2024年06月03日
仕事ができないときの対策は?双極性障害の方が長く働き続けるための職場選びがポイント!
目次
双極性障害は、躁うつ病と呼ばれることもある精神疾患の一つです。双極性障害の方は、気分の波が影響して、仕事が順調に進まないことや、就業が続かないといった問題に直面してしまうことがあります。
ここでは、双極性障害の方は仕事上のどういった場面で困ることがあるのか、どういった対策が必要なのか解説します。長く続けられる職場の探し方、就労移行支援機関の使い方についても合わせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
双極性障害(躁うつ病)とは
双極性障害とは、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気です。
躁状態になっているときは活発で活動的であり、うつ状態になっているときは憂うつで気分が落ち込むことが特徴とされています。双極性障害の方は気分の浮き沈みが大きい傾向にあり、考え方や行動が不安定になることで、日常生活や社会生活に支障をきたす病気です。
また、双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、躁状態とうつ状態を繰り返す場合はⅠ型、軽躁状態とうつ状態を繰り返す場合はⅡ型に分類されます。軽躁状態と躁状態は症状の度合いが異なり、躁状態は入院を必要としない程度であることがほとんどです。
双極性障害の主な症状
双極性障害の方は、躁状態とうつ状態を不定期に繰り返すのが特徴です。症状が現れる間隔に共通した特徴はなく、精神面、体力面における負担が原因になって躁状態もしくはうつ状態に切り替わる場合もあります。
双極性障害の症状が現れているときに見られる症状は、例えば以下の通りです。
【躁状態のときに見られる症状】
- 睡眠時間が短くても平気になる
- 買い物やギャンブルなどに散財してしまう
- やたらと口数が多くなる
- 根拠のない自信に満ちあふれる
【鬱状態のときに見られる症状】
- 一日中、気分が落ち込む
- 物事に対して興味がなくなる
- 何をしても楽しめない
双極性障害は症状の一部が発達障害、うつ病などの精神疾患と似通ってみえることがあることから、双極性障害が発達障害、うつ病などと誤診されるケースがあります。
双極性障害の方が仕事をするうえで困ること
躁状態とうつ状態の症状が不定期に現れることから、双極性障害の方は就労するにあたって以下のような困りごとを抱えやすい傾向があります。
【双極性障害の方が仕事をするうえで困ること】
- 躁状態のときの立ち振る舞いで人間関係を悪化させる
- 躁状態のときに仕事のペース配分が偏る
- うつ状態のときに仕事に行けなくなる
- 躁状態やうつ状態が切り替わることで仕事が長く続かない
双極性障害では、気分の波のために就業に影響がでることを最小限にすることが重要です。治療は服薬や心理療法も併せて行われます。特に、躁状態の時期は、調子よく感じられるため、服薬などの治療が中断してしまい、結果として症状が悪化するケースが多々あります。
そのためには、セルフモニタリングが重要です。躁状態では、どんな行動がでやすいか、躁状態となる予兆となるようなサインはないかをしっかりと把握しましょう。また、うつ状態は、どのような状況になりやすいかなどについて理解しておくと、症状が出現した際に早期に対応しやすくなります。
双極性障害の方が仕事ができないは間違い!
双極性障害を発症すると仕事を続けづらくなると考える方がいるかもしれませんが、実際には治療を継続しながら就業している方も多くいらっしゃいます。
ご自身の特性に合った職場を選び、継続的な服薬や通院などの治療を実践することが、仕事を続けていくポイントです。
双極性障害の方が仕事を続けるうえで気を付けていること
双極性障害の方が仕事を行ううえで気を付けていることは以下の通りです。
【双極性障害の方が仕事を続けるうえで気を付けていること】
- 薬をきちんと飲み続けること
- 無理をしすぎないこと
- 通院を欠かさないこと
- 規則正しい生活を送ること
- 健康的な食事をすること
- 適度に運動すること
双極性障害は再発のリスクがあり、治療には継続的な服薬、カウンセリングなどを続けることが必要とされています。
表面的には寛解したように見えても、長時間勤務や過重労働などで生活リズムが乱れると再発することがあるため注意が必要です。
継続的な服薬と通院を行い、規則正しい生活と、無理をしすぎないよう自分に合った就労環境の仕事を選ぶことが、双極性障害の方が仕事を続けるためのポイントだと考えられます。
双極性障害の方が職場を探すときのポイント
双極性障害の方が働きやすい職場を探す際には、ご自身の障がい特性を適切に理解し、障がい者雇用枠やオープン雇用、クローズ雇用などのシステムを理解していることが大切です。
就労にあたってどのような配慮を必要とするか、障がいの有無を勤務先に開示するかによって、働きやすい職場の探し方は異なってきます。
障がい者雇用枠も検討する
医療機関で双極性障害だと診断された場合、診断内容と障害者手帳の有無を勤務先に開示するかどうかはご自身で判断できます。
【雇用枠の選択肢】
- 障がい者雇用:障害者手帳を保有している方が対象の雇用枠
- 一般雇用(障がいオープン):障がいがあることを開示して就職する
- 一般雇用(障がいクローズ):障がいがあることを開示せずに就職する
一般雇用で障がい内容をオープンにして働く場合、障害者雇用促進法に基づいて就業時間の短縮、調整といった合理的配慮を求めることができます。
なお、一般雇用枠においては配慮の範囲や考え方が企業によっても異なるため、一般枠では必ずしも望む配慮が十分に得られるとは限りません。
障がい者雇用枠を利用する場合、就職後に面談の機会が設けられるので、仕事に関する困りごとを相談しやすい環境が整えられていると言えるでしょう。
一般雇用で障がいの有無を開示せずに働く場合は、障がい内容に関する合理的配慮が受け難いため、症状が不安定な時期には心身に負担がかかるリスクが否定できません。主治医に相談しながら検討を進めると良いでしょう。
また、障がい者雇用枠を利用するには障害者手帳が必要です。双極性障害である場合、精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
働きやすい環境が整っているか
双極性障害の方である場合、勤務体系を柔軟に調整できる、または過剰な時間外労働がない企業だと規則的な生活リズムで勤務でき、働きやすい環境が整っていると考えられます。
【双極性障害の方が働きやすい環境例】
- 働き方に柔軟性がある
- 過剰な時間外労働や休日勤務がない
在宅勤務や時短勤務など多様な働き方に対応している企業の場合、自身の体調に応じて過重な負担がかからないように勤務体系の調整を受けられる場合があります。
従業員のメンタルヘルス対策に取り組む企業は増加傾向にあり、企業内に相談窓口を設置している企業も増加傾向。厚生労働省が令和2年に実施した「労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス対策に取り組む企業の割合は61.4%、事業所内に相談体制を整備している企業の割合は50.7%です。
常勤従業員が50人以上の事業場である場合は産業医の選任が義務付けられているので、産業医に健康相談を行うことも選択肢に入ってきます。
また、障がい者雇用を専門とする転職エージェントや就労移行支援機関などでは、就職後の面談、相談窓口の設置などの定着支援を提供しているところもあります。
自身の障がいの特性について説明できるようにしておく
双極性障害は症状の現れ方に個人差があり、症状が悪化する周期や原因などが一定しない精神疾患です。
そのため、就職活動に向けた準備として、どんな状況でストレスを感じやすいか、どんな作業が負担になるのかなどの自己理解を深めることで、能力を発揮しやすい職場を見つけやすくなるでしょう。
ご自身の障がい特性に応じた適職を見つけるためには、障がい特性、必要な合理的配慮について具体的に説明できるかどうかポイント。障がいに関する理解・配慮が手厚い企業で働くことにより、仕事を長く続けやすくなる可能性があります。
ご自身で自己理解を深めることが困難だと感じる場合には、後述する就労移行支援機関を活用することも選択肢の一つです。
双極性障害の方が利用できる就労支援
双極性障害の方が就労を目指すにあたり、生活面および就業面における困りごとの相談に対応しているサービスは多数存在します。
支援内容は機関によって異なりますが、求人紹介や職業相談、相談支援などを受けることが可能。ここでは、双極性障害の方が利用できる就労支援の概要、サービス内容をご紹介します。
【双極性障害の方が活用できる就労支援】
- 就職移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- ハローワーク
- 転職エージェント
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に基づいて運営される施設。令和2年時点で全国に3,301ヵ所の事業所があります。一般就労を希望し、適性に合った企業での就労を考えている方を対象としたサービスを提供します。就労移行支援事業所は就業に向けた職業評価、定着支援を専門に行う機関です。
【就労移行支援事業所で受けられる支援内容】
- 一般就労への移行に向けた作業及び実習
- 関係機関との連携による職業紹介や求職活動支援
- 就労後の職場定着支援
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害者支援機構が運営する機関で、全国47都道府県に設置。就労を希望する方を対象に、職業評価・職業指導などを実施することが地域障害者職業センターの主なサービス内容です。ハローワークと連携することで専門的な職業リハビリテーションを実施しており、利用者は職業評価から定着支援まで支援を受けられます。
【地域障害者職業センターで受けられる支援内容】
- 個人の状況に応じた職業リハビリテーション計画の策定
- センター内での作業体験や職業準備講習などを通じた職業準備支援
- 精神障がいの方に向けた総合雇用支援
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは都道府県知事が指定した法人によって運営される施設で、令和4年4月1日時点で全国に338ヵ所設置。就職を希望する、もしくは在職中の方を対象として、就業面および生活面における一体的な支援を実施する施設です。
障害者就業・生活支援センターでは就業面と生活面でそれぞれ専任の支援担当者が配属されており、安定した職業生活の実現に向けた支援を受けられます。
【障害者就業・生活支援センターで受けられる支援内容】
- 就業に関する相談支援
- 関係機関との連携による求職活動支援
- 日常生活および地域生活に関する助言
ハローワーク
ハローワークは国が運営する機関であり、就職困難者を対象として就職支援を実施する役割を担っています。令和4年4月1日時点で544ヵ所存在しており、職業紹介、雇用保険、雇用対策を一体的に実施する機関として運営。ハローワークには障がい者雇用を取り扱う専門窓口が設けられており、就職から定着支援まで一貫した支援を実施しているのが特徴です。
【ハローワークで受けられる支援内容】
- 履歴書作成や面接対策などの相談対応
- 一般枠及び障がい者枠の職業紹介
- 職業訓練の受講案内
転職エージェント
障がい者向けの転職エージェントでは、カウンセリングによる職務適性の分析、障がい特性に応じた合理的配慮が受けられる求人紹介などのサービスを受けられます。転職エージェントによる求人紹介サービス利用に際しては、障害者手帳が必要です。
障がい者雇用を専門とする転職エージェントでは、障がい内容に対する理解・配慮がある求人紹介を複数取り扱っており、仕事が続きやすい職場探しのサポートを受けられるのが特徴。採用が決まった後の定着支援として、勤務先との情報交換や労働者への相談対応などを実施しているところも複数存在します。
【転職エージェントで受けられる支援内容】
- 希望条件や障がい特性に応じた求人紹介
- 応募書類の作成および面接対策
- 採用後の定着支援
まとめ
双極性障害は躁状態とうつ状態を不定期に繰り返す精神疾患で、躁状態の度合いに応じてⅠ型とⅡ型に分類されます。就労にあたっては、躁状態やうつ状態の際に、症状が仕事に影響する場合があるため注意が必要です。
双極性障害は、治療を継続しないと非常に再発リスクが高い疾患ですが、適切な通院や投薬治療をすることによって双極性障害の症状を十分にコントロールできるケースは多くあります。
就労を目指す際には、生活リズムやストレス対処といった自らの管理を行うことに加え、双極性障害の症状に対する理解・配慮がある企業を探すことが、安定して働き続けられるポイントだと言えるでしょう。
【本記事監修者】 佐々木規夫 産業医科大学医学部医学科卒業。 |