ふだんほとんど限られたジャンル(というか限られた劇団)のお芝居しか観ないうえに、中でもナンセンスとか不条理劇といったものにあまりなじみがない。今回のこの公演は、発表があった頃にKERAさんが「俺稽古中だけど観に行けるかな」と慌てふためいたツイートをしていたので印象に残っていて観に行くことにした。出演者の中ではナイロン100℃の吉増裕士さんと、神谷圭介さんを(こちらもKERAさんのお芝居『世界は笑う』で)見たことがあるのみ。ブルー&スカイさんと大堀こういちさんは名前は嫌というほど聞いたことがあったけれど実際に拝見するのはこれが初めて、あとの方は名前も顔も初めての方だった。11月22日夜の回に観劇。
テアトロコントspecial「寸劇の庭」
会期:2024年11月20日(水)~24日(日)
会場:ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
料金:前売4,500円(当日5,000円)
・近現代不条理集合3人(作:ブルー&スカイ 演出:大堀こういち 出演:吉増裕士、ブルー&スカイ)
・テニスコート(作・演出・出演:神谷圭介、小出圭祐、吉田正幸)
・劇団アンパサンド(作・演出:安藤奎 出演:神谷圭介、川﨑麻里子(ナカゴー)、安藤奎)
最初に、大堀こういちさんのギターと吸血鬼のようなマントを身につけたブルー&スカイさんの進行による、全員での寸劇が一幕あり、それぞれの演目へ。
■劇団アンパサンド
どうも私には『芝居の作演出をやっている女性=頭よくて芸術肌で怖い人に違いない』という先入観があって、事前の情報で見ていた「作・演出:安藤奎」という文字列に恐怖に近い感情を抱いていたんだけど、まず最初の全員での寸劇の時点で、少なくともふたりの女性のどちらかが安藤奎さんでどちらかが川﨑麻里子さんだとわかり、どちらだったとしても怖そうじゃなかったのですごくホッとしていた。アンパサンドの演目ではさらに、おかっぱ髪の安藤奎さんが悪霊にとりつかれた新婚の奥さんのすさまじい様子を捨て身で演じていて、一気に好感度アップ(単純)。一方の、ナカゴーの役者さんだという川﨑麻里子さんもめちゃめちゃ表情がよくて、このふたりの顔にクギ付けになる。顔をずっと見ていたくなる役者さんなんて最高ではないか。ゲストの神谷圭介さんもとてもよく、こんなおもしろい役者さんだったのかと目から鱗が落ちる思い。おもしろかったー。
■テニスコート
名前は知っていたけどこれまで接点のなかったテニスコート。「だるま」という演目、めちゃめちゃおもしろかった!最初にイスに座ってた背の高い人も最後に出てきた地味めな人もとてもよかったし、何よりアンパサンドでもおもしろかった神谷圭介さんがびっくりするほどおもしろかった。シンプルな舞台でシンプルなストーリーでたった3人だけでこんなにおもしろいの凄いなあ。ナンセンスコメディってまったく観慣れないけど、また観たいなって思えた。
■近現代不条理集合3人
ブルー&スカイさんの鬼才・奇才ぶりをなるほどー!と感じ入る。役者としての雰囲気に大倉孝二さんぽさも感じたけど、となるとおふたりのユニット「ジョンソン&ジャクソン」(こちらも観たことないけど)などはどうなってしまってるのか。KERAさんもツイートしていたけど、吉増裕士さんがめちゃめちゃしゃべりまくるのが新鮮。ブルー&スカイさんの手による脚本は奇妙で贅沢で、なんか間違った食器に盛られた豪華な食事を食べ続けるみたいなヘンな気分に。違和感感じながらも引き返せずにどんどん食べ進まざるを得ないような。過剰に意味にあふれたリッチな状況を観客のほうもがんがん嚙み砕いていくような楽しさがある、けど後半ちょっと私のほうの集中力が途切れぎみだったかも…。力足らずでふがいない…。
オープニングのストーリーの続きとなる、全員での寸劇がまた繰り広げられて、終幕。アンパサンドとテニスコートは30分ずつぐらい、近現代不条理集合3人は60分ぐらいの芝居だったのかな。どれも“寸劇”なのに脳への衝撃大きくておもしろかった。神谷圭介さんってあんなに面白い役者さんなんだ~!というのが本日最大の発見。劇団アンパサンド、テニスコート、川﨑麻里子さんは機会があればまた観てみたいな。それから、いつも演劇界隈の人(主に八嶋智人さん)がフォークシンガー小象(大堀こういち)さんのことを絶賛している理由がよくわかった、あれはすごい。
【2024/11/24記】