原因は自分にある。「テトラヘドロン」インタビュー|確かに深まる世界観と絆 “進化の2025年”へ向かう7人の現在地

原因は自分にある。が、コンセプトEP「テトラヘドロン」を12月4日にリリースした。

今年3月リリースの「仮定法のあなたへ」に続く2作目のコンセプトEPとなる今作には、“四面体”をモチーフに「支配」「反骨」「愛惜」「野望」とテーマのまったく異なる4曲が収録されている。

EPのリリースを記念し、音楽ナタリーではメンバーにインタビュー。それぞれの楽曲の制作背景やミュージックビデオについて深掘りした。加えて、11月に終えたばかりのアリーナワンマンライブ「白昼夢への招待」や、2025年に“新たな一歩”を踏み出すグループの現状についても7人に聞いた。力強く勢いを増しながら、独自の世界観と7人の絆を深めていくげんじぶの今に注目を。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 須田卓馬

絶対歌えないと思いました

──「テトラヘドロン」は、「仮定法のあなたへ」に続く2作目のコンセプトEPですね。今回はどんな作品になりましたか?

大倉空人 今作は“四面体”をモチーフにしています。4曲それぞれに「支配」「反骨」「愛惜」「野望」というテーマがあって、そのすべてが“A面”。なので、ミュージックビデオも全曲分制作されるんです。ちなみに今日僕たちが着ているのが、1曲目の「Operation Ego」の衣装で。

武藤潤 コンセプト強めの感じがほかのグループには見られないところだと思うし、いいよね。

杢代和人 全員同じジャケットで、近未来感のある雰囲気はちょっと珍しいけど、げんじぶとしてちゃんと世界観を落とし込めていると思います。

大倉 「支配」をテーマにした「Operation Ego」では“異星人による支配”とそれに抗う僕らのことを歌っているんですけど、片耳のガジェットは異星人にコントロールされているときに付けているもので。

原因は自分にある。

原因は自分にある。

──かなりSF感のあるコンセプトなんですね。音源を聴かせてもらいましたが、ボーカルが信じられないスピードの早口で驚きました。

大倉 ええ、僕たちこれまで5年分の鍛錬がありますから!

──げんじぶ史上最速の曲だと思いますが、最初聴いたときはどう思いましたか?

小泉光咲 (即答で)絶対歌えないと思いました。

杢代 (笑)。まあ、そうですよね。

大倉 BPM200に合わせて歌うんですけど、人間の歌える域を超えてるんじゃないかな。

吉澤要人 最初は、歌詞も何を言ってるのか全然聞き取れませんでした(笑)。

大倉 わかるわかる。歌詞カードを読んでても追いつくのがやっと。レコーディングではBPM170まで落として録ったんです。

──そうだったんですね。

大倉 Aメロ、Bメロは宇宙人に支配されているパートで、そこはBPM200で表現されるんです。対してサビでは僕たちが支配から抗っている状態が表現されるので、テンポが変わって感情が爆発する。そういった部分からも物語の流れがわかるような曲になっているんです。

桜木雅哉 僕、デモを聴いた段階では、早口のパートは何を歌っているかほぼ聞き取れないだろうなと思っていたんです。だけど実際みんなが歌入れしたものを聴くと、意外とどこを誰が歌っているのかまでしっかりわかるのが驚きでした。それはさっき空人が言っていたような、5年間の成長もあるのかなって。

杢代 あとさ、サビの爆発力がすごいよね。僕は歌っていないんですけど、本当に支配から抗っているような爆発力をサビ担当のメンバーが出してくれているのがかなりグッときました。

桜木雅哉

桜木雅哉

杢代和人

杢代和人

このグループのメンバーであれてよかったな

──この曲を手がけたのは「メズマライザー」などで知られるボカロPのサツキさん。サツキさんがほかのアーティストに楽曲提供するのはこれが初めてだそうですね。

長野凌大 はい。今年のメガヒットメーカーとも言えるボカロPのサツキさんに曲をお願いできることになって。これは堀江晶太さん(「Museum:0」「夢之相 - イメノアイ」を提供)きっかけのご縁だったりするんですけど、そういうつながりが生まれることや、ボカロカルチャーがどんどん僕らの中に浸透していくこと、影響を直で受けられることが僕的にすごくうれしくて。

武藤 そうね。

長野 だからこそリスペクトを込めて歌いたいなと思ったし、このコンセプトを生身で昇華できるのは日本でもげんじぶだけなんじゃないかと思っています。“げんじぶっぽい世界観”が自分たちの中でもどんどん確立されていっているし、観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)もきっと、この曲を聴いたら「面白い楽曲がきたな」と違和感なく受け止めてくれると思うんですけど……それは僕たちが5、6年かけてこういう表現を積み重ねてきたからこそだろうというのは率直に思います。そんな中でもBPM200で歌う曲なんてこれまでになかったし、世間的に見てもなかなかないスピードだと思います。そういう曲をアイドルがやるというのは客観的に見ても面白いなと思いますし、いち音楽ファンとしても「このグループのメンバーであれてよかったな」と思える。チャレンジできることがうれしかったです。

武藤潤

武藤潤

長野凌大

長野凌大

大倉 この感じ、ボカロでしか聴いたことないもんね。だいたいこういうスピードで歌ってる人、2次元だもん。

──「余白のための瘡蓋狂想曲」のときも歌うのが大変そうだなと思いましたが……。

長野 その比じゃないです(笑)。「余白」はまだがんばれる気がするんですけど……。

杢代 だって、正規のテンポで録れないんですよ?(笑)

長野 これ、もはや正解とかないよね(笑)。

杢代 ちなみにBPM200のままで、がんばって録ろうとした人いる?

大倉 (手を挙げて)170に落としたデモが見つからなくて、200しか見当たらなかったからそのまま練習した。

杢代 歌えた?

大倉 難しいよ。アクセントの付け方とかも考えながらだから、めちゃくちゃムズい。

小泉 AメロBメロは“無表情”な歌い方、サビは感情を込めて……って、感情表現のニュアンスの違いもあるしね。

小泉光咲

小泉光咲

吉澤 あと、テンポを落としたら落としたで違う難しさがあって。アクセントを付けすぎると、BPM200に戻したときにわざとらしく聞こえちゃうんですよ。

杢代 そうそう。

吉澤 そのさじ加減も考えながら、かつ自分なりにニュアンスも入れなきゃいけないから、本当に難しかったです。

長野 けっこう実験的なレコーディングだったよね。

──実際に披露されるときはどうするんですか?

大倉 楽しみにしていただきたいです!(笑)

吉澤 ただ1つ、“踊らないダンス”というアイデアはあって。「立ち姿もダンスの一部」っていう。そういう見せ方もできるのかなとは思っています。ライブでのパフォーマンスは、げんじぶとしてまた新しい領域にチャレンジできると思います。

──披露するとしたら、歌に集中?

吉澤 ダンスに集中です。

大倉 歌うとしても、サビだけとかになるのかな。

小泉 メロパートは“支配されている”状態を表している部分だから、そういう意味では歌わなくても違和感がないんじゃないかなと思っています。そのあたりは楽しみにしていてください。

MV撮影の濃密な時間

──MVは、もう撮影したんですか?

大倉 4曲全部撮り終えました! 「Operation Ego」のMVは、楽曲のストーリーの通りと言いますか。異星人から支配されているところ、それに抗っているところ……視覚的にこの曲を完璧に理解してもらえる内容になっているかなと。

吉澤 あとは、今までのげんじぶのMVになかった色彩が特徴的で。色味がまったく新しい雰囲気で新鮮です。

大倉 今までの僕らのMVって、顔に寄ったリップシンクとダンスシーンで構成されていた部分が大きかったんですけど、今回のEPのMVはお芝居のパートも多かったです。例えば異星人にコントロールされているときはまばたきをしないとか、そういう細かな演技もしました。

吉澤 ちなみに、同じ日に2曲分のMVを撮ったんです。「Operation Ego」と「遊戯的反逆ノススメ」を。

大倉 だからすごい濃密な時間だったし、その分楽しかったです。“異星人から何かをされる”というコンセプト的に、この2曲はつながっている部分があるので、僕たちもストーリーを理解しやすかったですね。

長野 「遊戯的反逆ノススメ」は「Operation Ego」よりも人間味がある感じ。“やんちゃなヒーロー”っていう感じのMVになっています。

ちょっと地球救っちゃおうか?

──ではこのまま「遊戯的反逆ノススメ」のお話を聞かせてもらえたら。

杢代 「遊戯的反逆ノススメ」では、冴えない引きこもりのハッカー集団が異星人の侵略に立ち上がる姿が描かれるんです。ただ純粋にカッコいいわけではなく、ちょっとやんちゃな感じ。「ちょっと地球救っちゃおうか?」みたいな、自信満々な7人が主人公なんです。アップテンポでノリのいい曲だし、僕的にはラップ組の空人と要人のパートが好きで、1回聴いたらクセになるようなラップをしてくれているなと思ってて。

大倉 あら。ありがとうございます。

杢代 あとはなんと言っても落ちサビ! 潤くんが歌う上ハモが耳に残ってお気に入りポイントだったりします。この曲はすぐにでも披露したいです! 振付もカッコいいんですよ。僕たちはユニゾンで踊ることが多いけど、間奏のダンスは3人と4人に分かれるんです。そういう珍しさもあって、新鮮味のある曲になっていると思います。

吉澤 ライブでもお客さんと一緒にアガって、会場全体が盛り上がる曲になりそうだよね。

吉澤要人

吉澤要人

大倉空人

大倉空人

──MVのお話も、ぜひ詳しく教えてもらえたら。

大倉 僕たちはインテリのハッカー集団なんですけど、普段は除け者にされているんです。ただ、異星人の侵略という事態に地球の皆様から「自分たちではどうにもならない」と助けを求められる。普段周りから期待されない、頼られない僕らは「ここで俺たちが地球を救えばヒーローになれる!」とウキウキワクワクして、そこから異星人に立ち向かう突破劇が始まります。

杢代 インテリ集団のイメージから、黒スーツにメガネをかけているんですよ。

桜木 それぞれにキャラクター設定もあって、みんな基本的にパソコンをカチカチしてるけど、僕はなぜか筋トレをしてます(笑)。

長野 僕はハッカー集団のリーダー。一番ハッキングがうまいトップです!

吉澤 で、僕と空人が補佐役。

武藤 光咲はお金をいじってて。

小泉 お金数える人です。

吉澤 経理かもしれない(笑)。

小泉 ハッカー集団のみんなはもともとやんちゃという設定だから、そういう描写がMVにも出てますね。あと歌い方的にも勢いのある感じを出したので、目でも耳でもやんちゃさを感じてもらえると思います。