奥田英朗『最悪』に颯爽と登場!『罪の轍』も『東京オリンピックの身代金』も『沈黙の町で』もここから始まったのだ!東野圭吾『白夜行』、高見広春『バトル・ロワイヤル』ほか、大名作が揃った2000年版『このミステリーがすごい!』 – むしきば.COM

奥田英朗『最悪』に颯爽と登場!『罪の轍』も『東京オリンピックの身代金』も『沈黙の町で』もここから始まったのだ!東野圭吾『白夜行』、高見広春『バトル・ロワイヤル』ほか、大名作が揃った2000年版『このミステリーがすごい!』

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このミステリーがすごい!(工事中)
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飛び道具だらけの個性勝負!大手版元は逃げ出して『バトル・ロワイアル』は太田出版から出版された! 2000年版『このミステリーがすごい!』 ベスト20

AIが作画を拒否します笑

対象は1998年11月ー1999年10月。2000年版という節目の年にまるでふさわしくなく、ミステリーのカテゴリーをまったく無視して、バラエティに富んだ顔ぶれとなりました。これぞ、このミス。例えば、特集「こうして作家になりました!」には、惚れてしまうほど、お美しい若い頃の岩井志麻子さんが出ています。16位の『ぼっけぇ、きょうてぇ』は第6回日本ホラー小説大賞の受賞作。なんと「全選考委員の絶賛のもと受賞」とあり、このミス内でもベタ褒めされています。

そして、2000年、このミスに衝撃を走らせたのが4位『バトル・ロワイアル』です。こちらは第5回日本ホラー小説大賞の最終候補作。令和になって、今さら内容はご説明するまでもないでしょう。「内容がアンモラル過ぎる」と嫌われ、佳作ももらえなかった曰くつきの作品となってしまいました。今は幻冬舎から出ているらしいですが、当時は太田出版というところが笑えます。

パラパラめくってみましたが、そんなに過激でしょうか?サカモチキンパツの「今日は、皆さんにちょっと、殺し合いをしてもらいまーす」の「“皆さん”が問題なだけ」だと思うんですが。もはや、コロナ禍を経た現実のほうが酷過ぎるので、判断能力が麻痺しています。こんなふうに風呂場でボロボロにしてしまった記憶が残っており、いまだ純粋にこの設定は面白いと思っています。


















東野圭吾の冷酷なまでの心を排した文章。「ひとつも心を打たない」は正解?超絶技巧が凝らされたノワールの大傑作『白夜行』

ほかでは、東野圭吾さんの2位の『白夜行』。これも今さらネタバレも何もないですが、この本を説明することはオチをそのまま書くこと。そんなことより、この大傑作は東野さんの精密機械のような冷徹な文章に尽きるでしょう。第三者の多視点で主人公ふたりの内面描写を一切省き、行動のみを書く。これが徹頭徹尾、貫かれています。「完璧だが、心をひとつも打たれない」というレビューを読んだことがありますが、確かにそれは当たっていると思います。しかし、そう思わせるのが、東野さんの狙いだったのではないでしょうか。なお、日本でドラマ化された時、何から何まであまりの酷さに笑った記憶があります。いま読み直しても色褪せない。映像化を拒む昭和なトラウマ本の金字塔といっても過言ではないでしょう。


















普通の小市民を軽やかにいたぶる筆は疾走感満点!我らが奥田英朗センセ―が二文字作品でブレイクしたのは、この年なのであーる

それにしても、この年は本当に異形だらけです。3位『亡国イージス』は福井晴敏さんの原点ともいえる海上自衛隊もの。文豪・桐野夏生さんの5位『柔らかな頬』は「謎のラスト」をご存知の方ならピンとくるはずですが、ちょうどこの頃からミステリーの枠組みには当てはまらなくなってきました。そして、10位『MISSING』の本多孝好さんといえば、さわやかなハートフルロマンス作家のイメージです。

こんなふうに、このミスの枠組みに微妙な変化が現れた中、我らが奥田英朗は7位『最悪』で颯爽と現れ、一躍脚光を集めます。もちろん、この出世作は3人の小市民を主人公に立てた群像劇。彼ら彼女らがドツボにはまって、徐々に行き場を失い、最後にプッツン。それをさらに容赦なく追い込み、人として狂うほど、運命を弄ぶアドリブ小説はそれくらいインパクトがありました。

本作は、ほんっと、身につまされるわ、感情移入しすぎるわの、登場人物と一緒になき、怒るクライム・ノベルの傑作なのである。

このミスのレビューアーも、後年の作風まで言い当てたような寸評をしていたほど。書かれた時代背景はだいぶ違いますが、破滅や悲劇が通り過ぎるだけ通り過ぎて、ようやく平穏が訪れる……奥田英朗の作風のひとつであるスラップスティックな疾走物語はこの時点で完成していたように思います。

過酷な運命に負けるな、小市民たち!偉才の手にかかれば、超地味なオッサンや兄ちゃん、姉ちゃんもムービースター級の主人公に!

あまりに地味な主人公3人をAIに描かせたイラストでかなり華やかにご紹介。

川谷信次郎は川谷鉄工所の社長。廃業した叔父から設備を譲り受け、地道に社歴を重ねること18年。しかし、自動車の部品などを請け負う製造業の末端であるが故、大企業の無理な注文や納期などに翻弄される毎日で、従業員も不法滞在のタイ人と半人前のふたりだけ。そのため、社長といっても、製造、納品、営業までひとりでこなしているありさまです。

藤崎みどりはかもめ銀行のいわゆる女子行員。ゴールデンウイークの社内イベントさえ断れないような支店で働いており、おまけにそのイベントで支店長に襲われかけたことを課長代理に相談すると、それをネタに支店長を蹴落とそうとする社内の権力争いの道具にされてしまいます。半沢直樹のような話をさらにコントのように誇張した設定はあまりに意地悪です。

野村和也はパチンコとトルエンの密売でしのぎ、昼から年上の女とのセックスにふけるチンピラもどき。ところが、ある日、友人のタカオと一緒に板金塗装会社から、タカオの先輩であるヤクザのワゴンを使ってトルエンを盗み出したところ、ナンバーを通報された落とし前に、組事務所で鉄拳制裁。そして、盗んだトルエンの売値分の450万円を要求される自業自得キャラです。

「新機械→融資→“銀行”←450万円←トルエン」

このようにざっと展開を描くことができますが、そこは奥田小説、途中から着地点はまったく不明です。といいますのも、火を付けるのは脇役だからです。例えば、藤崎みどりの妹がグレ始めるのは、話が無軌道に突っ走り始めるきっかけのひとつ。このほかキーになる人間関係がいくつかあって、展開はかなりスラップスティック。淫乱女の描写、暇でやることのない老人、古い劇画漫画のような激安ヤクザなどは、奥田さんが後年に生み出す傑作の下地になっていることに気付かされます。

『最悪』……当時はいかにもそっけなく、地味に映った作品名も、今となっては二文字タイトルは直木賞作家の代名詞です。ちなみに、本書の冒頭には工場経営の窮状や連鎖倒産、外国人労働者の実情について、リアルな描写があります。奥田さんは令和のいま、日本がこんな『最悪』な状況に陥っているとは思ってもいなかったでしょう。どうせ腐り切った令和なら「バブル崩壊後、間もなく」と「今」では、どっちがマシなのか比べるのも一興かもしれません。奥田英朗、このミス初登場作は今こそ読まれたい一冊です。

※これで奥田英朗という人の魅力が一発でわかる?

※大出世作『最悪』と『東京物語』について☟

このミス1位の冠というのは直木賞より遠いらしい…奥田英朗のブラックな筆致が際立つ『邪魔』がぶっちぎりに面白い2002年版『このミステリーがすごい!』このほか、青春小説の大傑作『東京物語』が誕生!レコードコレクターでもある直木賞作家はハードロックにもプログレに精通しており、なぜか「ヘビメタ」という呼称問題にも詳しいようです笑
宮部みゆきのぶっちぎり!しかし、そのほかは先鋭的で尖った異形がめじろ押し!2002年『このミステリーがすごい!』ベスト2...

二文字作品の第3弾!奥田文学の金字塔『無理』について☟

2010年版『このミステリーがすごい!』は『最悪』『邪魔』に続く奥田英朗が打ち立てた金字塔、令和ディストピアを予言したような怪作『無理』がぶっちぎりの面白さ!このほか、ウサちゃんが「このラビッチめ」とピストンする哲学書『ジョニー・ザ・ラビット』が躍る!
現代の予言書とも言うべき不穏な傑作が多数!2010年版『このミステリーがすごい!』ベスト20!! 順位 作品名 著者 1...

平成の家族シリーズ『家族日和』『我が家の問題』『我が家のヒミツ』☟

ロックンロール作家・奥田英朗は「平成の家族シリーズ」第1弾『家日和』で柴田錬三郎賞を受賞!ピンサロのドストエフスキーこと、飯野文彦の『バッド・チューニング』、黒川博行の大阪ポリス・ノワール『悪果』、霞流一のバカミスの金字塔『夕陽はかえる』など超強力ラインナップの2008年版「このミステリーはすごい!」
1~3位は1点差のデッドヒートという史上稀に見る大混戦!でも、毛毬ちゃんが突っ走る桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』は『私の男』...
水川あさみで有名なNHKのあのドラマがこの作品だ!!ロックンロール作家・奥田英朗は「平成の家族シリーズ」第2弾『我が家の問題』を刊行!野村周平主演で映画化された『純平、考え直せ』もこの年だった!人間のエグみを煮詰めたような沼田まほかるの『ユリゴコロ』、月村了衛の大人気シリーズ『機龍警察 自爆条項』、高野和明のコロナ時代の予言書『ジェノサイド』が存在感を放つ2012年版『このミステリーがすごい!」
2012年版 このミステリーがすごい!ベスト20 対象は2010年10月ー2011年11月。心にまったくゆとりがなかった...
お涙頂戴上等、これが佐藤仁美主演のNHKドラマ作品だ!ロックンロール作家・奥田英朗の平成の家族シリーズ第3弾『我が家のヒミツ』は浅田次郎ばりの大感動路線!広末涼子がいっぱい入っていてエロかった『ナオミとカナコ』もこの年だぞ!そして、2016年版『このミステリーがすごい!』では、役所広司の無残な水死体で有名な柚木裕子の暴力ハードボイルド『孤狼の血』が誕生する!!
もう肩書や勲章はいらないのでしょうが、米澤穂信さんが初の2年連続戴冠という快挙を達成したのはこの年でした!2016年版『...

コロナ禍に発表された異質のハートフル・ファンタジー『コロナと潜水服』☟

『罪の轍』『リバー』と超大作を続けて執筆しながら、奥田英朗がコロナ禍にプレゼントしてくれたのは、なんと驚きのファンタジー傑作選『コロナと潜水服』だった!2022年版『このミステリーがすごい!』は月村了衛が生んだ現代の予言書『機龍警察 白骨街道』が日本の、世界の闇を炙り出す!
令和ディストピアが現実のものに…東京オリンピックの年、生活圏から地上に建っている書店が消えた……2022年版 このミステ...

珠玉のエッセイ集『どちらとも言えません』『野球の国』『田舎でロックンロール』☟

中田翔よ、思い切って「中田勝男」に改名しろ!大阪桐蔭の初代卒業生である天才・今中慎二が臨時コーチとして立ち上がり、大将と根尾と飯を食う!中日ドラゴンズのファンは奥田英朗の『どちらとも言えません』における指摘を優勝祈願として読むべし!『罪の轍』や『東京オリンピックの身代金』の作者はNumberで連載を持つほどのスポーツ通なんだぞ!
コロナ禍に小説を読んでいて「濃厚なディープキスの描写がなくなってしまう!垣根涼介はどうするんだ!」と思ったのは、私だけで...
🤖『罪の轍』『東京オリンピックの身代金』の奥田英朗が注ぐ中日ドラゴンズと中村武志への深い愛に感動!タケシ、起亜タイガースの契約が終わったら、監督やらなけりゃ、ダメだ!ぶち抜きの面白さを誇る『野球の国』は珠玉の野球いっかんエッセイ!偉才の小説が断然おもしろくなる一冊です!
奥田英朗は何度読み返しても面白い!氏が敬愛なさっていた山田太一さんが亡くなり、エッセイで尊敬の念を綴った文章に読みふけっ...
📻ライブアルバムの頂点を極めたLOVEBITESの「Knockin’ AtHeaven’sGatePart II」!!この超名盤をRainbowの初来日公演を目撃するなど、70年代を知り尽くす直木賞作家・奥田英朗の名著「田舎でロックンロール」の文脈で紐解く!~しながわロックラジオ【LOVEBITES ライブ感想】
Asami Christmas Live 2023が終わって押し寄せるリアル過ぎる記憶、そして、なぜか宇宙と哲学者・中沢...

東京オリンピック作品 第2弾『罪の轍』について☟

これで4位とは奥田英朗はとことんツキがない!東京オリンピック時代作品 第2弾『罪の轍』が強烈な2020年『このミステリーがすごい!』
懐かしい名前が見られる一方で、オジサンは完全に乗り遅れていると実感……新旧の傑作が揃った 2020年版『このミステリーが...

WOWWOWドラマ化作品『真夜中のマーチ』☟

IT長者へ向けた奥田英朗の猛毒が炸裂!玉山鉄二がヨゴレに挑んだWOWOWドラマ作品『真夜中のマーチ』が登場!2004年版『このミステリーがすごい!』のデッドヒートを制したのは、叙述のミステリーの金字塔!歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』だった!
21位以下に錚々たる名前がズラリ!天才クリエイター・戸梶圭太の2作と鬼畜バカ・小川勝己は文句なしに面白い!2004年度版...

※最新作『リバー』について書いています☟

異才・呉勝浩が生んだぶっとび令和ディストピア!最強のサイコ野郎のクイズ爆破予告が怖い『爆弾』に圧倒される2023年版『このミステリーがすごい!』あと、奥田英朗の『リバー』についてです。2024年版ですが、米澤さん?京極さん?Twitterで1位はだいたい予想がついちゃいました笑
『同志少女よ、敵を撃て』は掛け値なしの傑作!もう現実を無視して読むことは難しいのかもしれませんが、永遠に読み継がれてほし...

※奥田作品の中でも屈指のバッドエンドと最悪の読後感『沈黙の町で』☟

長澤まさみ出演映画やキムタクの大根作品の原作が登場する中、予定調和のように訪れる究極のバッドエンド……奥田英朗が大問題作『沈黙の町で』を朝日新聞出版から発表!2014年版『このミステリーがすごい!』では、絶対零度の死神・千葉が帰ってきた!伊坂幸太郎『死神の浮力』の温もりあふれる筆致は感涙ものだぞ!
2014年版 このミステリーがすごい!ベスト20 1位 ノックス・マシン 法月綸太郎 2位 教場 長岡弘樹 3位 ブラッ...

※奥田ブンガク史上、最もお下劣な大傑作『ララピポ』

いったい誰が森三中の村上知子をヨゴレにしたんだ?奥田英朗が史上最低のお下劣本『ララピポ』を発表!東野圭吾、原尞、藤原伊織の名作が世を席巻した当たり年、2006年版『このミステリーがすごい!』では、麻耶雄嵩が少年少女のための児童文学に爆弾を放り込む!ザ・トラウマ本『神様ゲーム』が誕生だ!
2006年版『このミステリーがすごい!』ベスト20! 対象は2004年11月ー2005年10月。この年はとにかく傑作揃い...




 

 




 

 




 

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