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心臓部はF20C改GTX4202タービンで1000馬力に到達
200メートルを5.5秒で駆け抜ける実力
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ハチロクはアメリカでも販売されていたため、向こうでもポピュラーな存在だ。とはいえ、北米仕様に搭載されていた4A-Gエンジンは、当時のカリフォルニア州の排ガス規制に対応するためパワーダウンされ、最高出力は最上級グレードの『GT-S』でも112hp(113ps)と、実は日本仕様の128hp(130ps)よりもローパワー。これは、現代のチューナーにとって頭の痛い問題である。元々低いパワーを引き上げるには、必要以上に費用が掛かってしまうからだ。
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そこで、仲間内から「ミスター・カローラ」と呼ばれるジョン・ラサコフは、彼自身の所有するAE86にS2000のF20C型エンジンをスワップ。ストック状態で250psを発揮するため、さらなるハイパワーも、よりローコストで追い求めることが可能となった。
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F20Cの搭載にあたってはエンジンベイの一部を大胆にカット、クロモリ鋼管で製作したクロスメンバーとフロントストラットマウントが組み付けられている。
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もちろん、タービンやインタークーラーのレイアウトもオリジナルで、ステンレス製のEXマニ、マスタング用75mmスロットルボディを組み付けたサージタンク、右のフロントフェンダーから直接アウトレットされるダウンパイプなども、全てジョン自身の手で製作されている。
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そして最高出力。超大型のGTX4202タービンを回し切ることで繰り出されるパワーは、なんと1000ps! レブリミットも11000rpmに到達している。その馬力が嘘偽りないことを証明する数値として、ドラッグレースの1/8マイル(日本風に言うと0-200m)のタイムは5.5秒、到達速度は約209キロと、とてつもない速さを記録している。
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外装への拘りも凄まじい。大半の部品をUSDMで賄い、ボディ重量を約907kgまでダイエットした完全なるレーシングマシンではあるが、あくまで見た目はカローラと分かるようにするのが彼の主義だ。1986年のマイナーチェンジを境に前期“Zenki”と後期“Kouki”に分けられるハチロクだが、こちらはフロントバンパーが後期仕様で、チンスポイラーが前期仕様のニコイチとなっている。
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ホイールは、ドラッグやダートオーバルで有名なウェルドレーシングの15インチ。タイヤにはミッキートンプソン製のドラッグ用を組み合わせる。
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前後サスペンションやリヤアクスルは、ストレンジ・エンジニアリング製のドラッグ用パーツを使ってファブリケート。当然ブレーキも強化されており、リヤには4ポットキャリパーが2個取り付けられ、シフターの横にあるハンドレバーで操作する仕組みになっている。
リヤセクションに設置された燃料タンクももちろんオリジナル。燃料ポンプにポルシェ用を流用したのがちょっとしたアイディアだそうだ。
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室内も刺激的だ。ロールケージはNHRA(ナショナル・ホットロッド・アソシエーション)のレギュレーションに合致させた逸品。シートやステアリング、ハーネスなどはスパルコ製だ。とにかく真っ直ぐしか走らないドラッグレースの特性に合わせた極太のリヤアンチロールバーが、室内側にマウントされているのも面白い。
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ハルテック製ECUは剥き出しのドラッグ用5速ミッションの上に置かれ、車速や回転数を瞬時に確認できるオンダッシュディスプレイも装備する。
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非常に多くのショップがしのぎを削るアメリカで一目置かれる存在となるためには、「エクストリームなクルマ」の存在は必要不可欠。そして注目を浴びるために最も手っ取り早い手段は、やはりレースで勝つことだ。ただそれだけを目指した究極のAE86、ハンパではない。
Photo:Akio HIRANO TEXT:Takayoshi SUZUKI
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