安部公房の小説を映画化した本作の主人公は、ダンボールを頭からすっぽりとかぶり、一方的に世界をのぞき見る“箱男”に魅せられたカメラマンの“わたし”。自身も箱男としての一歩を踏み出すが、数々の試練と危険に襲われる。“わたし”を永瀬、箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ箱男を
「箱男」は石井岳龍(当時は石井聰亙)監督のもと、主演に永瀬、助演に佐藤らを迎えて日独合作映画として製作が決まっていた。しかしハンブルクでのクランクイン前日に日本側の製作資金の問題で突如撮影が中止となってしまう。当時30歳で、自宅や宿泊先でも箱に入って生活するほど役に入れ込んでいた永瀬は、気持ちが追い付かず俳優業復帰に数カ月を要してしまったという。同じく石井も「私も2年くらい立ち直れなかった。でもその間もずっとあきらめていなかった」と語っている。
石井はあきらめず、2003年ごろに映画化を再度交渉。その権利はハリウッドの会社へと渡っており、リドリー・スコットの製作会社が40分のパイロットフィルムまで完成させていたが実現しなかった。その後もフランスでの企画開発のうわさもあったが結局映画化には至らず、ついには世界のマーケットで「安部公房原作の映像化は不可能だ」とささやかれるようになる。
原作権がハリウッドから戻ってくる機会を待っていた石井は、2013年ごろにコギトワークスのプロデューサー・関友彦に相談を持ちかけ、今回共同で脚本を担当した、いながききよたかと企画開発を重ねることに。そして2016年3月、改めて正式な原作権の許諾を得た石井は、安部の生誕100年にあたる2024年に公開の照準を合わせ、永瀬と佐藤に声をかける。佐藤は、永瀬と共演していた「64-ロクヨン-」の舞台挨拶で「本当はこの映画ではなく昔共演をするはずだった」という趣旨の発言をしていたことから、石井は「心のどこかにずっと『箱男』が残っていたのではないか」という可能性に賭けた。さらに石井組に多く参加してきた浅野にもオファーをし、それぞれが快諾したことで本作の製作が現実のものに。“因縁の地”であるドイツ・ベルリン国際映画祭でのワールドプレミアを経て、8月23日より全国で公開される。
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tAk @mifu75
27年前に企画が頓挫した「箱男」が因縁の地で上映を果たす、その軌跡が明らかに https://t.co/vmYTTPjjnx