェックし直してから操縦室をでると、
「あの、補給してないので簡単なものしかできませんが、昼食召し上がりますか?」
男性客が見ていた書類に視線がいかないように気をつけながら、お客の2人に声をかける。
「ああ。お願いするよ。昼前に到着の予定だったから考えていなかったからね」
「わかりました。少々お待ちください」
なんとなくセレブっぽいので、安物は食べないかもと思ったが、そうでもないらしい。
確認をとってからキッチンにむかうと、まずはコーヒーサイフォンをセットしてから、残っていたくず野菜を細かく切る。
それを、油を引いたフライパンで炒め、塩コショウで味付けする。
それが終わると、ベーコンも火を通しておく。
その2つを冷ましているうちに、食パンを適度な厚さにカットする。
卵をボウルに割りいれると、白身を切るように混ぜていき、よく混ざったらさっきのくず野菜をまぜいれ、長方形のフライパンで食パンに収まるような形にオムレツを焼き上げていく。
オムレツが焼けたらまた熱を取るために冷ます。
その間に、ケチャップとマヨネーズと調味料でオーロラソースを作る。
食パンにバターを塗り、レタス・トマト・チーズをのせ、バジルオイルをかけてから食パンをのせる。
これでCLTチーズ・レタス・トマトサンドの完成。
次に、バターを塗ってない食パンにオーロラソースを塗ってからオムレツを乗せ、冷ましておいたベーコンをのせる。
食パンにオーロラソースを塗って、オムレツの上にのせる。
ラップを被せて平たい物で重しをしている間に、トレイを用意したり、コーヒーカップを温めておいたりする。
コーヒーが出来上がり、サンドイッチが馴染んだら、2つに切って皿に盛り付ける。
船を買ったときについていたワゴンに乗せてお客のところに持っていく。
「お待たせしました。簡単なサンドイッチで申し訳ありません」
「いやいや。なかなか旨そうじゃないか」
「器用なんですねぇ」
お客の前にサンドイッチとコーヒーと作りおきしておいたクッキーを置くと、ワゴンをキッチンに戻しにいく。
そして、自分用のトレイを手に持ち、
「では私は操縦室にもどりますので、食べ終わったらそのままにしておいてください」
そう声をかけてから操縦室に戻った。
用語解説
貨物輸送業者:個人、もしくは複数で貨物船を所有し、貨物の輸送をする人達のこと。
銀河貨物輸送業者組合:依頼人からの貨物輸送の依頼を、輸送業者に振り分けるのが主な業務。
超空間跳躍:不思議な空間に入り込み、距離を10分の1に短縮する移動方法。
宇宙港:惑星の衛星軌道上に設置されている、宇宙船用の港湾コロニー。
ノリで書いたものなので、色々おかしいかもしれません
ご意見ご感想お願いいたします。
ほんのり修正しました