次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味？」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
13番目に登場するのは、舞台作家の小野彩加と中澤陽による団体、スペースノットブランク。創作の根幹を見つめる揺るぎない目線と、クリエーションにおける柔軟かつ真摯な取り組みが高い評価を得る彼らは、近年、多数のコンペティションで注目を集めている。そんな彼らの、コミュニケーションと“可能性”を大切にする創作姿勢は、今回回答してくれた一言一句にも現れている。
小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク
Q. 団体名の由来、団体名に込めた思いを教えてください。
“スペースノットブランク”とは何か、という意味は定めておらず、例えば小野彩加の“彩加”であれば“彩りを加える”というように異なる言葉の組み合わせによってできているというのと似ていて、“スペース”“ノット”“ブランク”というそれぞれすでに意味を成している言葉を組み合わせることで、それを見た皆さまに何かしらの新しい意味を感じ取ってもらえるのではないかと考え、そうしました。中澤陽の“陽”であれば“太陽”という意味と6月生まれなので“紫陽花”という意味が重なっているというのとも似ています。よく「スペースノットブランクってどういう意味？」と聞かれることがありますが、「そのままの意味です」と答えることが多いです。そこに私たちの名前を加えて“
Q. 団体の一番の特徴は？
自覚的に行なっていることは、“舞台芸術を用いて何をするのか”を探究しながら、上演と上演の前後の時間を含めて作品を組み立てようとしていること、だと思います。例えば舞台芸術に対して多くの人が“複数の人間が携わってできあがるもの”という認識があるかと思いますが、そういった一般的に当たり前のように想像できる部分こそが、私たちにとって何より探究すべき重要な部分であると考えています。それらを突き詰めることによって、私たちの上演の特徴として、そこに現れる人間の“本人性”などが浮き彫りになってくる、ということが起きているのではないかと思います。複数の人間が携われば、そこには複数の思考が存在していて、そこに必然的に生じる齟齬ですら私たちにとっては重要な上演の要素のひとつになります。あらゆることを受容しながら、携わっていただく複数の皆様と、とにかくたくさんのコミュニケーションを取り、私たちとそこに存在する人間たちの協働によってより良い創造環境を作っていくことが、一番の特徴だと自信を持って言えるようになるべく、これからも日々邁進します。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
2023年は直近で6月から7月にかけて新作「セイ」を神奈川県で上演します。その後も関東や関西などで活動が継続するので、何より健康に気を遣いながら、丁寧な創作を続けていきたいと思います。観客の皆様には、もしもどこかで私たちの上演と出会うことがあれば、舞台芸術に興味があってもなくても、覗いてみていただけるとうれしいです。私たちの上演が、観客の皆様自身が出会う新しい自己の価値との出会いになることを目指して、引き続き頑張ります。
プロフィール
二人組の舞台作家である小野彩加と中澤陽が、2012年に設立した舞台芸術の創作を行うコレクティブ。「第8回せんがわ劇場演劇コンクール」グランプリ、「利賀演劇人コンクール2019」優秀演出家賞二席、「ヨコハマダンスコレクション2022 コンペティションI」城崎国際アートセンター賞、若手振付家のための在日フランス大使館・ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル賞を受賞。
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【連載】由来を教えて！劇団名50
その13 小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク
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