8-2 夫婦間の財産関係
①夫婦間の財産関係
夫婦間の財産関係について、婚姻前に合意があればそれに従う
しかしこのような合意が為されることは極めて少ない
夫婦財産契約がなされない場合には、民法の規定に基づき、夫婦間の財産関係は法定財制により処理されることになる
法定財産制では、夫婦別産制を基本としつつ、共同生活を維持するのに必要な範囲で生じた債務については
日常家事に関する債務として、夫婦の連帯責任としている
②夫婦財産契約
夫婦は、それぞれが所有している財産及び婚姻届出後に得るだろう財産について、法定財産制と異なる契約(夫婦財産契約)を締結することができる
・契約締結の時期
婚姻の届出前まで
・契約の内容
自己の財産の管理権を他方配偶者にゆだねる財産を共有とするなど
・第三者対抗要件
婚姻届出までに登記をする
・契約の変更
婚姻の届出後は変更できない
変更の登記が必要
③法定財産制
夫婦財産契約が為されていない場合には、法定財産制による
法制財産制では、次の3項目が規定されている
(1)夫婦間における財産の帰属
・原則
夫婦それぞれの特有財産(自分のもの)
・例外
夫婦のどちらに属するか明らかでない財産は共有
夫婦は他人の集まりなので、いくら仲が良くても自分の財産は自分のものである
つまり、夫婦の一方が婚姻前から有する財産は、その人の特融財産となる
また、婚姻中に事故の名で得た財産も、その人の特融財産となる
財産をめぐる法律関係をわかりやすくするための一つの技術といえる
しかしこれでは内助の功が無視されるので、民法は、離婚となったときに
財産分与請求により清算することにした
また、相続の場合には、法定相続分や遺産分割協議において内助の功が繁栄できるように配慮している
夫婦が共同生活を送っていれば、夫婦のいずれに属するのか明らかでない財産も生じてくる
それは夫婦のどちらの者とも言い難いので、夫婦の共有とする
(2)婚姻費用の分担
夫婦共同生活を維持していくためには、衣食住について、それなりの出費が生じる、これが婚姻費用である
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する
生活費として夫婦の一方が拠出した金銭は、婚姻費用となる
(3)日常家事に関する債務の連帯責任
売買契約を締結した場合、飼牛は代金を支払う義務を負うが
買主以外の者は代金の支払い義務を負わないのが原則
しかし夫婦のどちらか一方が代金後払いで店舗から食料品や衣類などを購入した場合
その売買契約の当事者となった夫婦の一方がその代金の支払い義務を負うのみならず
契約の当事者とならなかった夫婦の多方も、自己の特有財産をもってその代金の支払義務を負うことにした
したがって、店舗は夫婦のどちらに対しても代金の金額請求ができることになる
このことを民法は「夫婦の一方が日常の家事に関して、第三者と法律行為をしたときは
他の一方はこれによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」と規定している
日常家事の範囲内での債務は、夫婦共同生活を維持するための債務なので
その範囲内において、夫婦はお互いに相手方の特有財産の財産管理権を与えている
日常家事により生じた費用とは、夫婦共同生活を維持するために
日々必要とする衣食住に関する費用、医療費、子供の教育費などをいう
それぞれの家庭によって生活の内容が異なるので、日常家事の範囲に含まれるかどうかも
家庭ごとにことあることになるが、取引の安全の点から、客観的に、その法律行為の種類や性質なども考慮して判断される
夫婦共同生活の為の移住用家屋の賃貸借契約は、日常家事の範囲に含まれ、家賃債務の支払は連帯責任となる
しかし、移住用であっても不動産の購入などは、日常家事の範囲には含まれないのが通常である
例外として、他方配偶者が日常家事債務の連帯責任を負わない場合がある
・第三者に対して責任を負わない旨を予告した場合
・発生した債務が日常家事の範囲外である場合
連帯責任を追及できないという不利益を第三者に予想外に課さないように配慮したものである