初音ミク10周年特集|藤田咲×下田麻美インタビュー “ボカロの中の人たち”が手に入れた人生の大切な宝物

初音ミクの10年 ~彼女が見せた新しい景色~
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2007年8月に発売されたVocaloidのキャラクターボーカルシリーズ第1弾「初音ミク」と、同年12月発売の第2弾「鏡音リン・レン」。それぞれの生誕10周年を記念して音楽ナタリーでは、ミクのキャラクターボイスを担当した藤田咲、リン・レンのキャラクターボイスを担当した下田麻美という2人の声優のインタビューを企画した。インターネットを出発点にして音楽のみならずさまざまなカルチャーに影響を与えてきたVocaloidとそのシーンについて、“ボカロの中の人”とも言える彼女たちはどんな思いを抱いていたのか。それぞれの10年間を振り返ってもらった。

なお、この2人のインタビューは、11月17日に大阪・フェスティバルホール、11月29日に東京・東京国際フォーラム ホールAで開催されるフルオーケストラ編成コンサート「初音ミクシンフォニー2017」の公式パンフレットにも、文字数を増量した別テイクでの掲載を予定している。

取材・文 / 橋川良寛(blueprint) 撮影 / 草場雄介

初音ミクシンフォニー2017
初音ミクシンフォニー2017

ill. by KEI @ CFM

2017年11月17日(金)大阪府 フェスティバルホール

出演者大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:栗田博文
司会:初音ミク / and more

2017年11月29日(水)東京都 東京国際フォーラム ホールA

出演者東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:栗田博文
司会:初音ミク / and more

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オリジナルデザインチケット / オフィシャルパンフレット / オリジナルTシャツ(Illustration:寺田てら) / オリジナルラバーストラップ(Illustration:iXima)/ オリジナルクリアファイル / オリジナル不織布バッグ

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スペシャルシート(限定グッズ&パンフレット付き):14800円

S席:9000円

A席:8000円

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「戦隊モノみたいにやっていきたい」って言われた

──10年前、お二人はほぼ同時期にオファーを受け、Vocaloidの録音を行ったと聞きました。初音ミクは2007年8月31日、鏡音リン・レンは同12月27日とリリース日は少し離れましたが、同じキャラクターシリーズで展開される、ということは認識していましたか?

藤田咲 そうですね、オファーは同時期でした。収録は発売順通り、私のほうが少し早かったと記憶しています。

左から藤田咲、下田麻美。

下田麻美 私が収録することが決まったときには、もう咲ちゃんの収録は終わりかけくらいだったと思います。「初音ミク」という名前もまだ決まっていなかった中で、「これが藤田さんの歌声です」と、サンプルを聞かせてもらって。曲はなぜか「およげ!たいやきくん」(笑)。「MEIKO」(2004年11月発売)や「KAITO」(2006年2月発売)がもうあったにせよ、まだ音声合成のソフトは一般的ではなくて、「こんなにきれいに歌うんだ!」と感動したのを覚えています。発売後、ミクちゃんはすぐに人気者になったので、名前がまだない、私が録っているこのキャラクターはちゃんと受け入れられるのかな……って、期待よりも不安が大きかったですね。

──歌声はもちろん、ビジュアルも含めたキャラクターもすぐに関心を集めましたね。最初に初音ミク、鏡音リン・レンの姿を見たとき、どう思いましたか?

藤田 最初の録音のときに、ラフ画を見せていただいたんです。緑がかったツインテールの女の子……清楚なイメージで、「歌が大好きな女の子なんだろうな」と想像して、歌に対する前向きなイメージが入ればいいな、と思って収録に臨んでいたのをすごく覚えていますね。あ、「これから戦隊モノみたいにやっていきたい」と言われたのも思い出しました(笑)。戦隊モノでグリーンって少しニッチなキャラクターですけど、MEIKOがレッドで、KAITOがブルーということだったのかなって。

下田 リンもレンも、すごく好感が持てるキャラクターだと思いました。私をキャスティングしていだいた理由って、ちょうどその頃、動画サイトで私が演じたゲームキャラクター(「THE IDOLM@STER」の双海亜美&双海真美)の歌声が評判になっていて、それがクリプトンさんの目に止まったからなんですよね。その声の印象が黄色だったと。そういうイメージをキャラクターに反映していただけたというのは、新人声優にとって身に余る光栄と言うか。こんな大きなことになるとは思っていませんでしたが、本当にうれしかったのを覚えています。

藤田 初めてディラッドボード(ステージに設置する透過スクリーン)でミクちゃんが歌っているライブを観たとき、リン・レンも出ていて、本当に生きた人間みたいで、家族になったんだなということを実感しました。動いてパフォーマンスしている姿は圧巻なので、ぜひ多くの方に観てほしいと思ったことを覚えています。

実感したきっかけはCM出演

──数々の名曲の誕生と共に人気を拡大していく中で、セガグループの音楽ゲーム「初音ミク -Project DIVA-」のリリースも、大きなターニングポイントになったと思います。藤田さんは過去のインタビューで「ミクとの距離感が変わった」と発言していますね。

藤田 そうなんです。「初音ミク -Project DIVA- f」のリリースが5周年の2012年8月20日で。5周年にミクをみんなでお祝いしましょうとCM出演をオファーしていただいて。それでCMの撮影に臨んだのですが、初音ミクファンの皆さんがダンスを覚えて数百人単位で集まってくれて、私のことも温かく拍手で迎えてくれたんです。屋台も出て、ちょっとしたパーティでしたね。そこで「Weekender Girl」に合わせてみんなが一生懸命に踊っているのを見て、本当に感動して。

──なるほど。

藤田咲

藤田 それまでは、いろんな方に「このブーム、スゴい!」と言われても、あまり実感が沸かなかったんです。でもこのCM撮影で、「ネット社会は顔が見えないからよくわからないけれど、ちゃんと人がいて、ムーブメントを作っているんだ!」って急にブームの意味が理解できました。こんなに愛して、支えてくれる人たちがたくさんいるんだから、私もがんばらないといけないと思いました。

下田 私はもともとリズムゲームが好きで、「Project DIVA」はゲームセンターでも、家庭用でも遊んでいたんですよ。やっぱりミクちゃんもリン・レンも音楽の力で大きくなっていったキャラクターですし、それがきれいなビジュアルでダンスも踊って……DTM用のソフトがここまでくるって、歴史的な革命じゃないですか。楽曲を作って、歌ってみた、踊ってみた、描いてみた、といろいろな展開がある中で、絶対みんなが待ち望んでいた!と思える形でゲームになったのが、本当にうれしかったです。

──ソフトとして“使用する”というところから、みんなで“楽しむ”コンテンツになっていく中で、ゲーム化は大きなポイントでしたね。

下田 本当に大きいですよ。ゲームでファンになってくださった方も多いですし。

──ビジュアルの話も出ましたが、ユーザーが自由にイラストを描き、それが公式に取り上げられて、キャラクターがさまざまに変化してくのも、一般のアニメーションのお仕事とは違う部分だと思います。初音ミクは史上もっとも多くの衣装を着たアーティストとも言えそうですが、ユーザー発信で七変化していくキャラクターについてはどう見ていますか?

藤田 単純にうれしいです。

下田 うれしいね。

藤田 アニメだと、「ドラえもん」ののび太くんみたいにいつも同じ服、というのが普通ですから(笑)。多くの人がコスチュームをデザインしてくれるのはありがたいことだし、それが公式に採用される、というのも素敵なことですよね。追いかけている人たちも新鮮さを求めていて、その意味でも、もっともっと多くの人に衣装を着せてもらえたらうれしいなって。