チームを牽引するプロデューサーの職域は、新しい『ドラゴンクエスト』に関わることすべて ―― スクウェア・エニックス 三宅有氏インタビュー
誰もが知っている大ヒットゲームを多数生み出してきたスクウェア・エニックス。その会社がこの度募集しているのは、ゲームプロデューサーという職種。
ゲームプロデューサーが具体的にどのような仕事をしているのか、またどのような能力を期待されているのか。『ドラゴンクエスト』シリーズ製作チームのディビジョン・エグゼクティブである三宅有氏にお答えいただいた。
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次世代の『ドラゴンクエスト』をいっしょに作る人を探しています
―― 『ドラゴンクエスト』シリーズのプロデューサーを、募集するに至った背景をお聞かせください。
三宅氏:『ドラゴンクエスト』は2016年5月で30周年を迎えました。30年間愛してくださったユーザーの皆様に、「『ドラゴンクエスト』はますます元気です」ということをお伝えするため、今年はゲームに限らず、様々なイベントを開催し、また数多くの商品を展開してきました。引き続き、2017年に発売を予定しているシリーズ本編(※)最新作『ドラゴンクエストXI』に向かって、さまざまな展開をしていきます。
今回の募集に関して申し上げますと、実際に人手が足りないということもありますが、何よりも『ドラゴンクエストXI』が発売されるまでの激動を肌で感じ取り、大きな経験としてほしいという想いがあります。
私が『ドラゴンクエスト』の仕事に携わって、もう15年ほどになります。その間に『VII』〜『X』が発売されましたが、やはり本編が出たあとには、お客様の『ドラゴンクエスト』に対する感じ方・見方が変わっていきます。 本編発売後はチームに「やり切った!」という感覚が生まれる時期ですが、「次のステップに進む」という意味も含め、チームが変わっていく必要がある時期でもあります。次の『ドラゴンクエスト』がどういうものになるのか模索していくため、『ドラゴンクエストXI』の発売を経験できるこのタイミングで、新たな人材を募集することにしました。
※本編とは、『ドラゴンクエスト』〜『ドラゴンクエストX』、及びこれから発売される『ドラゴンクエストXI』を含めたナンバリングタイトルを指します。『モンスターズ』シリーズや『ヒーローズ』シリーズなどはシリーズ作品ですが、ここでの本編という言葉には含まれません。
―― 今回の募集はプロデューサーとなっていますが、求められるスキルは「運営」「宣伝販促」「映像」と、多岐にわたっています。実際に求められる役割は、幅広くなるのでしょうか。
三宅氏:ゲームプロデューサーの仕事は、企画を立てるところから始まり、最終的には販売するところまで、ゲームに関わるすべての仕事に携わっていきます。ですので、今回はあえて「ここまで」という線引きをせずに募集させていただきました。実際にプロジェクトに参加していただき、その方の適性や目指す方向性などを踏まえた上で、改めて職域を分けていきたいと考えております。
ちなみに『ドラゴンクエスト』に関しては、職務の分担はあまりしていません。ゲームの場合、大きなタイトルになりますと「権利処理業務」「イベント運営」などの各職域にそれぞれ担当者を置く形が一般的ですが、『ドラゴンクエスト』については、あくまで「プロデューサーがすべてを統括する」ようにしています。
── 実際の仕事はどのように進んでいくのでしょうか?
三宅氏:『ドラゴンクエスト』のプロジェクトでは、堀井雄二氏、鳥山明氏、すぎやまこういち氏、という核となるメンバーは1作目から変わっていませんが、開発スタッフはタイトルごとに違います。現在サービス中の『ドラゴンクエストX』は、オンラインゲームという特性上、社内で制作していますが、ほかのタイトルは基本的に、外部の開発会社やその分野が専門のスタッフの方といっしょに開発や運営を行っています。ですので、そういった外部の方としっかり連携してプロジェクトを進められることが大切です。
── プロジェクトチームの構成についてお聞かせください。
三宅氏:チームとしましては、『ドラゴンクエスト』シリーズの各タイトルを担当するプロデューサーが何人かいまして、そのプロデューサーの下にアシスタントが何人かいるという形になります。
宣伝を担当するチームはマーケティング部という別の部署に所属していますが、その中に『ドラゴンクエスト』の宣伝担当者が5〜6人います。また、作品に紐づく権利やクオリティを管理するためのチームも別に存在しますが、あくまでプロデューサーがすべてを統括していきます。
── 今回の募集では、宣伝や権利関係、クオリティ管理は別になるのですか?
三宅氏:いえ、それも含めてできる方を募集させていただいております。これまでは、タイトル発表前で商品名も出せないタイミングが多く、『ドラゴンクエスト』のタイトルを冠しての人材募集は難しい状況でした。そこで「新規タイトルのプロデューサー募集」や「新規タイトルの宣伝担当者募集」という形にしていたのですが、応募される方にしてみると「ピンと来ない」わけです。
新規タイトルという言葉だけでは、コンシューマーゲームに携わるのか、それともスマホアプリの担当になるのかさえも伝わりません。そういう経緯もありましたので、今回は『ドラゴンクエスト』チームでの仕事であることをハッキリとお伝えしたうえで、そのなかに幅広い業務内容があります、という形で募集させていただきました。
『ドラゴンクエスト』のチームは、ゲームのパーティそのまま
── 『ドラゴンクエスト』は御社にとって特別なタイトルだと思いますが、そのプロジェクトチーム内はどのような雰囲気でしょうか。
三宅氏:ゲームの雰囲気そのままですよ。
── というと、パーティを組んで…。
三宅氏:そうですね。仲間たちと一緒に冒険を楽しみながら、ひとつの目的にまっすぐ進んでいくあたりなんて、まさにゲームとそっくりです。プロジェクトチームが和気藹々としているのは、堀井雄二氏や鳥山明氏、すぎやまこういち氏のお人柄もあるでしょうね。
── 応募条件では、『ドラゴンクエスト』が好きで、詳しいということはマストでしょうか?
三宅氏:好きであったり、詳しいことが必要というわけではありません。ただ、まったく『ドラゴンクエスト』を遊んだことがないというのは、さすがに困るかもしれません。シリーズには多くのタイトルがあり、幅広く展開していますから「一切見たこともない」という方はいらっしゃらないとは思いますが…。
── ほかにプロデューサーに必要な条件はありますか?
三宅氏:プロデューサーという職務は、自分で何かを作るというものではありません。絵を描いたり、プログラムを組んだり、物語を生み出すことには専門家がいます。プロデューサーは、「こういうものを作ろう、こういう方向に行くとみんなが遊んでくれるぞ!」というビジョンを示し、それぞれのジャンルのプロを集めて座組みを作り、開発資金を集め、スケジュールを管理しつつ開発をし、完成したものを宣伝してお客様に買っていただく。ゲームにまつわるすべてがプロデューサーの仕事なのです。
ゲームは1人では作れないものですから、基本的にすべてがチームプレイです。チームをうまく動かし、スタッフに気持ち良く働いてもらえるような人であることは必要でしょうね。
── そうあるために、意識していることや注意していることはありますか?
三宅氏:あまり細かいことは言わないようにしています。できる人は言われなくても自ら動いてくれますし、人から言われてやることは身にならないと思っています。ゲームで「あれをやって、次はこれ」と指図ばかりされたら、あまりおもしろくないですよね。でも、「こっちかな。よし、俺が選んだぞ、こっちが正解だ!」と思うことができれば、やる気が出てくるのと同じです。
── 「俺がやった感」が出ますね。
三宅氏:まさに、そういう感覚で仕事を進めてもらっています。プロデューサーの仕事は、自由にできる部分も多いですが、チームに対する責任、会社に対する収支責任、また期待されているユーザーへの責任がありますので、その分大変でもあります。
── 配属先や業務内容は、希望が叶うのでしょうか?
三宅氏:「オリジナルのゲームを作りたい!」と思ったら、企画することもできます。それが立ち上がっていくかどうかは、本人次第ですね。
── 業務上の目標は、メンバーそれぞれが立てていくのですか?
三宅氏:当然、プロジェクトが立ち上がるときに利益目標は出しています。そこにきちんと到達することは大切です。ただし、エンターテイメントコンテンツというものは当たり外れがどうしてもあります。目標達成を目指していく日々の業務の中で、プロデュースワークがどこまでできているか、まわりの信用をどれだけ積み重ねていけるかという部分が重要だと考えています。
プロデューサーはゲームのイベントに積極的に関わることが大切
── 今回募集するプロデューサーに担ってもらいたい、広報・宣伝業務についてお伺いできますか?
三宅氏:マスメディアやオンライン上での宣伝も業務の主軸なのですが、オンラインでの運営タイプのゲームが増えてきている中で、逆にリアルなイベントが増えてきています。会場を借りてお客様を招くファンイベントや生配信によるイベントのほか、ゲームショー、雑誌主催のイベントなどもあります。また、ショッピングモールで土日にイベントを行うケースも増えてきています。こういったイベントが重要な宣伝の場になってきました。
── 実際に足を運ぶイベントが宣伝に?
三宅氏:かつてのイベントは「来てくださった方に楽しんでもらえれば終わり」でしたから、宣伝としては費用対効果が決して高いものではありませんでした。今は、お客様が「これおもしろかったよ」と、SNSを通じて拡散してくれますから、効果が2倍、3倍に上がっています。そういった意味で、来場された方に喜んでいただくことを一番の目標にして、イベントに多くの力を割いています。
── イベント会場にプロデューサーが行くこともあるのでしょうか?
三宅氏:もちろん行ってもらうことになります。ちなみに、夏に開催された『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』や『ドラゴンクエストミュージアム』も、企画段階からプロデューサーが関わっています。ドラゴンクエストのことがわかっているプロデューサーが中にいないと、判断が遅くなりますし、ドラゴンクエストが本当に伝えたいことが現場に伝わらず、クオリティも下がってしまいます。実際にゲームを作っているプロデューサーが現場に入って、一緒に作り上げていくことが重要と考えています。
── プロデューサーの受け持つ範囲は広いですね。
三宅氏:最近は海外に行くことも多くなりましたね。北米、欧州はもちろん、中国などアジアの国々に行くこともあります。海外で開催されるイベントへの出展はもちろん、各作品の発売日に合わせたイベントも展開しています。それらに参加し、自分たちの作品のおもしろさを世界に伝えていくこともプロデューサーの仕事になります。
── 今後のチームの目標をお聞かせください。
三宅氏:シリーズ誕生30周年を迎え、『ドラゴンクエストXI』が発売され、その後どういう状況になるのか…。もちろん、いろいろ考えてはいますが、実際のところは予測がつきません。前述のとおり、核となる堀井氏、鳥山氏、すぎやま氏はこれからも変わりませんが、開発スタッフ同様、プロデューサーも変わっていく必要があります。
現在開発中の『XI』は、若いスタッフに任せています。これからの『ドラゴンクエスト』を考えたとき、「より若い才能が、束縛されずに、新しいチャレンジをしていくべき」と考えています。新たな人材に加わってもらい、新世代の『ドラゴンクエスト』を作っていきたいですね。
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この記事を書いた人
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