MovieNEX発売記念 松尾スズキが語る「美女と野獣」|カラオケでも熱唱! ディズニー名作に魅了された理由とは

ディズニー・アニメーションを実写化した「美女と野獣」のMovieNEXが10月4日にリリースされる。「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソンを主演に迎えた本作は、日本で4月に封切られて以降多くの観客を魅了し続け、興行収入120億円を突破。邦画・洋画合わせて2017年の国内ナンバーワンヒット作となり、さらに世界興収・日本興収ともに1位を記録している。

ナタリーでは、MovieNEX発売を記念して特集を展開。映画ナタリーでは、作・演出家として大人計画主宰を務めるほか、役者、映画監督、文筆家としてもマルチに活躍する松尾スズキに本作の感想を聞いた。日本で実写化するならキャストは誰? カラオケで歌いたくなるナンバーは? 劇場での鑑賞を振り返りながら、作品の魅力や楽しみ方を語ってもらった。

取材・文 / 金須晶子 撮影 / 佐藤友昭
ヘアメイク / 中山知美(R.I.S E)
スタイリング / 安野ともこ(コラソン)
衣装協力 / suzuki takayuki

「美女と野獣」MovieNEXのここに注目!

「美女と野獣」

字幕版 / 吹替版どちらも堪能

MovieNEXには、エマ・ワトソンやダン・スティーヴンスらオリジナルキャストの歌声を楽しめる日本語字幕版はもちろん、昆夏美、山崎育三郎、吉原光夫、濱田めぐみといった舞台・ミュージカルで活躍中の豪華俳優陣が日本語吹替を担当した吹替版も収録。これ1枚でお気に入りのシーンをいつでも聴き比べられる!

「美女と野獣」

シングアロング版で一緒に歌おう

巨匠アラン・メンケンによる珠玉のミュージカルナンバーに彩られた本作。カラオケのように歌詞がテロップで表示されて色が変わるシングアロング版で鑑賞すれば、いつの間にか登場人物たちと一緒に歌っている気分に!? 英語版 / 日本語版どちらも対応しているので、両方マスターしてみては。

松尾スズキ インタビュー

エマ・ワトソンはファンタジーが似合う

──本日はよろしくお願いします。

松尾スズキ

ディズニー作品だってことを忘れずに言葉を選ばないとね。緊張するなあ(笑)。

──正直にお話しいただいて大丈夫です(笑)。松尾さんは「美女と野獣」を映画館で鑑賞されたそうですね。もともとミュージカル映画がお好きなんですか?

映画館では2回観ました。字幕版を2Dと3Dで。アラン・メンケンの楽曲が好きなんです。「美女と野獣」は最初にアニメーション、そのあと劇団四季のミュージカル、そして今回の実写映画と3段階で観てきて。やっぱりいいなあと思いました。

──では実写版が公開されると発表になったときから、これは観に行かねば!と。

「美女と野獣」より、エマ・ワトソン演じるベル。

そうですね……エマ・ワトソン、好きな顔ですし(笑)。やっぱり彼女はファンタジーが似合いますね。南米を舞台にした史実ベースのリアルな作品(「コロニア」)なんかにも出演していましたが、“こっち”に戻ってきてくれた!みたいな感覚。ベル役はぴったりでした。歌もうまいし。

──本当に上手でしたね。アニメーションと比較して、実写ならではのよさを感じたシーンはありましたか?

「美女と野獣」より、ジョシュ・ギャッド演じるル・フウ(左)とルーク・エヴァンス演じるガストン(右)。

言い方が難しいんだけど、アニメーションは子供向けの趣が強くて。ガストンにしろル・フウにしろ、いい意味でわかりやすい薄っぺらさがあるんですよ(笑)。あえて薄っぺらく描くのが2次元ならではなんですけどね。実写版ではキャラクターに立体感が生まれていました。ル・フウは今回、最後に改心するというか、気持ちの変化の描写もあったりして。まあガストンは実写版でもあのままですが……(笑)。

──確かに、ガストンは最後までガストンでした(笑)。

あとは画面の美しさですね。最初は3Dで観るつもりなかったんですけど、1回観たら3Dでも観たいと思ってしまって。特に食卓のシーンや「朝の風景」のシーンは、3Dのために作った場面なんだろうなと。あのへんの演出は、過去に舞台化した際のスキルを逆輸入しているのではと思いました。実写版には、これまで磨かれてきた「美女と野獣」の歴史が集約されていますよ。完成度がめちゃくちゃ高いですもん。あと人間が演じたことによって、野獣の表情がアニメーションと比べて明らかによくなっていました。複雑な心情がうまいこと出ていて、それだけでも実写化した意味があるんじゃないかな。

脇役たちの完成度の高さに「これがうわさの2.5次元!?」

──2度目は3Dで鑑賞し、脇役たちの完成度の高さに目が行ったとか。

ディズニー映画と言えば“雑魚キャラ”じゃないですか(笑)。脇役たちの薄っぺらさの中によさがある。例えばガストンを慕っている村娘たち。キャラの作り込みがすごく面白くて、これがうわさの2.5次元か!?みたいな(笑)。薄っぺらさの完成度が高いんですよ。役者が己の演技に対する欲を打ち消して、薄っぺらい人間を完成させようとする作品愛のようなものが感じられます。

──あの村娘たちはデフォルメの効いたキャラクターでしたね。

彼女たちに過去や背景なんてない(笑)。ただただ、あのシーンを生きているんです。そこがディズニー映画の脇役たちの素晴らしさ。一瞬たりとも素を見せず、常に薄っぺらくいようとしている(笑)。日本人があれをやると寒くなるんだよね。

──それはなぜでしょう?

国民性の違いでしょうね。日本人はあんなに驚いたりしないし、表情のレパートリーも少ないですもん。あとベルの父親モーリスが、アニメーションと比べて渋く描かれていることに驚きました。え、オルゴール職人なの!?って。だってアニメーションでは、はちゃめちゃなお父さんだったじゃないですか、赤塚(不二夫)マンガに出てきそうな(笑)。

「美女と野獣」より、左がケヴィン・クライン演じるモーリス。

──実写版ではモーリスの泣かせどころが満載でした。

(モーリス役の)ケヴィン・クラインの歌声もよかったですよね。しかもあんなにいい人なのに、バラの花1本盗んだだけで監禁されちゃうの!?って……かわいそうな感じがすごく出ていました。アニメーションのモーリスは本当にめちゃくちゃな人だから、正直、監禁されて当然!みたいな気持ちで観ていましたけど……(笑)。そのあたりの比較も面白かったです。

音楽ナタリーPowerPush  超特急・吉原光夫(吹替版ガストン役) 歌唱レッスン体験企画&インタビュー

「美女と野獣」(MovieNEX)
2017年10月4日(水)発売
ウォルト・ディズニー・ジャパン
「美女と野獣」MovieNEX

MovieNEX
[Blu-ray Disc+DVD]
4320円

Amazon.co.jp

※初回限定版はアウターケース(ベル・野獣アート)付き

「美女と野獣」MovieNEX コレクション(期間限定)

MovieNEX コレクション(期間限定)
[2Blu-ray Disc+2DVD]
8640円

Amazon.co.jp

MovieNEXとは
Blu-rayとDVD両方のディスクに加え、スマートフォンやパソコンで視聴でき、ディスクに収録されていないコンテンツも楽しめるデジタルコピーのサービスにも対応したパッケージ。

ある城に、若く美しく傲慢な王子が住んでいた。嵐の夜、寒さをしのぐため城へやって来た老婆を冷たくあしらった王子は、老婆に化けていた魔女の呪いで醜い野獣の姿に変えられてしまう。その呪いを解くには、魔法のバラの最後の花びらが落ちる前に王子が誰かを心から愛し、その誰かから愛されなくてはならなかった。長い年月が過ぎ、あるとき町娘のベルが城にたどり着く。村人から変わり者扱いされても自由にたくましく生きてきたベルと触れ合う中で、外見に縛られ心を閉ざしていた野獣は本来の自分を取り戻していく。しかしベルに恋する横暴な男ガストンが、彼女を自分のものにしようと悪巧みを考え……。

スタッフ
  • 監督:ビル・コンドン
  • 作曲:アラン・メンケン
  • 作詞:ティム・ライス、ハワード・アシュマン
キャスト ※()内は吹替版
  • ベル:エマ・ワトソン(昆夏美)
  • 野獣:ダン・スティーヴンス(山崎育三郎)
  • ポット夫人:エマ・トンプソン(岩崎宏美)
  • モーリス:ケヴィン・クライン(村井國夫)
  • ガストン:ルーク・エヴァンス(吉原光夫)
  • ル・フウ:ジョシュ・ギャッド(藤井隆)
  • ルミエール:ユアン・マクレガー(成河)
  • コグスワース:イアン・マッケラン(小倉久寛)
  • マダム・ド・ガルドローブ:オードラ・マクドナルド(濱田めぐみ)
  • プリュメット:ググ・バサ=ロー(島田歌穂)
  • チップ:ネイサン・マック(池田優斗)
  • カデンツァ:スタンリー・トゥッチ(松澤重雄)
特集「美女と野獣」を語る
コミックナタリー 「いつかティファニーで朝食を」マキヒロチ
映画ナタリー 小野賢章
ステージナタリー 藤田俊太郎
音楽ナタリー NONA REEVES 西寺郷太
作品解説・キャラクター紹介
松尾スズキ(マツオスズキ)
1962年12月15日生まれ。福岡県出身。1988年に大人計画を旗揚げし、1997年「ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~」で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2004年に「恋の門」で長編監督デビュー後、2008年には「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、2015年には「ジヌよさらば~かむろば村へ~」が公開された。小説「クワイエットルームにようこそ」「老人賭博」で芥川賞にノミネートされるなど作家としても活躍。木曜時代劇「ちかえもん」ほか俳優としての出演作も多く、公開中の「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」にも出演している。2007年に自身が演出したミュージカル「キャバレー」を、2017年に長澤まさみを主演に迎えて再演した。作・演出を手がけ、2002年に初演された舞台の再演「日本総合悲劇協会Vol.6『業音』」が各地で巡演中。10月にはフランス・パリでも上演される。

2017年10月26日更新