ヤマハのスポーツネイキッドモデルであるMTシリーズ。688cc並列2気筒エンジンを搭載したMT-07はミドルクラスを任されたオールラウンダー的キャラクターを持つモデルです。
大型自動二輪免許を持っているもののMT-09では扱いや置き場などを考えると大きすぎる、かといってアンダー400クラスのMT-03では少々物足りないと考える方も多く、そのようなライダーにはドンピシャに当てはまる一台。
そんなMT-07にじっくりと乗ってみたら他のMTとは結構違う性格をしており、個性的な一面も持ち合わせていたのです。
今回はMT-07に注目し、どのようなモデルなのかを探っていきます。
目次
日本の道路事情を考えるとミドルクラスはベターマッチですよ!
昭和を振り返れば日本国内ではナナハン(750cc)が国内最大排気量だったこともあり、平成になり大型自動二輪免許が教習所で取得できるようになってからはリッターバイクブームが訪れたこともあります。それらの歴史的背景も踏まえ人によって尺度が異なることもあるためエンジンの排気量で区分けするのは少々曖昧な部分もあるのですが、僕の場合は600cc~1000cc以下のエンジンを採用したモデルのことを大抵”ミドルクラス”と呼んでいます。
大型自動二輪クラスではあるものの割と扱いやすいパフォーマンスを持たされておりかつ手を出しやすい価格帯、そして普通自動二輪クラスと比べると圧倒的に上回るパワーを感じることもできます。
ミドルクラスは多くのライダーが、“楽しい”、“気持ちいい”と思えるスイートスポットを生み出しやすく、そのようなこともあり各メーカーから多くのモデルが生み出されています。
MT-07はというと、ほぼ並行して開発が進められていた兄貴分のMT-09からやや遅れる形で2014年に初代モデルが登場。MT-09と比べると軽量かつコンパクト、価格も抑えられていることから人気を二分し、兄弟合わせて大ヒットモデルとなりました。
ただ初代モデルから感じていたのですが、MT-09はファンバイクではあるのですが潜在的なパフォーマンスが高く持て余してしまうようなこともあるのに対し、MT-07は正真正銘の手足感覚をもたらしてくれ、それが日本のストリート(公道)でのライディングにとてもマッチしているということでした。
”軽い” + ”楽ちんポジション”!でもやんちゃなキャラクター!!
実は今回MT-07をヤマハさんにお借りしに行くのに、別件で借用していたMT-09 SPに乗っていき、それと入れ替えという流れになりました。
一週間ほど乗り回していたMT-09からMT-07へと変わり、まず感じたのは圧倒的な軽さです。現行型MT-07の車両重量は184kgで、対してMT-09 SPは194kg。10kgの差は大きく感触が異なります。
ハンドル幅も狭く、手前(ライダー側)に引かれたセットポジションなのでいたって楽ちん。
クランクシャフトを270度位相とした不等間隔の燃焼タイミングで設計されている並列2気筒エンジンのやや残された鼓動感との組み合わせは、どことなくオフロードバイクを操る感覚にも通じるものがあると思えます。
スロットルワークだけでポンポンフロントタイヤは空に浮きますし、2速落としでリヤタイヤのハーフロック(グリップとスリップの中間状態)なども楽しめる。やんちゃなキャラクターはめちゃめちゃ楽しく、車重もエンジンの吹け上がりもMT-09より軽い分とっつきやすいのです。
「これはいわゆるスーパーモタードモデルのソレなのではないか!!」などとヘルメットの中でガハガハと笑いが止まりません。
生物のような艶めかしさと未来感の融合!デザインはMTシリーズの中でも特異!!
MT-07は2014年に登場した初代、2018年に2代目、2021年に3代目とモデルチェンジが行われ現在に至ります。
初代、2代目と異形シングルヘッドライトでしたが、現行モデルはプロジェクターライトを中央にその左右に面発光LEDライトをレイアウトしているため、ひと目で違いが分かるのは大きなポイント。このヘッドライトスタイルにより近未来感が強く押し出されているのですが、一方で燃料タンクカバーなどを見ると柔らかなスタイリングラインが用いられており、それらが有機的に合わさっていることが伝わってきます。
全体的なボリューム感は下位モデルにあたるMT-03/25に近く、それでいながらも高級感があるデザインとなっているのは、MT-07の大きな魅力となっているポイントの一つです。
ただ今年登場した新型MT-09のフロントマスクは、アイアンマンを連想させるものとなっていることもあり、今後はMT-07、さらにそれ以下のMTシリーズも新型MT-09に沿った雰囲気に変更されることも考えられます。
グイグイ前へと押し出すパワフルエンジン!扱いやすくも刺激的な出力特性も魅力!!
MT-07に搭載されている「CP2エンジン(クロス・プレーン・ツイン)」は、実はネオクラシックモデルのXSR700やフルカウルスポーツモデルのYZF-R7、そしてアドベンチャーモデルのテネレ700などでも使われているものです。
これがどういうことかと言うと、幅広いジャンルのバイクに使えるために徹底的に懐を深く設計しているということに繋がります。
1990~2000年代におけるスポーツバイクの4気筒エンジン全盛期は、いかに高回転域までストレスなく吹け上がるか、それがニアリーイコール的に最高出力などにも通じていたわけですが、工業製品開発におけるテクノロジーの進歩は過剰とも言えるほどのパフォーマンスとなりつつあり、その一方で世の中の潮流が”テイスティ”路線に変わりつつなっていった結果が、元気の良いトルク感や気持ちよく走らせられるギリギリのパワーなどで設定した新たなミドルクラス2気筒エンジンの開発に至ることとなりました。
だからMT-07だけでなく、このCP2エンジン搭載モデルはどれもいたって快活な走りを楽しめることで定評があるのです。
ただ軽やかに吹け上がりますがレッドゾーン突入の頭打ちは早く、胸のすくような加速を求めるよりは、低回転域でバンバン走らせる方が似合っていますね。
体格差問題を差し引いても、あつらえたかのようなジャストフィット感!
先述したようにMT-09 SPから乗り換えたので最初こそコンパクトな印象がありましたが、毎日乗っているうちに、まるで自分の体に合わせて作られたかのようなフィット感だと思ってきました。
まず足つき性が良いです。なので車重も軽いので跨ったままバタバタと取り回しをするのも容易です。それでいながらステップ位置も絶妙な場所にセットされているので、膝の曲がりもちょうどよく長時間乗っても疲れるようなこともありません。細かな点ですが2024モデルではハンドルセット位置が10mm高くなっておりこれも楽なライディングポジションに貢献しています。
いや、ライディングポジションが楽ちんと言うよりは、自由度が高いために車体を扱いやすいと表現した方が良いかもしれません。だからコーナー進入時などでは肩、膝、腰どこで入力しても意のままに走らせることができます。なお私の身長は178cm、体重71kgです。
2024モデルは小変更も!?購入時はポイントを抑えておきましょう!
現行モデルは2021年からの3代目にあたるわけですが、2024年モデルではカラーバリエーションの変更以外にも小変更が加えられています。
先述したハンドルバーの変更に加え、最も大きなポイントはスマホと連携できる5インチTFTメーターディスプレイの採用、その操作に合わせたスイッチボックスの変更、オプション設定でクイックシフトが選べるようになったことなどが挙げられます。そうそう、細かい点ではフェンダーが塗装されたということもありました。
そもそも素性が良い3代目MT-07なので、走行面に関して言えばもはや熟成されきった感があり、そのサポート的な部分に手が加えられたと考えて良いでしょう。
独断と偏見で伝えたい”勝手にGood&Bad!!”
テストライダー小松男が独断と偏見で決めるグッド&バッド。
MT-07はとにかく走らせて楽しいバイクです。ですから機能面では本当に満点に近く、その中でも個人的に気に入ったのが燃料タンクのデザインラインや艶強いカラーリングで、以前のモデルと比べて高級感が持たされていると思いました。
ただ初代モデルが出たばかりの頃の素バージョンは70万円を切る価格設定で世界中のライダーを驚かせてくれましたが、年々価格が引き上げられ現行モデルは88万円となっています。ただそれでもミドルクラスのライバルモデルと比べれば高コスパですね。
一方のバッドポイントというと、ヘッドライト上部にレイアウトされたキーシリンダーです。メーターディスプレイの裏側にあり、車体に跨った状態では目視できませんし操作もしにくい。まあ別に乗って走っている分にはキー操作は必要ないのですが……。
フツーのライダーが満足できる最良の一台に仕上がっています!!
MT-09に追って登場した初代MT-07は、とても良くできたモデルでありコスパの高さも相まって大ヒットモデルとなりました。一方でそれこそ弟分であるがゆえのチープな印象を持たれてしまうことがありました。
それに変化が訪れたのは2代目で、デザイン面での全体的なブラッシュアップが施されたことにより、所有欲を満たすと言う面でMT-09との差が縮まるものでした。
3代目と呼んでいる現行モデルは、エンジン、ミッションのリファイン、ライディングポジションの変更をはじめ大幅に手が加えられたものです。
最大の魅力はMT-07特有の扱いやすさです。一般的なスキルのライダーはもちろん、エキスパートであっても物足りなさを感じられないはずです。各部の仕上がりも良くしっかりと所有欲を満たしてくれるでしょう。
面白いのはパッと見では倒立タイプのように見えるフロントフォーク。乗れば正立フォークでも十分であることが伝わってきますし、むしろブレーキングなどで全体が優しくしなる感覚が気持ちよく思えるほどです。
剛性力の高さを追い求める時代は終わり、柔軟でしなやかな走りを楽しめるスポーツモデルへと昇華したのかもしれません。
満点に近いですが改善の余地ありと思える部分もありました。具体的にはシフトの入りが渋かったりスロットルの全閉から開け始めにいわゆるドンツキが若干感じられたことなどです。
それらは個体差かもしれませんしテスト車両の返却時に慣れてしまっていたので気にしないで良いですが、それも踏まえて”2025年モデルはフルモデルチェンジ?”と噂されている中、成熟した現行モデルや価格のこなれた過去モデルの中古などを物色するのもなかなか良い選択だと思いますよ!
MT-07[2024]主要諸元
- 全長×全幅×全高:2,085×780×1,115mm
- ホイールベース:1,400mm
- シート高:805mm
- 車重:184kg
- エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC 688cc
- 最高出力:73PS(54kW)/8,750rpm
- 最大トルク:67Nm/6,500rpm
- 燃料タンク容量:13L
- 変速機:常時噛合式6速
- ブレーキ:F=ダブルディスク、R=ディスク
- タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
- 価格:88万円
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