未経験からWebディレクターへ転職するために必要な一つのこと
Web業界と聞くと、高度なIT先端技術の知識と経験が必要で、未経験者の転職は困難と思いがちです。しかし、Web業界の求人を見ると、未経験者歓迎の募集が少なくありません。特に、Webディレクターの求人ではその比率が高いと言えます。
その理由は、WebディレクターにはWeb技術の専門知識や経験よりも、「リーダーシップ」や「管理能力」、「コミュニケーション能力」の方が重要になる場面が多々あるからです。つまり、これらの能力や正確な転職ノウハウが身に付いていれば、未経験からの転職の可能性は十分に広げることができるのです。
目次
まずは、Webディレクターにとって「経験がある」ことが強みとなった事例を知ろう
Webサイト制作のニーズが、未だ増加の一途を辿っている現在、「仕事のできるWebディレクター」は、転職市場において、奪い合い状態になっていると言っても過言ではありません。では、転職に成功したWebディレクターは、どんな「経験」を強みにして転職したのでしょうか。実際の一例をあげて説明できればと思います。
Nさんが、Webディレクターという職種の存在を知ったのは5年前の新卒研修の場です。「クライアントから実現したいものを引き出し、それを形にするのがWebディレクターの仕事」との説明に共鳴し、新卒の配属でWebディレクターを希望、その第一歩を歩み始めました。
最初は、もちろん未経験で、全てが初経験でしたが、アシスタントディレクターとして先輩ディレクターに付き、OJTでWebディレクションのイロハを学び、3か月目に一本立ちすることができました。
しかし会社の仕組みとしては、営業担当者が受注時点で制作メニューも予算も決めていたので、それ以上の品質のWebサイト制作をクライアントから要求されても対応ができず、「予算内でいかに収めるか」もしくは、「そのためにクライアントの要望をいかに抑えるか」の逆提案ばかりに、頭を悩ませたといいます。
そうして内心悶々としながら仕事に励んでいたある時、Webディレクターの仕事をもっと体系的に勉強したいと思い立ち、あるセミナーを受講しました。
そのセミナーでは、Webディレクターの仕事は、「決められた作業をそつなくこなすことだけではなく、積極的なアイデアによって無限に幅を広げられる仕事だ」ということに気付かされました。同時に、自分が本当にやりたかった仕事は、プロジェクト全体のマネジメントなんだ、ということにも気付きました。しかし前の会社では、そうした本来のWebディレクターの仕事はできませんでした。そこで転職を決意。2年前に、現在の会社の求人と出会い、応募。転職しました。
これはまさに、転職の動機が明確になり、「経験」が強みとなったケースと言えます。
というのは、転職前のNさんは、制作メニューも予算も決まった中で、最善のWebサイトを作ろうと日々努力していたことから、進行状況をきめ細かく管理できるスキルが自然と身についていたのです。まさしくこれが、「実務経験」となり、転職時に活かせる強みになったと言えるのではないでしょか。
Nさんがマイナビクリエイターに登録し、転職活動を始めた当初は、その経験が強みとなっていることを認識していませんでしたが、キャリアカウンセリングをする中で、徐々にその経験を自分の強みとして自覚し始め、自発的にアピールできるようになっていったことは、大変に頼もしいものでした。
未経験からWebディレクターになるために必要なことは「旺盛なチャレンジ精神」
それでは本題として、未経験の場合はどのように転職活動に向き合えばよいのでしょうか。具体的な例を通して解説します。
例えば、ある広告代理店では、Webディレクターの求人で、経験の有無など初めから問題視していません。応募資格でも「Webを使ったマーケティングやブランディングに興味のある方、対面時のコミュニケーション能力のある方」としているだけです。そしてアピール欄では「未経験でも、先輩のディレクションに携わりながらスキルアップし、ゆくゆくはクライアント企業のコンサルティングをできるまでのスキルを身につけることが可能です」としています。
この会社が、未経験者であるWebディレクター候補生に求めているのは「旺盛なチャレンジ精神」だけです。
販促コンサルティングを主力事業にしているこの会社は、Webサイト制作業務は、Webデザイナー、Webコーダーなどのクリエイター達に任せており、Webディレクターはそれを管理する能力があれば問題なし、と割り切っていると考えられます。そのため、マーケティングやブランディングに興味があり、チャレンジ精神があり、かつロジカルな思考ができる人材であれば、例えWebディレクターとして未経験だったとしても、採用される可能性が十分にあります。
むしろ、このような求人を出す企業では、「未経験」という真っ白な状態が強みとなります。「仕事のできるWebディレクター」に成長できる可能性があるとして、「自分で何でもかんでもやりたい!」というよりも「技術的なことは専門家に任せた方が質も高く効率的!」という謙虚なスタンスをとれる、そうした人材を採用側も求めているのです。
Webディレクターの転職で、未経験ならではの強みを活かす5つのポイント
未経験者が転職でWebディレクターを目指す場合、どうすれば自分の強みをアピールできるのか、ここでは求人応募から面接までの各段階に即し、そのポイントを説明します。
未経験者が応募先を選定する時の押さえるべきポイント
希望の転職先を見つけたら、その会社のWebサイト(コーポレート)からまず情報を集めます。情報は履歴書・職務経歴書を書く際、自己PRのヒントになる情報を集めるのがコツです。特に下記の情報を押さえておくのがベターです。
- 応募先企業の技術レベル - 制作実績から推察しましょう
- どのようなクライアントのWebサイト制作を受託しているのか - 得意としてる業種を推察しましょう
- Webサイト制作以外にどんな事業を行っているのか - 社全体の方向性を推察しましょう
- 応募先の社風、企業理念、代表者挨拶、会社沿革 - 社員に何を求めているか推察しましょう
求人応募に関しては、以下のページで詳しく書いていますので、参考にしてみてください。
参考:求人応募は数より質 - 転職成功者は何社くらいの求人に応募している?
履歴書・職務経歴書の記述ポイント
2つの書類で重要なのは「志望動機」と「自己PR」です。その際、使い回しの志望動機と自己PRの記述は、絶対に避けましょう。必ず応募先に合わせて書くのがポイントです。応募先の事業内容、社風、企業理念などとピントのずれた志望動機や自己PRは、提出した時点で不採用になると言っても言い過ぎではありません。詳しくは、以下のページを参考にしていただけたらと思います。
参考:履歴書の見本 - 転職活動用の標準テンプレート無料ダウンロードあり
参考:職務経歴書の書き方 - 職務経歴書サンプル無料ダウンロード
志望動機
自分にとって、Webディレクターの仕事は何が魅力なのか、なぜ魅力に思うのかを訴えます。それを多少たどたどしくても自分の言葉で表現することが大切です。この志望動機に関しても以下のページで詳しく書いていますので、参考にしてみてください。
参考:Web・ゲームクリエイターの転職にふさわしい志望動機の伝え方とは?
自己PR
自己PRは応募先に関連した事項に即してPRするのがポイントです。「何をPRすればよいのか分からない」場合は、応募要件、求人企業の社風、代表者挨拶、会社沿革などをヒントにしましょう。
面接
面接まで進んだら、面接時の次のような質問に明確に答えられる準備をしておくのがポイントです。
- ■長く勤められるのか?
特別な事情で、すぐに辞める可能性があっても(そのような状況で転職活動してる人はなかなかいないと思いますが)、この質問には「長く勤めたい」とやる気をアピールするのがポイントです。
その根拠にできるのが応募先の社風、企業理念、代表者挨拶などです。採用担当者は採用した後に「長く勤めてくれるか」、「当社の社風に馴染めるか」などを勘案して採用するので、例えば「御社の社風のこういうところに共感しています」とアピールすれば、「なぜ長く勤めいたのか」の根拠を示すことになり、面接員に好印象を与える効果があります。 - ■どの程度仕事ができるのか?
企業人事部は、現場で「どんな人材が不足しているのか」を、確認してから採用活動をしています。このため、採用担当者は「この仕事ができそうか」と具体的な視点で面接しています。
したがって、未経験でもWebディレクターになりたいとの熱意のPRが重要です。応募要件に「未経験者歓迎」とあるので「私は未経験なので仕事ができるかどうかはやってみなければ分かりません」では話になりません。未経験だから真っ白状態であり、熱意があるので潜在能力が高い人材だと思わせる必要があります。 - ■なぜ当社に応募したのか?
この質問も、応募先の社風、企業理念、代表者挨拶、会社沿革を根拠に自分の思いを重ね合わせてアピールするのがポイントです。また応募先企業に少しでも共感、共鳴できる部分があればそれは立派な志望動機になります。
面接に関するノウハウは、以下のページも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
参考:いざ面接へ。事前に準備すべきこと、当日に確認すべきことを押さえよう
参考:面接の心得とは?面接担当者は、個性だけでなくあなたの社会性も重視する
まとめ
未経験からのWebディレクターへの転職活動は、未経験ならではの強みや可能性を売り込み、応募先の採用決定を促す活動です。「自分自身の売り込み」や「相手の意思決定の促進」などのコミュニケーション能力が高い人材は、どの現場に行っても活躍できる可能性があることを企業側は熟知しています。求人応募から面接までのポイントを踏まえ、未経験の強みをロジカルに売り込めば、転職成功の確率が高まるでしょう。
この記事を書いた人
2005年、キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)取得。マイナビクリエイターのキャリアアドバイザーとして、Web職・ゲーム業界はもちろんのこと、紙系クリエイティブ職なども含むクリエイター全般の転職を支援している。