大橋トリオがデビュー15周年を記念した2枚組ベストアルバム「ohashiTrio best Too」をリリースした。
「ohashiTrio best Too」は、2014年3月に発売された自身初のベストアルバム「大橋トリオ」の収録曲との重複を極力避け、近年の楽曲を中心とした全30曲入り。「ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」のテーマ曲「Lamp」やJ-WAVE冬のキャンペーンソング「GIFT」、2月18日に公開される劇場アニメ「フルーツバスケット -prelude-」の主題歌「虹とカイト」、そして本作が初出となる「angle」などが収められる。
「ohashiTrio best Too」の発売を記念して、音楽ナタリーでは大橋にインタビュー。選曲に込めた思いや、15周年を迎える心境などを語ってもらった。
取材・文 / 高岡洋詞撮影 / 須田卓馬ヘアメイク / Keita.、Ena Honjo
満足感の高い曲を多めに
──「ohashiTrio best Too」には最近の曲が多めに選ばれていますね。
前作(「大橋トリオ」)は「スタンダードベスト」「スタンダード&バラードベスト」、カバー曲入りの「デラックスベスト」の3形態で出したんですよ。当時のベストには入れたい曲をほぼほぼ収めたので、それより前の作品からは今回あんまり選ぶものがなくて。かぶったのは「Happy Trail」と「HONEY」の2曲だけですね。あと昔の曲で「なんでこれ入れてなかったんだろう?」っていうものもあったので、それは入れました。
──「CLAMCHOWDER」とか「EMERALD」とか?
はい。「はだかの王様」とか「真夜中のメリーゴーランド feat. 手嶌葵」もそうですね。各アルバムからバランスよく選ぶことを意識したのと、あとは初めて大橋トリオを聴くであろう人に向けて「HONEY」あたりは入れとかないとなと。「Happy Trail」は大橋トリオのスタイルを決定づけた曲なので、これは聴いていただきたいです。
──資料に「今聴いてもらいたい楽曲を本人が監修した」とありますからね。
15年やってきた中で、自分の音楽とはどういうものなのかを考えたときに、音楽的に満足感の高い曲というのがチラホラあるんですよ。それを多めにぶち込んでみたという。「もうちょい聴いてほしいな」と思って選んだ曲が多いですね。
──個人的に好きな曲が多く入っていてうれしいです。中でも「ミルクとシュガー duet with 上白石萌音」は去年聴いた曲の中で一番好きかもしれない。
おっ、きた! それは本当にうれしいです。だって……個人的にもやったりましたもん。本当にいい出来になったなと思ってます。まあ(上白石)萌音ちゃんのおかげもあるけど、当時の僕には「デュエットさせてもらうからには!」という気合いみたいなものが相当あったんでしょうね。矢野(顕子)さんのとき(2012年9月発売のアルバム「White」収録曲「窓 feat. 矢野顕子」)ぐらいの使命感といいますか(笑)。
Kitriはアートへの造詣が深そう
──どの曲も魅力的です。最近の曲で言うと、まず昨年10月にシングルとして配信された「Lamp」ですが、Kitriの2人が作詞していますね。
「ゴッホ展」のテーマソングなので(参照:大橋トリオ、明日より東京都美術館で開催の「ゴッホ展」にテーマ曲提供)、Kitriならアートに造詣が深そうで、ヨーロッパの絵画の雰囲気に合う歌詞を絶対に書けるだろうなと思って依頼しました。すごく控えめでめちゃくちゃいい子たちですけど、秘めたるものが絶対にある気がするんです。具体的にはわからないけど、なんか感じるんですよ、歌詞の中に。そんな内なるものを出してもらえたら、素敵な曲になるんじゃないかなと思った次第ですね。おかげで僕にとってもお気に入りの曲になりました。
──ちょっとクラシカルな風味のある曲ですね。
全然関係ないはずなんですけど、ゴッホってなぜかバッハとリンクするものがあって、僕にとってはちょっと似たイメージなんですよ。あんまりクラシカルすぎない、華々しすぎないところが共通しているというか。
──バッハの音楽ってちょっとポップな響きがありますものね。
そうそう。そこでつながった感じでした。
──Bメロに入ってくるアナログシンセがとても印象的です。
これには元ネタがあって。スティーヴン・ビショップの「One More Night」という、めちゃくちゃ好きな曲があるんですよ。曲調は全然違うけど、最後に温かみのあるシンセが入ってくるんです。アレンジをいろいろ試してたときに思い出してやってみたら、ドンピシャでハマりました。
ファンが求める大橋トリオらしさ
──昨年12月に配信された「GIFT」はストリングスが最初から最後まで鳴っていて、本数少なめで硬い音色が70年代のフィリーソウルっぽいなと思いました。
ダブルカルテットだから8本ですね。ダブカルに最近ハマってて。鳴った瞬間にドーンという衝撃がくるから楽しいんですよ。ストリングスアレンジはサックス奏者の武嶋聡さんにいつもお願いしてるんですけど、今回は場面が変わる間奏のところだけメロディを指定して、ほかのパートはめちゃくちゃラフに弾いたデモだけ渡してディテールは遊んでもらいました。「最近Silk Sonicをめっちゃ聴いてるから、そっちの方向にしちゃいました」と言ってましたね。
──フィリー感はSilk Sonic経由か。ドラムがいいですね。
これは僕です。がんばりました。最近、ドラムを家で録るのが楽しくて。スタジオだといっぱいマイクを立てて録るけど、「そこまでする必要ある?」と思ったんです。いろいろ情報を集めて試行錯誤して、極力少ないマイクの本数でいいバランスで録るのに凝ってるんですよ。「ミルクとシュガー」のときもめちゃめちゃこだわりました。
──あのドラムも最高でした。この曲はJ-WAVEの冬のキャンペーンソングですよね。
オファーをいただいた頃は、コロナの状況が一旦落ち着いて、世間的に「もうすぐ収束して日常が戻ってくるんじゃないか?」という雰囲気だったんですよ。今またぶり返してきちゃいましたけど。「PASS THE LOVE」というキャンペーン名だったので、絶対にメロウな曲を求められてると思ったら、天の邪鬼精神が爆発しちゃって(笑)。僕、スキーが好きで、行く道中に周囲が少しずつ雪景色に変わっていくのを眺めるとめちゃくちゃ気分が上がるんです。そのときにユーミン(松任谷由実)のアゲアゲの曲を聴きたいんですよ(笑)。だから自分もそんな曲を作りたいと思ってて、やるならここしかないなと。アクティブな冬のイメージになるかなと思って、動きの多いストリングスを入れたというのもありますね。
──「虹とカイト」もストリングスが効いたバラードです。
劇場アニメ「フルーツバスケット -prelude-」の主題歌ですね。これは難しかったんですよ。アニメ側から特に曲調の指定がなかったんです。
──完全にお任せ?
そうです。とはいえ求めているものは絶対に何かあると思って、ディレクターに探ってもらったんですけど、「いや、もうお任せで!」みたいな返答しか来ない(笑)。映画のエンドロールで流れること、ファンが求める大橋トリオらしい曲、というところからフォーカスしていって、「大橋トリオらしさってなんだろう……なんでもいいとは言いつつ、アップテンポだと違うだろうし」と考えて、すごくがんばって作りました。
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