松井彰彦氏の著作。経済学に関する啓蒙書。
我々の世界から見ると、松井先生は、ゲーム論が専門で、競争政策の分野や活躍されている先生だが、この著作は僕が認識している先生の専門からするとちょっと毛色が違う。
内容は、一人の女の子を主人公に展開される。本好きな女の子が叔母にいろいろと教えてもらううちに、タイムスリップしてしまい、そこでのいろいろな体験を通し、市場経済やそれを取り巻く社会や文化の多様性というものの役割を考えさせられる。
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市場(スーク)の中の女の子 松井彰彦、スドウ ピウ PHP研究所 2004-10-21 by G-Tools |
内容は以下のとおり。
- 第一章 図書館
- 第二章 アラビア
- 第三章 東の方
- 第四章 家
- 第五章 塔
- あとがき
挿絵がふんだんに使ってあり、文章も読みやすい。大人なら2,3時間で読み終えてしまうだろう。当然、中高生にも読みこなせる。経済学を知らない者にやさしく語りかけるとともに、専門用語を適度にちりばめているのも著者の工夫かと思う。
簡単に読めるけれども、著者の問題意識を読後に自分なりに考えると、日本経済や社会が曲がり角にきている今日、経済学も同じ課題を抱えており、我々に突き付けられた課題の重さを考えずにはいられない。
日本の経済学の多様性と発展を考えれば、若い人たちがもっと経済学の道に進んでほしいという思いもあったのかなとも、読み終わった後に考えたりした。