でんぱ組.inc|エンディング幕張2DAYS生中継!異端のアイドル史を過去レポでおさらい

でんぱ組.incが1月4、5日に千葉・幕張イベントホールで行うワンマンライブ「でんぱ組.inc THE ENDING『宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!』」をもっておよそ16年におよんだ活動のエンディングを迎える。TELASAおよびCSテレ朝チャンネル1では、この2日間の模様が生中継されることが決定。来るべきエンディングに備え、この特集では過去に音楽ナタリーに掲載されたでんぱ組.incのライブレポートからいくつかを抜粋し、その歴史をおさらいする。

文 / 臼杵成晃

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「ワールドワイド☆でんぱツアー2014 in 日本武道館 ~夢で終わらんよっ!~」(2014年5月6日 東京・日本武道館)

「萌えキュンソングを世界にお届け」をキャッチフレーズに、東京・秋葉原のジャンクなオタクカルチャーをアイドルというフォーマットで表現する存在として誕生したでんぱ組.inc。群雄割拠のアイドルシーンにおいて異端の存在だった彼女たちは、圧倒的な個性を武器に国内外で支持者を集め、やがて多くのフォロワーを生む存在となった。

メンバー自身が各ジャンルのディープなオタクであり、その始まりは“アイドル”という言葉から連想されるキラキラとした華やかなものでは決してない。「マイナスからのスタート 舐めんな!」──2013年にリリースされたシングル「W.W.D」は、もがきながらアイドル街道をひた走るメンバーのパーソナルを反映した“下剋上”ソング。この楽曲がアイドル界にもたらした衝撃は大きく、「W.W.D」をきっかけにでんぱ沼にハマった人も多いだろう。でんぱ組.incはその勢いのまま、2014年5月6日、東京・日本武道館のステージに立つ。日本の音楽業界におけるスターダム、一流の証とも言える武道館にまで上り詰めた彼女たちだが、その広い広いステージの上には、でんぱ組.incの始まりの場所である秋葉原ディアステージをそのまま再現した狭い狭いステージが設置されていた。自らのアイデンティティごと武道館に持ち込む離れ業。BOØWY時代の氷室京介が残した名ゼリフ「ライブハウス武道館へようこそ」はロック名言として語り継がれているが、結成時から現在まで在籍する唯一のオリジナルメンバー・古川未鈴は「Dear☆Stage武道館店へようこそー!」と叫んだ。ラストナンバー「サクラあっぱれーしょん」で、紙吹雪が舞うステージをメンバーがくるくる回りながら去っていった光景が忘れられない。

「愛をでんぱに」(2012年9月16日 東京・LIQUIDROOM)

時系列は前後するが、でんぱ組.incはこの2012年9月のLIQUIDROOM公演で「メンバーで話し合って目標を立てました。この6人で武道館でライブがしたいです」と宣言し、1年7カ月でそれを実現している。LIQUIDROOMという会場でのワンマンライブもアイドルにとってはひとつの登竜門、大きな壁であり、でんぱ組.incもこの時点では「ついにLIQUIDROOMにたどり着いた」と言える状況だった。ここで言う「6人」とは古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、最上もが、藤咲彩音のこと。このLIQUIDROOM公演が、最上と藤咲の加入で6人体制になって初のワンマンライブだった。なお「W.W.D」はこの日のステージで初披露されている。

「でんぱ組.inc WORLD TOUR 2015 in FUJIYAMA」(2015年9月27日 山梨・河口湖ステラシアター)

河口湖ステラシアターは屋根付きながらオープンエアーで開放的な会場。すり鉢状の客席からステージを見下ろすような作りとなっており、サイリウムで染まった光景は圧巻だ。きっとステージに立つ演者にとっても特別な景色だろう。ヲタ芸に欠かせないアイテム・ウルトラオレンジを一斉に光らせることが恒例となっている「ORANGE RIUM」が歌われる場面はどの会場で観てもグッとくるが、お祭り気分でひたすら楽しかったこの日の「ORANGE RIUM」は格別だった。ステラシアターのステージ背面は開閉式となっており、条件がよければ背後に富士山が見える。夜の公演であればクライマックスで背後に花火を打ち上げるのもこの会場の醍醐味。でんぱ組.incは富士山をかたどったナイアガラ花火をバックに「でんぱれーどJAPAN」を歌った。なお、でんぱ組.incは2018年の七夕にも河口湖ステラシアターでライブを行っている(参照:でんぱ組.inc、平成最後の七夕は富士山の麓でプレシャスな夏祭り)。現体制でのステラシアター公演も観たかった……。

「でんぱの神神 DVD 神 BOX ビリナイン」発売記念イベント(2017年10月15日 東京・山野ホール)

これはライブレポートではないが、「でんぱ組.incの現場レポ」として外せない“番外編”を。でんぱ組.incのレギュラー番組「でんぱの神神」はDVDボックスが発売されるたびにイベントが開かれるのが恒例で、音楽ナタリーはたびたびその模様を伝えてきた。当選者のみが参加できるシークレットイベントは毎回カオスの様相を呈しており、メンバーはクイズやゲームに大わらわ。毎回起こるミラクルの数々を記録する謎の使命に駆られていたあの日々が(でんぱ組.incのことを思い返すとき、もしかしたら一番)愛おしい。

「ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!」(2017年12月30日 大阪・大阪城ホール)

2017年の暮れ、大阪。この日のライブで根本凪と鹿目凛の2名が新メンバーとして加入することが電撃的に発表され、ホール(と言ってもアリーナ会場)は大きくどよめいた。この年の8月に最上もがの脱退が発表され、以降でんぱ組.incは古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、藤咲彩音の5人で活動していた。根本は虹のコンキスタドール、鹿目はベボガ!とそれぞれ別のグループで活動していたため、兼任という形ででんぱ組.incに合流。物語仕立ての楽曲「Dear☆Stageへようこそ♡」のエキストラとして2人がひっそり登場し、ライブ終盤からパフォーマンスに参加して「でんでんぱっしょん」「Future Diver」などを7人体制で披露した。あの日の場内のはち切れんばかりのどよめきは、これまでに足を運んだでんぱ組.incライブの中でも忘れられない“音像”の1つだ。

「夢眠祭 ~夢眠ねむ 芸能活動10周年感謝記念~」(2018年11月22日 東京・新木場STUDIO COAST)

でんぱ組.incがいわゆるアイドルファン、アイドルオタク以外の層にまで広く愛されたのは、さまざまなカルチャーと接続するハブとしての夢眠ねむの役割が大きかったように思う。美大出身で、アイドルという存在そのものを自らの身体を使って美術として昇華するかのようなその姿勢は、私を含む多くのアイドル門外漢の目に留まった。卒業ライブを前に行われた「夢眠祭」は前夜祭を含めてカオス極まる内容で、1990年代渋谷系から2000~10年代のオタク文化へとつながる「街を舞台に地熱が広がるアンダーグラウンドなカルチャー」を凝縮したようなステージだった。2020年代のアイドルは「緑」ではなく「ミントグリーン」を選びがちだが、夢眠こそがミントグリーンアイドルの祖と言え、こっちのほうがポップでキャッチーだと10年以上前に提示していた先見の明はすごい。

成瀬瑛美卒業公演「ウルトラ☆マキシマム☆ポジティブ☆ストーリー!! ~バビュッといくよ未来にね☆~」(2021年2月16日 東京・豊洲PIT)

メンバーの卒業と加入を繰り返し進んできたでんぱ組.inc。アイドルの活動を追っていれば卒業の場面に立ち会うことは避けて通れない。卒業公演はどうしても湿っぽくなりがちだが、でんぱ組.incはもちろん、アイドルシーン全体を明るく照らす太陽のような存在だった成瀬瑛美の卒業公演は、思わず「さすが!」と唸るほどにお見事、天晴れなライブだった。終始笑顔(ときに爆笑)にあふれるステージで、アンコールではなんと新メンバー5人が一挙に加入。6人体制から1人が離れ寂しくなるところ、天沢璃人、小鳩りあ、高咲陽菜、愛川こずえ(2022年12月に卒業)、空野青空(2024年1月卒業)を加えて一気に10人の大所帯となったでんぱ組.incは、この人数ならではの華やかなミュージカル調の新曲「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」を初披露し、グループとしての新たな姿勢をも提示してみせた。この日のライブは会場に足を運べず生配信で観たのだが、巨大なプレゼントボックスから5人の新メンバーが現れたときは「うわー!」と思わず声に出して驚いた。実際に声に出して「うわー!」と言うことなんてほとんどないので、「うわー!」と言ってしまったことに驚いたことを覚えている。

「UHHA! YAAA!! TOUR!!! 2019 SPECIAL」(2019年9月18日 東京・Zepp DiverCity(TOKYO))

衝撃という点ではでんぱ組.inc史上最大、いや、アイドルシーン最大の衝撃だったと言えるかもしれない、古川未鈴の結婚発表。アンコール、古川が1人でステージに出てきた段階でフロアはものものしい雰囲気に。「大きな決断をしました」と話す彼女の震える声に、おそらくほとんどの観客が「卒業」の2文字を瞬時に頭に浮かべたであろう。しかし古川が発したのは「結婚」の2文字! 驚きの声がじわりと波打つように祝福の声へと変わっていく、珍しい光景が広がった。現役で活動するグループアイドルの結婚と言えば、古川よりも約半年早くNegiccoのNao☆が報告(参照:NegiccoのNao☆と空想委員会の岡田典之が入籍)。Negiccoはその後メンバー3人全員が結婚、出産を経験し、子育てをしながらアイドル活動21年目に突入している。古川も2021年7月に第1子出産を報告し、子育てとアイドル活動を両立しながらエンディングへと向かっている。

「蒼い彗星、宇宙を駆ける ~空野青空卒業公演~」(2024年1月10日 神奈川・CLUB CITTA')

でんぱ組.incと言うと、全国にその名が広まった際の6人(古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、最上もが、藤咲彩音)の印象が強く、10人の大所帯化から現在までの編成に馴染みがない、実は現体制のステージを観たことがない……という人も多いかもしれない。そんな人にこそ、このエンディングまでの流れはぜひ目に焼き付けてほしい。6人の「マイナスからのスタート 舐めんな!」な下剋上ヒストリーと現体制はファイトスタイルが違う。オリジナルメンバーと新規メンバーが混然一体となり、これまで積み上げてきたでんぱ印のオリジナリティを継承しながら、雨後の筍のごとく続々現れるフォロワー(悪く言えばパクリ)を「我らが元祖だ」となぎ倒し黙らせるような痛快さ。「でんぱぁかしっくれこーど」「古代アキバ伝説」「商売繁盛!元祖電波屋!」といった楽曲からにじみ出る「上っ面だけパクってもここまで来れないだろ」とでも言うような暴走ぶりを、もともとでんぱ組.incに憧れる立場だった新メンバーが屋号を守らんと必死で表現していることに壮大なドラマを感じる。ある種のシリアスさは薄まり、痛快に飛ばし始めたのは、空野青空が持つご陽気なムードも大きかったように思う。カラッと明るい空野の卒業公演を経てまた陰キャグループに戻るのでは?と勝手な心配をしていたが杞憂だった。7人になったでんぱ組.incはエンディングに向けてケラケラ笑いながら爆走している。

「TOKYO IDOL FESTIVAL 2024」(2024年8月2日 東京・お台場周辺エリア)

「@JAM EXPO 2024 supported by UP-T」(2024年9月16日 神奈川・横浜アリーナ)

「TOKYO IDOL FESTIVAL」や「@JAM EXPO」といった国内の大型アイドルイベントには毎回出演する“アイドルの顔”となっていたでんぱ組.inc。この夏は両イベントでトリを務めて有終の美を飾った。初開催の2010年から出演し続けていた「TIF」では初日メインステージのトリを、「@JAM EXPO」では3日間を締めくくる大トリを担当。多くのアイドルファン、そしてでんぱ組.incに憧れを抱いてきた後輩のアイドルたちに見守られながら、特別なステージで、ある意味いつも通りのパフォーマンスを繰り広げた。アイドルシーンにおける彼女たちの矜持は、「@JAM EXPO」で古川未鈴が放った「私たち、でんぱ組.incの生き様を見ていってください」というひと言に集約されていたように思う。

でんぱ組.incエンディングツアー「宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!」(2024年10月8日 東京・豊洲PIT)

2024年10月、ついに幕を開けたでんぱ組.incのエンディングツアー。その初日には、ヒャダインこと前山田健一、かせきさいだぁ、清竜人、H ZETT M、Wienners、諭吉佳作/men、Neko Hackerという歴代のでんぱ楽曲を作り上げてきたアーティストたちが入れ替わり立ち替わりゲストで登場。物語の終わりに踏み出したライブとは思えない祝祭感に満ちたステージとなった。もちろんメンバーには感傷的な思いもあるだろうし、終わりを控えてナーバスな気持ちになることもあるだろう。この期に及んで「やっぱ辞めるの止めません?」と説き伏せたい人も多いだろう(この日のゲスト・清竜人は当日のステージでも「あとはお前らの力で、でんぱ組.incを存続させてくれ!」と叫び、自身のグループ・清 竜人25のライブでも「今年やり残したことは、でんぱ組.incの解散を阻止できなかったこと」と発言している)。しかし「宇宙を救う」可能性がある現存の地球人アイドルグループはきっと、でんぱ組.incだけ。残すは幕張2DAYS。最後の最後に、最後だからこそ起こりうる最高のミラクルに期待したい。

公演情報

でんぱ組.inc THE ENDING「宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!」

  • 2025年1月4日(土)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール
  • 2025年1月5日(日)千葉県 幕張メッセ 幕張イベントホール

放送情報

TELASA / CSテレ朝チャンネル1「でんぱ組.inc THE ENDING『宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!』」

「でんぱ組.inc THE ENDING 『宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!』」

「でんぱ組.inc THE ENDING 『宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!』」

DAY1
TELASA:2025年1月4日(土)18:00~

TELASA配信ページはこちら

DAY2
CSテレ朝チャンネル1:2025年1月5日(日)16:00~

TELASAでは、でんぱ組.inc出演作品を配信!
「でんぱ組.inc ライブ コスモツアー2019 in 日本武道館 ワレワレハデンパグミインクダ~宇宙からの帰還~」

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「白魔女学園」

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「劇場版 白魔女学園 オワリトハジマリ」

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「DIAMOND FES 2022 GIRLS EDITION」

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プロフィール

でんぱ組.inc(デンパグミインク)

古川未鈴、相沢梨紗、藤咲彩音、鹿目凛、天沢璃人、小鳩りあ、高咲陽菜からなる女性アイドルグループ。メンバーはそれぞれアニメ、マンガ、ゲームなどに精通したオタクとしても知られ、“萌えキュンソング”と呼ばれるアッパーな楽曲と情感豊かなライブパフォーマンスで国内のみならず海外からも話題を集める。2011年にシングル「Future Diver」でメジャーデビュー。2014年5月に初の東京・日本武道館公演を行い、2016年12月にはベストアルバム「WWDBEST ~電波良好!~」を発売した。その後もコンスタントに作品を発表しており、2022年12月にミニアルバム「でんぱぁかしっくれこーど」を、2023年6月にはEP「ONE NATION UNDER THE DEMPA」を発表した。2024年12月にラストソング「W.W.D ENDING」を配信リリースし、2025年1月の千葉・幕張メッセ 幕張イベントホール公演「でんぱ組.inc THE ENDING 『宇宙を救うのはきっと、でんぱ組.inc!』」をもって活動に終止符を打つ。

※記事初出時、卒業年の表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

2025年1月6日更新