音楽ナタリーでは今年3月に、Billboard Liveで開催される春のオススメ公演を紹介する特集記事を掲載したが(参照:Billboard Liveの要注目10公演を紹介 常連の佐野元春、土岐麻子、君島大空がその魅力を語る)、今年の夏も引き続き見逃せないライブが盛りだくさんになっている。
今回の記事ではその中でも特にオススメの東京・Billboard Live TOKYOで開催される3公演を紹介。出演アーティストのバックグラウンドなどを解説しつつ、ライブの見どころをお伝えする。これを読んで気になるライブがあった人は、ぜひBillboard Liveに上質な音を浴びに来てほしい。
文 / 森朋之
高井息吹──個性と実力を兼ね備えた4人との、刺激的でスペシャルな夜
高井息吹 special band set in Billboard Live TOKYO
【Billboard Live TOKYO】(1日2回公演)
2024年8月20日(火)
1stステージ OPEN 16:30 / START 17:30
2ndステージ OPEN 19:30 / START 20:30
ジャズ、クラシック、ロック、エレクトロニカなどを自由に行き来する音楽性、心象風景とリアルな情景が美しく溶け合うリリック、そして、その場の雰囲気を柔らかく包み込むと同時に、聴き手の心に凛とした意思を手渡すようなボーカル。2015年のデビュー以来、シュアな耳を持つ音楽ファンの注目を集めてきた高井息吹が、再びBillboard Live TOKYOに登場する。
幼少期からクラシックピアノを始め、幅広い音楽を吸収しながら育った高井息吹。2015年に1stミニアルバム「yoru wo koeru」を発表したのち、シンガーソングライターとしての活動のほか、数多くのCM曲を手がけるなど、自らの音楽フィールドを広げ続けてきた。活動10周年を迎えた2023年にはピアノの弾き語りによるEP「PIANO」とシングル「Starlight / 夜明けまえ」をリリース。シングルには彼女を活動初期から支えている、“高井息吹と眠る星座”のメンバーである君島大空(G)、新井和輝(B / King Gnu)、坂田航(Dr)が参加した。同年6月には“高井息吹と眠る星座”名義でBillboard Liveに初登場を果たし、12月にライブ音源をBillboard JAPAN Recordsからリリース。10周年のアニバーサリーにふさわしい充実した活動を繰り広げた。そして今年7月31日、チェロやコントラバス、ビブラフォンなどの音色と電子音響からなるアンビエントポップな最新EP「金星の声」を配信リリースしている。
今回のBillboard Liveには、個性と実力を兼ね備えた4人の演奏家が参加する。現在のジャズシーンを牽引する1人である井上銘(G / CRCK/LCKS)。蓮沼執太フィルのメンバーであり、矢野顕子、UAなど幅広いアーティストと共演している千葉広樹(B)。石若駿率いるバンド・Answer to Rememberなどにも参加する、新世代ジャズシーンに欠かせないTaikimen(Perc)。大橋トリオ、日野皓正、大西順子などのライブをサポートしている高橋直希(Dr)。高井息吹がこの4人とステージに立つのは、今回が初。奥深く刺激的なインタープレイの中で彼女のボーカルを堪能できる、スペシャルな夜になるのは間違いない。
安田レイ──話題のカバー企画を鍵盤とバイオリンの特別編成でお届け
「Rei Yasuda "through my VOICE" Premium Live 2024 at Billboard Live TOKYO」
【Billboard Live TOKYO】(1日2回公演)
2024年8月25日(日)
1stステージ OPEN 15:00 / START 16:00
2ndステージ OPEN 18:00 / START 19:00
昨年ソロデビュー10周年を迎えた安田レイがこの夏、2度目のBillboard Live TOKYO公演「Rei Yasuda "through my VOICE" Premium Live 2024 at Billboard Live TOKYO」を行う。
2013年にシングル「Best of my Love」(アニメ「宇宙戦艦ヤマト2199」のエンディングテーマ)でデビューした安田は、「Tweedia」(「劇場版 ポケモン・ザ・ムービーXY 光輪の超魔神 フーパ」主題歌)、「Mirror」(アニメ「魔法科高校の劣等生」エンディングテーマ)、「Not the End」(ドラマ「君と世界が終わる日に」挿入歌)などの話題曲を次々と発表してきた。2021年にはYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に登場し、H ZETTRIOとともに代表曲「Brand New Day」を披露。ややハスキーな声質、さわやかさと力強さを共存させたボーカリゼーションを改めてアピールした。
今年2月にはEP「Ray of Light」をリリース。タイトル曲は映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の挿入歌として書き下ろされた楽曲で、ダイナミックなメロディ、ロックと打ち込みのビートを融合したサウンド、「何があっても大切な人を守りたい」という意思を込めた歌詞が響き合うアッパーチューンに仕上がっている。
今回のBillboard Live TOKYO公演「through my VOICE」は、同タイトルのカバー動画投稿企画に端を発している。去年7月に始まったこの企画では、宇多田ヒカルの「First Love」、藤井風の「優しさ」、Vaundyの「Tokimeki」など、彼女自身のルーツにある曲やリスペクトするアーティストの楽曲のカバー動画がSNSに投稿され、多くの反響を呼んでいる。
本公演はいわば「through my VOICE」のライブバージョン。これまでに投稿されたカバー楽曲のほか、邦楽・洋楽を交えた幅広い年代の名曲がオリジナルアレンジで披露される予定だ。ステージをともにするのは、安田レイのほかMs.OOJA、吉田山田、米倉利紀などの作品やライブに参加している呉服隆一(Key)、そしてクラシックからロック、ポップスまで幅広いフィールドで活躍を続けるNAOTO(Vn)。鍵盤とバイオリンという特別な編成で、彼女の豊かなボーカル表現を体感できる貴重な機会になりそうだ。
yonige──それぞれの“blue”を身に付けて楽しむ、普段とはひと味違うライブ
yonige「Something Blue」
【Billboard Live TOKYO】(1日2回公演)
2024年8月26日(月)
1stステージ OPEN 16:30 / START 17:30
2ndステージ OPEN 19:30 / START 20:30
ジャズやR&B、フュージョンなどの公演が多い印象があるBillboard Liveだが、ロックバンドもたびたび出演している。8月26日にはyonigeがBillboard Live TOKYO公演「Something Blue」を開催。彼女たちがBillboard Liveのステージに立つのは、今回が初めてだ。
大阪寝屋川出身の牛丸ありさ(Vo, G)、ごっきん(B, Cho)からなるyonigeは、2013年に結成。2015年リリースのミニアルバム「Coming Spring」の収録曲「アボカド」「さよならアイデンティティ」が話題を集め、2010年代バンドシーンにおいて確固たる存在感を放っている。
その後もメジャー1stアルバム「girls like girls」、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)と福岡晃子(チャットモンチー済)がプロデューサーとして参加した「健全な社会」などを発表。オルタナティブなセンスを反映した音楽性、リアルな体験や感情に裏打ちされた歌詞によって高い評価を獲得してきた。
今年1月には3年8カ月ぶりとなるフルアルバム「Empire」をリリース。鋭い疾走感をたたえたサウンドが印象的な「Super Express」、シューゲイズの要素を反映した「DRIVE」など、これまでのyonigeらしさを追求しつつ、新たな音楽的アプローチにも果敢にトライした作品に仕上がっている。牛丸の歌詞とボーカル表現の広がりを実感できるのも、このアルバムの聴きどころだろう。
「Something Blue」は1stステージがアコースティックセット、2ndステージはバンドセットで行われる。Billboard Live TOKYOのシックな雰囲気の中で、普段のライブハウスやホールでのライブとはひと味違う特別なステージを体感できそうだ。ドレスコードは「青」(アクセサリーやスカーフ、帽子等の小物でも可)。それぞれの“blue”を身に付け、ぜひ会場に足を運んでほしい。