「レジェンドホラー映画祭」で『イット・フォローズ』が上映!宇野維正がホラー映画界の“いま”を分析|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「レジェンドホラー映画祭」で『イット・フォローズ』が上映!宇野維正がホラー映画界の“いま”を分析

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「レジェンドホラー映画祭」で『イット・フォローズ』が上映!宇野維正がホラー映画界の“いま”を分析

現在グランドシネマサンシャイン 池袋にて開催中のホラーファン必見のラインナップを連日上映する「レジェンドホラー映画祭」にて、『イット・フォローズ』(14)の上映とトークショーが11月9日に行われ、映画ジャーナリストの宇野維正が登壇した。

姿かたちを変えてゆっくりと迫ってくる“それ”の恐怖を描いた傑作ホラー『イット・フォローズ』
姿かたちを変えてゆっくりと迫ってくる“それ”の恐怖を描いた傑作ホラー『イット・フォローズ』[c] 2014 It Will Follow. Inc.

「レジェンドホラー映画祭」は、11月15日(金)に入選上映会が開催され、翌11月16日(土)に授賞式を行う「第3回日本ホラー映画大賞」授賞式のプレイベントとして、日本ホラー映画大賞とMOVIE WALKER PRESSのホラー特化ブランド「PRESS HORROR」との共催で行われている映画祭。11月8日の初日にはオープニング作品としてジェームズ・ワン監督の『インシディアス』(10)を上映。「レジェンドホラー映画祭」から「第3回日本ホラー映画大賞」授賞式まで計9日にわたり、ホラーファン必見のラインナップを揃えている。

「第3回日本ホラー映画大賞」11月15日(金)に入選上映会、16日(土)に授賞式 が開催!
「第3回日本ホラー映画大賞」11月15日(金)に入選上映会、16日(土)に授賞式 が開催!

この日上映された『イット・フォローズ』は、「日本ホラー映画大賞」選考委員の宇野維正の推薦作。続編の進捗も報道されるなか、製作10周年にあたるタイミングでの久々の劇場上映となる。「画質がよかったし、すごくおもしろかった!」と大満足の宇野は本作を選んだ理由について「高校生の息子から流行っていると聞いて。受け継がれている感じがする」と明かす。10周年という節目であること、昨年、続編『They Follow(原題)』の製作がアナウンスされたことも選考理由だと話した。続編の注目ポイントとして「いまA24以上に勢いのある(独立系映画製作・配給会社の)NEONが作るということ。監督、主演が続投、全部揃った」とニヤリ。前作の主人公ジェイ役のマイカ・モンロー、メガホンをとったデヴィッド・ロバート・ミッチェルの続投は特にうれしいことだと強調し、「潤沢な予算、映画賞に強いNEON、オリジナルの監督と主演。こんなに揃う幸福な続編ってありますか?」と大喜びだった。

【写真を見る】「第3回日本ホラー映画大賞」選考委員の宇野維正が『イット・フォローズ』の続編への期待を語った
【写真を見る】「第3回日本ホラー映画大賞」選考委員の宇野維正が『イット・フォローズ』の続編への期待を語った

『イット・フェローズ』はミッチェル監督の2本目となる長編映画。1作目は『アメリカン・スリープオーバー』(10)で、3作目は『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18)だ。「約4年おきに撮っている。今回一緒に選考委員を務めている清水崇監督のように、ホラーばかり撮る人と、ホラーも撮るよって人がいるけれど、デヴィッド・ロバート・ミッチェルは後者」と解説。宇野自身は後者タイプの監督が撮るホラー作品に惹かれがちだとし、「デヴィッド・ロバート・ミッチェルのホラーはこれ(『イット・フォローズ』)だけ」とピックアップし、「プールに浮かぶブロンドに対する訳のわからない執着がある」と指摘。『アンダー・ザ・シルバーレイク』では「メインの役じゃないのに、ポスターに登場させている。すごい作家だけど、ヤバいなって感じ」と笑うと、会場にもどっと笑いが起きる。また、「もうホラーは作らないのか」と思った矢先での続編の製作にはテンションが上がったとも話した。

FBI捜査官が奇怪な殺人事件に挑む『Longlegs』
FBI捜査官が奇怪な殺人事件に挑む『Longlegs』[c]Everett Collection/AFLO

さらに「今年もっともヒットしたホラー映画がNEON配給の『Longlegs(原題)』。『イット・フォローズ』のマイカ・モンローが主演で、(世界興収は)1億ドルを超えている。インディペンデントのバジェットで作った映画」と紹介し、2024年最大ヒットのホラー映画の主演となったモンローが続投する『イット・フォローズ』の続編への期待度の高さを念押ししていた。ちなみに『Longlegs』については「『羊たちの沈黙』以来のシリアルキラー・ホラーと言われていますが、びっくりするくらい黒沢清監督の『CURE』を思い起こさせる内容で。あれって1997年の作品。つまり30年近く経って黒沢清が最前線ってことになった」と持論を展開した。この日上映した『イット・フォローズ』については、日本のホラー映画の影響も受けていると解説し、「住宅街のどよんとしている感じが作品の雰囲気を決めている。予算がないから人がいないではなく、そもそもの大前提。絶望感が作品を決定づけている」とも補足した。


2014年以降のヒットホラーとしてA24製作、アニャ・テイラー・ジョイ主演、ロバート・エガース監督の『ウィッチ』(15)、トニ・コレット主演、アリ・アスター監督の『ヘレディタリー/継承』(18)などを挙げた宇野は、「『ヘレディタリー/継承』がヒットした時に、“アート系ホラーが来ている”みたいな記事が出た。当時はトランプ政権下だったから、みんなが不安に思って、不安が反映された作品がヒットしている、みたいなことも言われた」と続け、「なにが言いたいかというと、トランプ政権2期目なので、ホラー映画は安泰です」と笑顔を浮かべる。原作がない映画で当たるのはホラーだけとも話し、2024年以降のホラー映画界は、しばらくいい話で持ちきりになりそうだとも予想していた。

「レジェンドホラー映画祭」はグランドシネマサンシャイン池袋にて11月14日(木)までおすすめ作品を上映!
「レジェンドホラー映画祭」はグランドシネマサンシャイン池袋にて11月14日(木)までおすすめ作品を上映!

「レジェンドホラー映画祭」は現在、グランドシネマサンシャイン 池袋にて連日開催中。本日11月11日18時30分~は『ザ・チャイルド』(76)の4Kリマスター版を推薦人・清水崇監督登壇のトークショー付きで上映する。さらに、12日(火)は『みなに幸あれ』(23)、13日(水)が「第1回日本ホラー映画大賞 受賞作上映会」、14日(木)が「第2回日本ホラー映画大賞 受賞作上映会」と、いずれも目が離せない上映ばかりだ。

取材・文/タナカシノブ

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