主に児童向け書籍を発行しているので有名な岩崎書店という出版社があります。はてなブログでなら「『お茶が出ない』で有名な人が社長している出版社」のほうが通りがいいとは思いますが。
さて、そこから出ている本で、先月@lucky_jpさんのTweetでバズっていたものがありました。
昨日ツイートした、説明のトリック、この辺りも学校の授業でやったほうがいいよな。と思った。 pic.twitter.com/QEz08HHD03
— ラッキィ@ダライアス本委託あるよ (@lucky_jp) 2017年11月5日
こちらの本、『よく考えて! 説明のトリック 情報・ニセ科学』という本で、「ウソ・ホント? トリックを見やぶれ」というシリーズの本になります。こちらに興味があったので、先日注文して読んでみました。
ニセ科学、言葉のトリック、そして情報
この本のタイトルは前述の通り「トリックを見やぶれ」というシリーズのものですが、この本ではサブタイトル通り、1章では「ニセ科学を見やぶろう!」、2章では「ことばのトリック・ウソ・ホント?」、そして3章では「その情報はホントかな?」というようなものになっています。つまり、現代ネットで問題になっている、「情報リテラシー」を身につけるための教材になっているのです。
この本の特徴としては、それらの事項における言葉の「トリック」を、わかりやすく解説しているところにあります。もともと教育用に作られているせいで、そのへん丁寧です。
たとえば、ニセ科学の項では「マイナスイオン」について採りあげているのですが、現状の説明(世の中でマイナスイオン製品を売り出していること)→それに対しての懐疑(化学の世界には「マイナスイオン」という言葉はない)→カッコイイ名前がポイントという説明→「化学的に聞こえることばに、『ほんとうかな?』と思う気持ちも大切です」という結びにと、基本的な論理展開でわかりやすく説明することに努めています。もちろんイラストやマンガによる説明も大きく占めています。
つまり、導入から結論までの起承転結がはっきりしている上、図も大きいので、その事項に対する問題点の説明理解がしやすくなっているのです。
そんな感じで「血液型」「水のことば」など、ネットでは欲話題になるものの、改めて説明する場がないところについて触れています。
とりわけ「ゲーム脳」の項目で触れられている「(ゲームをやったほうがいいか悪いか)決めてくれたほうが楽なのに」という問いかけに対する「ニセ科学はそんな人のなまけ心に入りこむのさ。本当の化学とは、いろいろな条件のもとに成り立つ、けっこうびみょうなものなんだ。」という言葉はポイント高いです
悪徳商法や詐欺によく使われることばのトリック
そして2章では「ことばのトリック」として、「伝えることはむずかしい?」や「ウソをつくと何が起こる?」というような、言葉におけるトリックについて書かれているのですが、これは明らかにネット上でのやりとりでも同じことが言えるものとなっています。とりわけ、詐欺や悪徳商法で使われるロジックについての解説が多いように思えます。とりわけ「相手をあやつる会話とは」での会話誘導がわかりやすくなっています。
あと、この「人はここでだまされる」というページ、そのままネットのアレなところ(まとめサイトなど)でそのまま使われている感じがして、大いに注目します。
情報の見方について
さらに3章の「その情報はホントかな?」では、見出しや番組にまぎれこむウソ、さらにはグラフやアンケートで混入しうる作為、そしてSNSやインターネットの情報に対するものなど、メディア及びネットリテラシーについてかなり認識し直さなければならないことが多く含まれています。
参考(だいぶ前に書いたもの)
子どもだけではなく、むしろ大人に読んで欲しい要素が多い
以前、「義務教育であまりやってなさそうだが子どもに教えておいたほうがよさそうなもの」というエントリーを書きました。
それの中で、「情報系(ネットリテラシー)」「ニセ科学系」などについて触れましたが、この本はそのあたりについてしっかり書かれているので、かなり教育に役立つものだと思います。
しかし、この本は子どもだけではなく、むしろ大人、それも今ネットを使っているような人にこそ読んで欲しいものだと思います。
今、ネット上ではよく詐欺や悪徳商法、怪しいバイラルサイトやまとめサイト問題、そしてデマなどについての問題がよく起こります。それらについての、つまりネット上で情報に触れる、もしくは発信する際に心得ておきたことが、かなり書かれているのですよね。ですので、絵本みたいなものですが、むしろ大人にも読んで、それらについての認識をしてもらいたいのだと思うのです。まず大人がそのへんを認識しないと、子どもに教えることも出来ないので。
なんか廉価版が出るらしい
この本は「大人用に新書とかにしてまとめて出したらいいんじゃないか」とか思っていたら、なんか緊急に縮小して&廉価になったものが出るらしいです(Amazonの紹介欄とか見ると、やはりバズったのがきっかけのようで)。個人的には廉価になった差額との約2000円分しまったと思わなくもありませんが、多くの人が読まれる形になったのは喜ばしいこのです。
大人、子ども共に,リテラシーを身につける一助とするために、購入、もしくは地元の図書館などで目を通してみてはいかがでしょうか。
よく考えて! 説明のトリック 〈縮刷版〉 情報・ニセ科学 (ウソ? ホント? トリックを見やぶれ)
- 作者: 市村均,曽木誠,伊東浩司
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2017/12/09
- メディア: 単行本
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