心の伊達市民 第一号
奥京都の旅(2)・・・・舟屋の宿
レンタカーはAさんの予算の関係で、小型の日産マーチだった。
まあ2人だけなので狭くはないが、乗り心地は悪い。
とりあえずは「間人」に向かう。この単語は私の書き間違いではない。
間人を読める人はかなりのグルメで、これは「たいざ」と読み、ズワイガニのブランド地名である。
Aさんは「間人でズワイガニを食べよう」と言うので、私は大賛成だった。
一般道は降り止まぬ新雪で、どこまでが道路か分からず走り難い。
間人は京丹後市にあり、漁業が盛んである。京丹後に近付いて来た頃から、雪が激しくなって来た。
道路も新雪で車での走行が難しくなり、時間も掛かるようになった。
Aさん計画の「間人でズワイガニ」を食べさせるような店を探したが、全く見付けられない。
やっと見つけた店は予約が必要で、しかも料金が3万2400円と聞き、びっくりして先を急ぐ。
雪がドンドン酷くなり、見学どころでなくなる。
日本海の荒波が押し寄せる。
昼飯を食べる店も見付からず、Aさんは「伊根町へ行ってから食べよう」と言う。
伊根町は間人から、雪が無ければ40~50分の距離である。
ところが雪がドンドン降って来ていて、除雪もまだしていない。途中で車が雪に嵌って動けなくなった。
向こうから来る車を避けるために左側に寄ったら、新雪で車の下がつかえてしまったのである。
雪の中の郵便配達はご苦労さま。片足をついていないと転倒する。
仕方ないので運転をしない私が車から降りて、手で車の下の雪を掻き出す。
シャベルなどの道具が無いので、なかなかうまくいかない。
それでも格闘10分、やっと車は動けるようになった。昼飯を食べていないし、寒いし、私はヘトヘトになった。普通は1時間も掛からない距離を、2時間以上も掛かってしまった。
やっとの思いで伊根町に着いて、観光協会で食事処を訊ねた。
高台から見た舟屋群。わずかに霧が薄くなった瞬間に撮影した。
観光協会の人の答えに、あんなに落ち込んだことはない。
「この町には食事処はあまり無りません。しかも今日は火曜日なので、みんな定休日です」。
私は聞いた。「ではコンビニのある場所を教えて下さい」。
観光協会の係員「この町にはコンビニはありません」。
ここへ来るには鉄道は無いので、バスか自家用車でしか来られない。コンビニも無いほど俗化から縁遠い町に来られたことに感謝しなければならないのかもしれないと昼飯は諦める。
10分おきぐらいに天候が変る。雪がかなり降って来た。
伊根町は舟屋で有名である。伊根湾を囲むように舟屋が200軒以上も並んでいる光景は、絶好の写真の題材となる。しかしこの日は大雪で、観光協会のある高台からは舟屋は殆ど見えない。
しばらく我慢して待っていたら、少し雪が小降りになって来た。
そこですかさずカメラを構える。それも数分のことで、また見えなくなった。
伊根湾に沿って舟屋が続く。
寒いし腹は減るので、宿に入ることにする。
宿は舟屋を改造した造りなので、間口は2間ほどで1階は調理場、風呂場、トイレ、食堂があり、2階部分が客間となっていて3部屋ある。
私は「Aさんはイビキが凄い」と知っているので、私は彼から一番離れた海側の部屋にする。
真向かいに舟屋群が雪の簾を通して、ボンヤリと見える。「いいなー!、これぞ日本の原風景だ!」と思わず声が出る。
過去の津波でも1階が浸水した程度の被害なので、この建物が残っている。
(おまけの話)
この宿は「鍵屋」という名で、女将さんは話し上手で私の質問に親切に答えてくれる。
亭主は50歳前後で、京都の料理屋で18年間も日本料理の修業をしたそうで、彼も話好きである。
1日に1組しか宿泊をさせない宿なので、この日は我々2人だけの贅沢な旅館である。
亭主は町興しにも熱心な活動をしているようで、「この風景を壊したくない。外部資本を入れたくない。カラオケ屋など作らせない。地元の人達が潤うような観光地にしたい」と熱心に語っていた。
舟屋の隙間から見える私達が借りたレンタカー「マーチ」。
夕食の料理はさすがに京都の料理人が作るだけあって、上手で美味しい。
田舎なのに京都仕込みの料理が出て来るので、味も良いし、見た目も美しい。
新鮮な魚を多く使っていて、刺身、煮もの、焼き物と全て良い。
最後にブリの「しゃぶしゃぶ」が出た。久し振りに豪華な日本料理のフルコースを食べた。
舟屋の1階は船や漁網などを入れておく倉庫になっている。 ここから直接、海に船を出せる。
食事を終っても、話好きの夫婦と延々としゃべっていたが、さすがに疲れた。
女将さんが「明日の朝は漁船が漁に出るところを写真に撮ったらいいですよ」と教えてくれた。
「漁が終って漁船が港に戻る時に、有線放送でパートの女性に手伝いに来るように放送しますから、漁港へ 行って撮影するのも良いですよ」と教えてくれた。
部屋に戻ったら夜中にトイレに起きることも無く、そのまま朝まで寝てしまった。
夜になっても明りの灯る舟屋は少ない。(高感度で撮影)
北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。
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