命日の黒沢明と加藤泰
本日9月6日は、黒沢明の命日である。
すべからく数字に疎いわたくしが、なぜ黒沢の命日を覚えているかというと、仲間たちの愛称クロさんが、9・6(クロ)に、亡くなったからである。
語呂のいい日、というのも不謹慎だが、まあ、語呂のいい日に亡くなるのも、一種の才能であろう。ちなみに9月5日は、原節子の命日とのこと。
今日の直前に、フィルムセンターの加藤泰特集が、終了した。
ぼくの見に行けなかった日の回の一つが、
1 剣難女難 第一部 女心流転の巻/潛水艦/羅生門[予告篇] (フィルムセンターHPより)
潛水艦(18分・35mm・白黒)
1941(理研科学映画)(監・脚)加藤泰通(監)西尾佳雄(原)八木保太郎(撮)笠間公夫(音)永岡研介
加藤が初めて監督した作品だが、映画法下で監督として登録されていなかったため、クレジット上では西尾佳雄が演出となっている。海軍省後援による宣伝映画。劣化の激しかった既所蔵16mmプリントから復元した35mmプリントによる上映。
羅生門[予告篇](2分・35mm・白黒)1950(大映京都)
製作時ファースト助監督だった加藤が作ったとされる予告篇。本篇にないショットが追加撮影された。神戸映画資料館所蔵35mmプリントからの複製。冒頭が欠落している。
剣難女難 第一部 女心流転の巻(70分・35mm・白黒)
1951(宝プロ)(監)加藤泰(原)吉川英治(脚)木下藤吉(撮)藤井春美(美)北川弘(音)髙橋半(出)黒川弥太郎、堀正夫、林加壽惠、阿部九州男、市川春代、加賀邦男、春日あけみ、寺島貢、川喜多小六、澤村國太郎、東龍子、香川良介、尾上菊太郎
加藤の長篇デビュー作。加藤が少年時代に夢中になった、伊藤大輔ら無声期の時代劇の爆発的なアクション描写がふんだんに盛り込まれた快作。原作は、戦前に発行された国民的大衆雑誌『キング』に連載された吉川英治の出世作で、臆病な青年武士が死地から生還して成長する教養小説。第一部・第二部共に神戸映画資料館所蔵16mmプリントからブローアップして作製したニュープリントによる上映。(以上引用終わり)
これに対して、下村健さんツィッターが、
フィルムセンターの加藤泰特集で上映されている助監督時代に編集した黒澤明監督『羅生門』の予告篇は冒頭が欠落しているが、あれ、フィルムセンターの所蔵プリントに欠落があるだけで。完全版が残っていない訳ではない。(以上引用終わり)
ということで、これが、それ。
★羅生門 予告篇★
◎追記◎上記shimomovieさんの画像は、直接当ブログに張り付けられないので、画質は悪いが、下記の冒頭一発目は、同じ予告。ただし、上記にある日本語字幕が、下記では一切排除されている(あとから、TV局が付け加えたと思しい字幕は、論外だが)。この字幕こそ、加藤泰がつけたものか。
予告自体は、ストレートな情念の人間ドラマが身上の黒沢映画の予告としては、いろいろ小細工に走っている気がする。
SAMURAI MOVIE 【Akira Kurosawa&Toshiro Mifune】Trailer Compilation◆黒澤明&三船敏郎 侍映画予告集PT1
猫のアップや、蛇?は、ホンペンで見たこともないので(蛇はいまいち確信ないが)加藤泰の追加か。といってもはるかかなたに見たきりだけれども。
ぼくのあやふやな知識によれば、「羅生門」で、助監督加藤泰は、監督黒沢明を批判して、仲が悪かった、という。
フィルムセンター版は、神戸映画資料館所蔵35mmプリントからの複製というが、まさか、あの大映にグランプリ映画の予告編がないわけがないが、考えてみれば、イチ助監督風情が本篇にないショットを追加撮影した予告を、黒沢天皇(笑)が、許すはずもなく、加藤版予告ネガは、縦にカットされたのだろう(笑=推測)。でも、まあ、各種デジタル素材に残っているので、それも、ないか。
加藤泰の、黒沢明に対する感情は、ある種の近親憎悪なのかもしれない。
オーヴァーアクト気味の、感情表現。エモーション過剰な表現。
土砂降りの雨が大好き。
意志の強い女性も大好き。
夏といえば、登場人物全員の顔が、汗まみれ。
斬られて、血がビューッ、も大好き。
ただし、黒沢明「椿三十郎」の、白黒画面で文字通り噴出する血の美しさに比べ、カラーで、ペンキそのままの血のりが、しょぼしょぼ出る加藤泰の血がビューッ、は、はっきり言って、美しく、ない。血のり勝負では、完全に加藤の負け。
似た要素が多い分、自分の好みから1ミリ違うだけで、近親憎悪、ということじゃないかしら。
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by mukashinoeiga | 2016-09-06 23:11 | 黒沢明 黒い沢ほどよく明か | Comments(0)