Rietty
「今回は記事にするのは難しいだろうな…。」
という一抹の不安。
予想は見事的中した。
なにしろ、「観森」代表の野田和規氏はつかみどころが無さすぎる。
あまりにも捕まえられられなくて、もしかしたら実体もないのではないかとすら思ってしまう。
まあそれは言い過ぎにしても、言いかえるとすると宇宙人なのだ。
かといって、ミステリアスという表現は当たらない。
基本明るいし、表面的には軽く見える。
これも言い過ぎか?
いやだって、「Riettyさんを必ず甲子園に連れていきますから!」などと、訳の分からないことを突如言い出したりするのだ。
初めて出会った2年半前。蝶ネクタイで現れた彼は、人懐こい笑顔でずっと目をキラキラさせていた。
なんてチャーミングな23歳男子なんだ!と、この時思った。
う〜む。
この笑顔に惑わされるのだ…。
困った…と頭を抱えたくなるが、取材したからには記事にしなければいけない。
だから書こうと思う。
ということで、筆者を大いに困惑させている今回の主人公は『観森』代表の野田和規氏である。
昨年12月に『Expedition 地球のエッセンシャルワーカーズ』全100PあまりのVolume 00を「観森」のフリーペーパーとして世に出した。
企画・撮影 野田和規(ノダカズキ)
企画・編集・撮影 安田祐太郎(Andy)
デザイン イガラシモエ
素人だというふたりの写真は、観る者を強く惹きつける。
Instagramに投稿される写真もそうだ。
被写体はいつも神秘性を滲ませている。
けれども何かを狙っているようには思えない。
モノや事象の表と裏、そのモノ単独だけではない美しい関係性を表現しようとしている。
そして野田氏は飄々と面白く言う。
「僕、しゃべり担当ですから。」
たしかによく語る人だ。
大学生時代、ラジオパーソナリティーをしたり、芸人を目指したりしたこともあるらしく、人に刺さる言葉選びが上手な人だ。
しかも魅力的な文章も書く。
そんな野田氏のシャッターを押す手は、被写体にも語らせてしまうのだろう。
必然的に彼のファンは多くなる。
Instagramのフォロワーさんも多くいる。
でも気をつけよう。
それに感心しすぎて油断してしまってはいけない。
野田氏は軽く楽しい口調で話しながらも、ふいを突くように真理を語りだしたりする人だからだ。
ここで野田和規氏の基本情報を〜
・ 佐賀県出身の25歳。
・ 愛媛大学農学部入学、「水」の研究を志すも1年足らずで中退。
・ その後、土・気象・海など、自然全体・地球への果てしない興味を持つようになる。
・ のちに『観森』のビジネスパートナーとなる安田祐太郎氏(Andy)と出会う。それぞれに役割分担がある。野田氏は向いていることしかしない。「探究・発信・人と会うこと」担当。Andy氏はウェブと野田氏のやらないこと全てを担当。野田氏はAndy氏をベストパートナーだと言う。
・ 2020年に白老町へ移住、地域おこし協力隊の森林ガイド枠で起用される。
・ 2022年は、野田氏&安田氏の強みを発揮する大きな飛躍の年となった。それが『観森』である。
思えば、筆者が野田氏と出会ったのは、2020年の5月だった。
共通の友人と有珠のツアーに参加してくれた(筆者はガイドもしている)。
フィールドでの彼は、常に素敵な発見をするためにワクワクしながら歩いている。
いつかのInstagramで書いていた文章が印象的だった。
「『今日も世界は美しかった』と言える1日を過ごす繰り返しのみが人生の豊かさを作っていく。」
そう、野田氏の素敵な発見とは、モノを通して見る世界の美しさなのだ。
観るもの、手にするもの一つ一つに目を輝かせ、心から喜んでいる姿に惹きつけられた。
一瞬で人を惹きつける野田氏を、共通の友人は「人たらし」と呼んでいた。
まさに言い当てた表現だと思う。
そもそも『観森』とは何か?
読んで字の如く森を観る行為なのだけれども、彼らの観ているものはあくまでも『美』。
世界の『美』である。
それは時に色彩美であり、時に造形美でもある。
では『美』とは何か?
野田氏の言葉を借りれば『洗練されていること』。
では『洗練されていること』とはどういうことか?
それは『原理原則に基づく法則性があり、秩序が存在し神秘性があること。』だと野田氏は言う。
そして、それは自然であるか人工であるかは問わないと言う。
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「たとえ原生林ではなくても、人工林も好きです。野生種でも品種改良された種でも、洗練されているものは等しく美しいと思っています。」
そう言われて思い当たることが多々あった。
筆者は野田氏と何度かフィールドワークをしたことがあるのだが、モノの観方が非常に独特だ。
まさに色彩と造形に囚われる。
そしてその時の目はうっとりとして、明らかに興奮状態になる。
ところがだ。
なぜか執着しない。
瞬間で絶頂に達し、すぐに興味は他へ移る。
単に飽きっぽい?
いや違う…。
いっときは興奮を与えてくれた個体に集中するが、それだけに心はとどまらない。
その個体を通して環境全体を観て知ろうとしている。
どのように洗練されていったかを知ろうとする。
みえない部分に興味がシフトしてしまうのだ。
故に目の前の個体には執着しない。
「森を観ることって、関係性を観ることだと思っています。だから、個体を通して全体を知りたい。知るために、五感と経験と知識を駆使して掘り下げていく作業は実に楽しい。その繰り返しのなかで美しいものを観るようになると、結果、もっと美しいものを観られるようになる。世界が複利的に美しくなっていくんです。それを多くの人と分かち合いたい。発見と体験こそが人生の価値だと思うから。」
ほらね。
こんな風に、ふいに真理を突いてくる。
つまりは、自然界はもちろんモノごと全てにその存在の理由があるということだ。
だから野田氏は原理原則にこだわる。
神秘性に魅了される。
そしてこんなことも言った。
「人間は地球の癌のように扱われることが多いですが僕はそうは思いません。人間がいたからこそ存在を守られた種もあるから。外来種を否定する風潮も、感情論での論争も、視野が狭いのでは?と思います。まずはFactを知らないとね。僕たちが大好きなお米が属するイネ科も、歴史の過程で草食動物の大部分を絶滅に追い込んでいますが、イネ科は現在多くの生命を支えていますしね。」
ほらまた。
でも、たしかに!
さて、話を戻さないと。
今回の取材は筆者自身のコントロールが難しい…。
『観森』で何をしようとしているのか?
「『観森』は、森を観ることを通して世界を美しくしたいと思っています。知識は世界をより美しく立体的にしてくれるから。世界を地球と言い換えると、地球上の自然を森の植物から観ようとしています。僕らはフィールドワーカー&自然の語り部として、美しいものをずっと追っていきたいし、伝えていきたいと考えています。同時に勉強はずっとし続けるので、当然体験を重ねればアウトプットのHow toは変わっていくとは思います。でも、根源的なアクションの動き(歩く・しゃべる・読む)は変わらない。『観森』は、美しく、面白く、自然を伝えていく存在でありたいと考えています。でもね。極論、僕らが好奇心を持って面白がってアウトプットしていることを、対象者も面白がってくれれば実はそれで満足なんです。」
植物から観ようとするのは何故か?
「植物は世界の下部構造だと思っています。身の回りの科学や哲学、建築、気候や、エネルギー問題まで植物が関与しています。この世界のことで植物が関係していないことはほとんどありません。植物をよく観察し学ぶこと。こうすることで僕たちが生きている世界はいかに神秘的で美しいのかを、様々な分野で植物は教えてくれます。」
なるほど。
至極納得。
そして同意。
では具体的にどんな活動を行なっているのか?あるいは目指しているのか?
「自分の発見や驚きをアウトプットすることで価値にしたいと考えています。一言で言えば「自然を伝えるメディア」です。今後の活動としてはこんな感じです。」
1. メディア事業
ポットキャスト:現在週2で配信。観森に一番合っていると思っていると自己分析している。
2. 出版
Vol.1を出版する。クラウドファウンディングで資金を集める予定。
3. 展示
京都芸術大学にて3回/年
4. 物販
笹のバスソルトなど
5. 地球の美、神秘・原理原則を伝える
ガイド1~2本/月・ワークショップ1回/月
なるほど。
野田氏の取り留めのない話を聞いている時、いつもなにやら核心をはぐらかされているように感じていたが、こうして言語化することで『観森』の世界観をだいぶ理解できてきた気がする。
それは、実は筆者自身が「観森」ファンでもあるから喜ばしいことでもある。
最後に〜
野田氏の口から何度も出た言葉『美しさ』『原理原則』。
それは、回数を数えればよかった!と思うほどだった。
彼は森だけではなく町にいてもきっとそれを追求して歩き、徹底的に観てそのバックボーンを知ろうとするのだろう。
そのための好奇心はとどまることなく、その瞬間感じた好奇心に素直に反応し探究をし始める。
「わかることが増えるとその分わからないことが増えていきます。自然界は人間を謙虚にするように設計されている気がします。死ぬまで森に入るたびに発見があると思うと感謝ですし、楽しくて仕方がない。」
今日もきっと野田氏はどこかで何かを発見し、感動し、探究して『美』の蓄積をしているのだろう。
Andyとノダカズキが営む『観森』の今後のアウトプットに乞うご期待!
―観森 情報―
編集部のライターとして月に2~3回ほど、皆様のお目にかかることになりましたRiettyです。
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