『心の中の小さな夢』に辿り着く 〜おにぎり屋 『tanto』 店主 加藤 朋香氏の新たなみち | 食べる | Rietty | 北海道洞爺湖周辺の情報共有サイト「むしゃなび」

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『心の中の小さな夢』に辿り着く 〜おにぎり屋 『tanto』 店主 加藤 朋香氏の新たなみち


「ぜんぶ一個ずつください!」
思わずそう言いたくなる優しい三角のフォルム。
おにぎりほど心を温めてくれる食べ物はないと思うのです。


幕別町出身 加藤朋香さん42歳。ちょっぴりキリッと優しい笑顔が素敵な方


長年、看護師として旭川・札幌で勤務し、旦那様の転勤により室蘭に移住されました。
室蘭に来られてからは、看護学校の教員免許を取得、8年間教鞭を執っていらっしゃったそうです。


「私、気持ちのON/OFFが下手なんです。強制的に環境を変えないとスイッチの切り替えがうまくできない。それは夫も同じだったので、年に2回くらいは旅行に行き、大好きな洞爺にもよく来ていました」。


ロゴのモチーフにもなっている大好きな風景

そんな平穏な暮らしが続いていたある日、世界的に訪れたコロナ禍。
「大好きな旅行も外出もままならなくなる中、授業の準備のための自己研鑽に励んだり、仕事を家に持ち帰ったりしているうちに、心身のバランスを崩してしまいました。心も閉ざしがちになってきた時、生き方・働き方の見直しもしたくなり、40歳を機に看護学校の教員の仕事を辞めてしまったのです。本当は夫婦共に変化を好まない性格なのですが、この時ばかりは何だか仕事にも燃え尽きてしまっていました」。
以前の記事にも書きましたが、コロナ禍を経験して、生き方の方向転換をされる方を多く見てきましたが、加藤さんご夫婦もまた同じでした。


「おにぎり屋さんを始めたくてお仕事を辞めたのではないのですか?」


「それが違うんです。洞爺へはよく来ていたので、財田米が美味しいことはよく知っていました。 “ このお米でおにぎり屋さんをやってみたい “ それは、看護師時代から漠然とした夢として心の中であたためていました。 ところが仕事を辞めることを決断したある日、” おにぎり屋さん、本当にやったら? ” って急に夫に言われたのです。 ビックリしました」。


看板制作は、朋香さんの最大の理解者「美術部部長」こと旦那様の作品。


旦那様に背中を押され、なんとなくその気になってしまった朋香さん。
でも、この時点ではまだなんとなくでした。
それが大きく動いたのは、「このお米でおにぎり屋さんをやりたいな」。と心密かに思うきっかけとなった大好きな財田米の生産者である塩田さんのお宅のお隣の土地と出会った時でした。

「退職後、洞爺への移住を考えて物件探しをしていたところまでは、おにぎり屋さんになる決断をしていたわけではありませんでした。洞爺湖の穏やかな景色が好きで、のんびり過ごしたいと思っていたのです。夫もまた仕事が忙しいため、洞爺でOFFになる時間を持ちたいと思っていました。ところが、塩田さんのお隣の土地に出会ってしまったのです。しかも、そのタイミングでNHKの番組に映る塩田さんの仕事風景を拝見しました。そこには地元の子どもたちと田植えをし、学校給食にそのお米を提供し、食育に関わっていらっしゃる様子が映し出されていました。財田米の生産者さんのお隣の土地に家を建てると決めたところで、 " もうやるしかない!! " と本気モードにスイッチが入りました。もしかしたら今の場所に移住を決めなければ、おにぎり屋さんはやっていなかったかもしれません。ここならば始める条件は揃っている!と思い、本気でチャレンジする気になったのです。そのくらい、何ていうかその時の出会いには運命を感じました。心が決まったあとは、各種準備をどんどん進めていきました」。

「お隣さんになった塩田さんご一家には、それ以来本当にお世話になっています」。
と朋香さん。


お隣に住む財田米の生産者さん 塩田さん夫妻もゲスト出演♪


こちらの2種類のお米に加え、国産の雑穀米も使用しておにぎりは握られています。


というわけで、朋香さんの心の中で温めていた小さな夢は、旦那様に背中を押されたことで実現への道を歩き出しました。
そして2024年4月18日、テイクアウト専門店のおにぎり屋『tanto』はOPENしました。


「物件が決まったところで、全く畑違いのお仕事をされていたわけですから、OPENまでの準備は色々大変だったのではありませんか?」


「はい。商工会主催の創業セミナーに参加して、起業の基本を学んだり、おにぎり食べ歩きの旅に出たりもしました。東京では、浅草の「宿六」さん、大塚の「ぼんご」さん、米どころ新潟へも出かけました。何軒かのおにぎり屋さんで食べ歩きながら、ワンオペで営業をする自分が無理なくできるためにはどうしたら良いかを研究し、安心安全で、心身がよろこぶ味の研究も重ねました」。


ワンオペのため、動線を考え抜いた設計になっている厨房。そして、手前に映るカーテンには朋香さんを心から応援する旦那様の想いも隠されていました。筆者のお気に入りの一枚です。


実は、加藤さんご夫婦は室蘭と洞爺湖の2拠点生活をされています。
最初に書いたように、ON/OFFの切り替えが苦手だというご夫婦なので、tantoの営業は木〜土として、他の平日は朋香さんも室蘭で旦那様と一緒に生活をし、週末は旦那様が洞爺で生活をするというスタイルをとりながら、スイッチの切り替えをされているそうです。
けれども、旦那様は朋香さんの背中を押しただけではありませんでした。


「美術部部長と呼んでいる夫は手先が器用で、デザインセンスもあるのです。ですから、看板から名刺・ショップカードまで色々作ってくれているんです。私にはそういう才能がないので、とても助かっています」。


厨房と店舗を仕切るカーテンのこちらのデザインは、美術部部長である旦那様が消しゴムハンコを彫り、ここに押してくれたものです。厨房に立つ朋香さんを見守っています。


こちらの看板も美術部部長作。


「それはとても心強くありがたいですね!ところで、前職の経験が今に生きていることはありますか?」


「はい。あります。健康と食の関係についてですが、食べることを大切にしている人は元気になる!ということは看護師時代から患者様を通して感じていました。
ですから、お客様にたくさん食べてほしいという想いから、店名は「たんと召し上がれ」という意味を込めてtantoと名付けました。ちなみにイタリア語のtantoも「たくさん」という意味なのだそうです」。


「食材へのこだわりと具の種類を教えていただけますか?」


「お塩は洞爺湖町の事業者さんが作られているミネラル豊富な釜焚自然塩を使用しています。梅干しも洞爺湖町産のもの、豚汁で使用する野菜は近郊で採れたものを使用しています。海苔は今は瀬戸内海産を使用しています。具の材料はできるだけ近隣のもの、あるいは道産のもの、なければ国産のものを使用します。具の種類はその時々で変わりますが、平日はだいたい5~6種類を30個くらい、土曜日は7~8種類を60~80個くらいご用意しています。フードロスを避けるため追加をしない売り切りのスタイルをとっていますので、早い時間になくなってしまうこともあります。その時はごめんなさい」。




「では、最後に伺います。おにぎりと共にお客様に伝えたいメッセージはありますか?また、これからどんなお店に育てていきたいですか?」


「お店は細く長く、一人でできる範囲で続けていきたいです。看護師からの転身ですが、とても充実感がある毎日を過ごしています。思い切って始めて本当に良かったと思っています」。


「tantoはテイクアウト専門店ですので、お客様にはおにぎりと共に穏やかな気持ちを持ち帰って欲しいと考えています。私自身がここの景色と人と美味しいお米に救われたように、お客様にも、この風景とともに楽しんで癒されていただきたいと思っています。徒歩1分のところに洞爺湖小公園もあります。敷物の貸し出しも行っておりますので、ぜひ美しい洞爺湖畔でおにぎりを頬張ってください」。

心の中であたためていた小さな夢。
「このお米でおにぎり屋さんをやってみたいな♪」

朋香さんの中の小さな夢が、何気なく口をついて出て、その想いが現実となり、大好きな洞爺湖で叶うまでのみちのりには、最大の理解者であり美術部部長でもある旦那様の後押しと、周囲の人たちの協力がありました。
おにぎり屋 tanto は、これからも美しい洞爺湖とともにここにあり続けることと思います。



―おにぎり屋 tanto 情報―

北海道虻田郡洞爺湖町洞爺町 150-3
営業日:木・金・土
営業時間:11時~売り切れまで
*変更の場合はInstagramにてお知らせします

Instagram :https://www.instagram.com/tanto.toya?igsh=cm80dnFsb2U1dnk4


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編集部のライターとして月に2~3回ほど、皆様のお目にかかることになりましたRiettyです。
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