「六月大歌舞伎」の記者会見が昨日1月22日に東京都内で行われ、中村時蔵、
既報の通り、本公演をもって時蔵が初代中村萬壽、時蔵の長男・梅枝が六代目中村時蔵を襲名、さらに梅枝の長男・大晴が五代目中村梅枝、獅童の長男・小川陽喜が初代
会見の冒頭では時蔵、獅童、梅枝、大晴、そして松竹の迫本淳一会長、山根成之副社長が登壇。時蔵は、自身と梅枝の襲名、そして大晴の初舞台の経緯を「2020年以前から孫の初舞台を考えておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期になりまして。その間に私もちょっと年を取りましたので(笑)、このタイミングで梅枝に時蔵を譲り、大晴には、私や梅枝、私の父(四世時蔵)と同様に、“梅枝”の名前で初舞台を勤めてもらおうと決意いたしました。しかし、そうすると必然的に私が継げる名前がなくなってしまいましたので(笑)、萬屋の“萬”という字が入った、萬壽(まんじゅ)という名前を新たに考えました」と話す。
さらに時蔵は、萬壽という名前が、1000年前の西暦1024年から始まった、平安時代の元号・万寿(まんじゅ)にちなみ考案したことを明かす。万寿が、60年に一巡する十干十二支において、1024年が干支の組み合わせの1番目にあたる甲子の年だったことから改元されたことを説明し「私の家は、十干十二支に対して深い思いがございます。私は1955年生まれ、孫の大晴は2015年生まれで、60歳違いの同じ干支の乙未。私の祖父、三世時蔵は1895年生まれで、孫の私と60歳違い。さらに私の父・四世時蔵は1927年生まれで、その孫である梅枝は1987年生まれで60歳違い……と、うちではなぜか、60歳のときにできた孫が、時蔵を継いでいるんです。ですので、十干十二支に関係のある“萬壽”という名前に絶対にしよう、と決めました」とその因縁を語る。
梅枝は、時蔵から襲名の話を2021年にされたことを明かし、「話を切り出されたときは、『え? 隠居するんですか?』と言いました(笑)」と率直に述べ、会場の笑いを誘う。「祖父(4世時蔵)が早くに亡くなったことから、“時蔵”は私にとって父しかおりません。そもそも、父が亡くなるまで私は梅枝で居続けると思っておりましたし、父が時蔵ではない名前になるというのも、すごく嫌でした。なので、最初は『さすがに無理です、僕にはまだ早いです』とお断りしました」と当時の心中を吐露。しかし時蔵の思いを聞き、また獅童に相談するうちに、徐々に襲名する決心が固まったことを話し、「いざこの段になってみると、こうやって三代そろって襲名興行をさせていただけることは、とてもありがたいことだと感じています」と、時蔵へ感謝を伝えた。「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿」では、梅枝は時蔵からお三輪を教わる。「父の芸を観ていて思うのは、“江戸の匂い”がするということ。その目には見えない“匂い”というものは、歌舞伎という芸能にとってはとても大事なものだと思っております。その匂いを受け継げるかどうかはわかりませんが、目標に掲げ、一生かけて追い求めていきたい」と言葉に力を込めた。
時蔵は、梅枝を「日頃から彼の舞台を観ていますが、すごく良くなってきている」と評価し、「高齢化社会で私が長生きしたせいで(笑)、彼に(時蔵の名前を)譲るのが遅くなってしまいましたが、私もまだまだ引退する気はありませんし、隠居する気もありません。バリバリ現役で初役もこなしながら、後進の指導もしっかり務めていきたい」と笑顔を見せた。
獅童は、陽喜と夏幹の初舞台について「僕は、時蔵兄さんと違いまして、自分が生きているうちは獅童の名前は絶対に譲りたくなくて(笑)。さきほど時蔵兄さんもおっしゃっていましたが、そうなると萬屋には継げる名前がほかにないので、いろいろと新しい名前も考えたんですけど、最終的に、芸名の中村姓と、本名の名前を組み合わせた、初代中村陽喜、初代中村夏幹としてやらせていただくことになりました」と語る。また「新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎」では、魚屋宗五郎の役は尾上菊五郎から教わる。寺島しのぶと菊五郎の元にあいさつに行った際、菊五郎直々に「教える」と言われたことを明かし、「僕は『いやいやいや』と謙遜していたんですけど、その次の日にしのぶちゃんが、山根さんに『お父さんが獅童くんに魚屋宗五郎を教えるって言ってます』って電話してくれたんです(笑)」と寺島の活躍に触れる。「今月、浅草で(尾上)松也くんが魚屋宗五郎を、菊五郎のお兄さんから教わって演じていますが、その稽古初日も見せていただきました。そのときに改めて(菊五郎に)お会いしましたが、お元気そうで良かったです。一生懸命、たくさんのことを教えていただいて、吸収したい」と意気込みを語った。
大晴は、初舞台に向けた気持ちを記者から問われると、マイクを手にしたまま恥ずかしそうに静止。やがて父・梅枝に優しく促されると、「がんばります」と一言述べた。時蔵は「大晴は女方が嫌で、立役がしたいんです(笑)。女方も面白いぞ、とどこかで導いてやりたいなと思いつつ、自分の好きなようにやらせてやりたいなと」と微笑み、自身が大晴と共に出演する「山姥」について「(大晴が演じる)怪童丸は、赤っ面のお役ですが、大晴はかわいくやってくれるんじゃないかな」と期待を寄せた。立役が好きな理由を「立廻りが好き」と話す大晴に向けて、時蔵は「女方も、たまにはやろうね?(笑)」と呼びかけると、大晴は照れくさそうな表情を浮かべた。
記者会見後半の囲み取材から、陽喜と夏幹が参加。囲み取材前のフォトセッションでは、大晴、陽喜、夏幹の3人が、笑顔を求められぎこちなく笑う姿に、時蔵、獅童、梅枝が思わず笑ってしまう様子や、司会がカメラマンに向けて発した「登壇者の視線が欲しい方は、挙手してください」という言葉に、夏幹が思わず手を挙げてしまう一幕など、終始和やかなムードで行われた。囲み取材で報道陣から「お父さんのカッコいいところは」と尋ねられると、子供たちは途端にもじもじ。困り顔の大晴に、時蔵は「じゃあ、じいじのカッコいいところは!?」と冗談交じりに迫り、梅枝に笑いながらツッコミを入れられた。最終的に、大晴は「立廻りしているところが好きです」、陽喜は「超歌舞伎『積思花顔競』をやっていたとき」、夏幹は「たたかうところ!」とそれぞれ父の魅力に触れた。
また「将来どんな歌舞伎俳優になりたいですか」という質問には、陽喜は見得を切りながら「宇宙で歌舞伎をする!」と答え、その胆力で周囲の大人たちを驚かせる。また大晴は「プロ野球選手になりたい」と回答し、その答えに梅枝は「身もふたもないことを言うなあ(笑)」と思わず破顔。時蔵も「(歌舞伎と野球の)二刀流でね(笑)」と笑い、「ご覧の通り、子供たちは親の言うことを聞きませんが(笑)、これが不思議と、舞台に立つとちゃんとするんですね。ですので、安心しています」と子供たちに優しげな眼差しを向けた。
「六月大歌舞伎」
2024年6月
東京都 歌舞伎座
昼の部
「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿」
出演
お三輪:中村梅枝改め六代目中村時蔵
夜の部
「山姥」
出演
山姥:中村時蔵改め初代中村萬壽
怪童丸:五代目中村梅枝
「新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎」
出演
魚屋宗五郎:
丁稚:初代
丁稚:初代
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