島耕二「末は博士か大臣か」
楽しい佳作。63年、大映東京。阿佐ヶ谷にて「稀代のエンターティナー! フランキー太陽傳」特集。
プログラムピクチャアの範囲内で、だからホームランは打たないが、こつこつヒットを飛ばすイチロータイプ? 島耕二は、もっと評価されていい。
知っている人は知っている島耕二。映画監督としては、8、9割?の高打率。
本作もたいへん楽しい。
そして島耕二映画のお楽しみは、あの二人を、どう使うか、というおまけの楽しみがありまして。
二度目の実の妻・轟夕起子は、きっと聡明で明朗な、ある種理想的な婦人だろう。
実の息子・片山明彦は、頭はいいが、やや根が暗く、そういう意味で主人公と対比される役柄だろう。
本作も、まさにその通りの楽しさで。
フランキー境が、菊池寛にふんし、学友・船越英二や、芥川龍之介(ちょっと色悪めいているが、ほぼほぼジャストフィットな?仲谷昇)との友情物語が泣かせる。あるいは、大いに笑わせる。
大映初代社長の伝記映画を大映が作る。文芸春秋を創設し、友人芥川の名を冠した文学賞を作る山っ気。
この頃は、寄る年波か、あるいは劣化したゆえの涙目状態なので、チョットしたことで泪目(泪は、おそらく和製漢字なのだろうが、まさにドンピシャ)になる。本作でも、たいしたことない場面でも、泪目状態。
そう、たいしたことない場面で、本領を発揮するのが、プログラムピクチャアの魅力なのだ。
新妻・藤村志保と、戯曲「父帰る」の、読み合わせをする場面の楽しさ。
やや、舞台調を模した画面に突如変化し、最初はたどたどしいセリフの志保(一応素人の役だから)が、だんだん女優のせりふ回しになっていく。
シーンの要請によって、適切に歌舞いていく、つつましいが、やるときにはやるよ、という島耕二の楽しさ。
ただ、執筆当時は「新しい芝居」らしい「父帰る」も、現在の視点からみると、相当古色蒼然たる紋切型で。
これはある意味仕方がない。その後多数の模倣者が出れば出るほど、「原点」は陳腐化していく。「最初の開拓者」は、常にそのフォロワーたちによって、上書きされ、「原点の栄光」など摩滅していく。
「父帰る」は陳腐化したが、本作は、今でも、楽しい。
なお冒頭旧制とはいえ、中学生を演じるフランキーと船越は、相当無理やり(笑)。これを見たら、鈴木清順「けんかえれじい」の旧制中学生高橋英樹が、ナチュラルに見えるほど(笑)。
●島耕二・片山明彦の代表作
【KSM】風の又三郎 原作 宮沢賢治 監督 島 耕二 1940年(昭和15年)日活多摩川作品 著作権消滅 編集 KSM WORLD
●こんなところにも菊池寛が。しかし新人オーディションの拍付けとしては、なんという豪華なメンバー!
【KSM】坊っちゃん 原作 夏目漱石 1935年 宇留木浩 著作権解除作品 P. C. L映画製作所
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by mukashinoeiga | 2016-09-26 07:01 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Comments(2)
フランキー、船越英二主演島耕二監督作品では、「ラーメン大使」が印象に残っています。中国から戦争中に日本の軍人から母親が親切にされた恩返しにやって来るフランキーの主人公が「王」さんで、そのフランキーを何かにつけ面倒を見る船越英二の警官が「長島」さんだという安直なネーミングからしてうれしいですね。
ふふふ、わたしは島耕二には、甘いですからねえ。森一生にはない、島耕二の甘さが好きなんだと思います。
「ラーメン大使」は見てないので、まあフランキーはともかくとして、船越ファンとしては、いつか見てみたいものです。 昔の映画