2016年9月発表のシングル「Imagine day, Imagine life!」以降、畑亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)からなるクリエイター集団・Q-MHzとタッグを組んで音楽活動を行っている小松未可子。7月11日には、Q-MHzとのタッグでは2枚目となるフルアルバム「Personal Terminal」をリリースする。およそ2年におよぶ濃密なコラボレーションを経て、より強い絆を結んだ小松とQ-MHz。今回のインタビューにはQ-MHzのメンバー4人も参加し、アルバム制作の過程を仔細に明かしてもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 曽我美芽
「Blooming Maps」からつながる道
──ものすごくざっくりした感想ですけど、いいアルバムですね。前作「Blooming Maps」(参照:小松未可子「Blooming Maps」インタビュー)から確実にステップアップしたクオリティとチームワークを感じました。
畑亜貴 いやあ、いいですよね。臆面もなくそう言っちゃう(笑)。
田淵智也 前のアルバムよりも統一感が出たなと思います。制作中、最後の3曲ぐらいになったとき、畑さんが上げてきた歌詞のテーマを羅列したリストを出して「あ、すごくバランスがよさそう」とポロッと言った瞬間があったんです。サウンド的なバリエーションも含めて「いいアルバム」の条件がそろっているなと感じました。バリエーションは広いけれど、とっ散らかっているわけではなく、小松未可子という人に向けての軸が1本ちゃんと備わっている……という感覚は制作中からあって。前作よりも洗練されたアルバム制作だったなと思います。
畑 ずっと一緒に走り続けてきて、ここでポーンとうまくいろんな歌に飛べたかなという感じがあります。
小松未可子 楽曲はもちろん素晴らしいんですが、その分、自分という楽器は最高かな?と思うと少し不安はあります(笑)。レコーディングで1曲1曲録っているときにはわからなかったのですが、全曲がそろって曲順通りに聴いたときにアルバムとしての強さを感じました。「Blooming Maps」も完成度が高い作品だった……と自分で言うのは恥ずかしいですが(笑)、そこからまた一歩どころかもっと先に進めたように思います。“地図”で描いた道が、また1つひとつ点を線でつないで新しい道になった、そんなアルバムになったのではないでしょうか。
Q-MHzが見た小松未可子
──Q-MHzの皆さんは、小松さんのボーカリストとしての特徴をどのように捉えていますか? また2年近く一緒に作品を作ってきたことで、その見方に変化はありますか?
黒須克彦 ボーカリストとしては「どんな曲も歌えるな」という印象だったんですけど、それが弱みになってはいけないと思っているんです。そつなくなっちゃったりとか、無個性になっちゃったりしては面白くない。でも彼女の場合は、前作も今回のアルバムもいろんなタイプの曲があるけれど、どの曲もちゃんと小松未可子になるんですよね。「何を歌っても小松未可子になる」という強みに、これからもっと説得力が加わってくるんじゃないかと思います。
畑 とても一緒に仕事がしやすい女性です。素直だし、勘もいいし、気を遣ってくれるし……むしろもっとワガママ言っていいんだよという気持ちもあるんですけれど(笑)、それを言えないところもまた彼女の素敵な性格だなって。歌に関しては不満は一切ないし、この素晴らしい素材をどうにか表現してあげたい、もっとみんなに知ってもらいたいなと思っています。
田淵 僕は無理をしないのが彼女の一番魅力的な姿だと思うんです。プロデュースするうえでまず考えたのは「無理をさせない」ということですね。声優さんという職業は、どうしても演じなければいけない部分があると思うんですけれど、必要ないところは少し間引こうと。無理をさせないほうが、小松さんは輝くのではないかと僕はプロデュースを始めた最初の頃から思っていたんです。そんな中で、1人の女性として歌っていくには、強い女性像をしっかり描いたほうがいいと思い、それを軸に曲作りをしてきたんですけれど、今回のアルバムはその「強い女性」の軸を少しゆるくしたと言うか。小松未可子といういろんな顔を持つ人間が、とにかく自然に見えれば何をやってもいいみたいな。今振り返ればですが、前作ではまだ少し肩肘を張っていたんだなと思います。2年ほど一緒に仕事してきて初めてわかる一面もあったりして、最初は心を開いていなかったというわけじゃないですけれど(笑)、5人がより仲良くなったことが「無理をさせない」にうまく作用した気がしますね。
田代智一 前回のアルバムのときよりも歌唱力が増している気がします。表現力やニュアンスの付け方の違いが随所に見られて。前までは「こういうふうにしてみよう」と指示がないとやらなかったようなことが、自分の解釈で出てくるようになったんじゃないかなと。田淵くんが言う「無理をさせない」というのは、表向きな見え方の話だと思うんですが、制作の中では少しだけ無理を強いているところもあって。本人が持っている能力から少しだけはみ出すことを要求すると、それがのちのち本人の力として身に付いていっているのを感じるんですよ。毎回少し高いハードルを用意すると、彼女はそれを乗り越えながら成長している。より本人に寄り添うという意味でも、今回のアルバムでは面白いことができたかなと思います。
軸になった3曲
──小松さんとQ-MHzのタッグによる2作目のフルアルバムを作るにあたり、全体像をどのように考え、組み立てていったのでしょうか。
田淵 最初に制作の話をしたのが、確か去年の7月だったと思うんですよね……(手書きの制作メモを開きながら)「Blooming Maps」が出た直後から「じゃあ次のアルバムはこうしよう」と話し始めて、まずは3人(田淵、黒須、田代)がそれぞれ1曲ずつ、これが次のアルバムには必要だろうと考える、軸になる曲の骨格を作っていきました。そのあとシングルを作ったりしている中で、だんだんアルバムの全貌が見えてくるので、そこからは逆算の作業に入るんです。「この間作った3曲はこうで、シングルがこうだったから、こういう曲があると流れがよくなるだろうな」とか「この曲とこの曲は流れがよさそうだから、この曲順で考えると次はこういう曲だろう」とか。
──先に全体のテーマを決めてそこに向かっていく、というのではなく。けっこう早い段階からじわじわと進めていたんですね。
田淵 そうですね。僕は何事においても「余裕を持った仕事」が好きで、1年前から進めていると、心穏やかに作れるんですよ(笑)。1カ月後に全部納品しなきゃ、みたいな状態だとクオリティはどうしても落ちるし、普段は歌詞も4人でジャッジしながら作っていってるんですが、焦るとその時間もなくなってしまう。
畑 時間かけてるね、Q-MHzは。
田淵 うん。クオリティを下げないよう1曲1曲を大事に……と考えると、アルバム制作なら1年前から始めるしかないねと。
──ちなみに軸として作った最初の3曲は?
田淵 「Romantic noise」「SPICE MISSION」「Jump Jump Halation!」かな。あと「Happy taleはランチの後で」か。
──どちらかと言うと明るくヌケのよい、サウンド的に華やかな楽曲ですね。
田淵 そうですね、確かに。
畑 シリアスな気分ではなかったかもね。
田代 余裕を持って作ったという部分にも通じるところだと思うんですけれど、全体のバランスまで考えていない最初の時期の曲だからこそ、気分もリラックスして明るい方向に向かってたんじゃないかという気がしますね(笑)。
田淵 うん。その結果、ライブでどこに置いても強く機能してくれる曲になっていますね。あと「Blooming Maps」の「Catch me if you JAZZ」でジャズに味を占めたのも大きかったかも(笑)。その流れでシングルの「Maybe the next waltz」を作ったし、ちょっとおしゃれな曲がやりたい気持ちがあった……と思うけど、どうですかね?
田代 そう思います(笑)。
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「この曲に輪廻転生で出会ったのかもしれない」
- 小松未可子「Personal Terminal」
- 2018年7月11日発売 / TOY'S FACTORY
-
完全生産限定盤
[CD+Blu-ray+フォトブック]
5940円 / TFCC-86641 -
通常盤 [CD]
3240円 / TFCC-86642
- CD収録曲
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- Restart signal
- Jump Jump Halation!
- SPICE MISSION
- Maybe the next waltz
- 海辺で逢いましょう
- カオティック・ラッシュ・ナイト
- Happy taleはランチの後で
- Pains
- M/MASTER
- おねがいフューチャー
- Swing heart direction
- Romantic noise
- 完全生産限定盤Blu-ray収録内容
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小松未可子 TOUR 2017 "Blooming Maps" @ LIQUIDROOM 2017.08.12
- また、はじまりの地図
- Imagine day, Imagine life!
- 流れ星じゃないから
- Catch me if you JAZZ
- HEARTRAIL
- my dress code
- Lonely Battle Mode
Music Video
- Maybe the next waltz
- Swing heart direction
- Restart signal
小松未可子×Q-MHz ドライブ&BBQの旅
小松未可子×Q-MHz「M/MASTER」レコーディングMV
- アルバム「Personal Terminal」リリースツアー 小松未可子TOUR 2018 "Personal Terminal"
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- 2018年9月8日(土) 大阪府 BIGCAT
- 2018年9月16日(日) 東京都 TSUTAYA O-EAST
- 2018年9月24日(月・振休) 宮城県 darwin
- 2018年9月29日(土) 愛知県 ElectricLadyLand
- 2018年9月30日(日) 静岡県 Live House浜松窓枠
- 小松未可子「Personal Terminal」リリースイベント
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- 2018年7月15日(日) 東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース START 15:00
- 2018年7月22日(日) 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 7Fイベントスペース START 12:00
- 2018年7月22日(日) 愛知県 ナディアパーク アトリウム START 17:00
- 2018年8月5日(日) 東京都 アニメイト新宿 イベントスペース 1回目START 14:00 2回目START 17:00
- 小松未可子(コマツミカコ)
- 1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義によるアーティストデビューを果たす。2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。2016年9月よりTOY'S FACTORYに所属し、同月Q-MHzプロデュースによるシングル「Imagine day, Imagine life!」を発表。2017年5月には引き続きQ-MHzの全面プロデュースで通算3枚目のオリジナルアルバム「Blooming Maps」を発表した。同年8月にはテレビアニメ「ボールルームへようこそ」エンディングテーマの「Maybe the next waltz」、11月には同アニメの2クール目エンディングテーマ「Swing heart direction」をそれぞれシングルでリリース。2018年7月にはQ-MHzとのタッグで2作目となるニューアルバム「Personal Terminal」を発表し、9月に5都市を回るライブツアー「小松未可子TOUR 2018 "Personal Terminal"」を行う。
- Q-MHz(キューメガヘルツ)
- 畑亜貴、田代智一、黒須克彦、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)からなるプロデュースチーム。J-POP、アニメソング、アイドルソング、ゲーム音楽など幅広い分野で活躍していたクリエイター4人が集結し、2015年12月に活動を開始した。2016年1月には名刺代わりとなるオリジナルアルバム「Q-MHz」を発表。その後は小松未可子の全面プロデュースのほか、2016年夏に開催されたアニメソングイベント「Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-」のテーマソング制作、May'n、田所あずさ、ささきいさお、バンドじゃないもん!らさまざまなアーティストの作品で手腕を発揮している。