三重県名張市の盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
◇事件◇
会社員のAさんは、休日を利用して、三重県名張市のパチンコ店で遊戯をしていました。
このパチンコ店の女性店員の制服はミニスカートで、女性店員の姿にムラムラしたAさんは女性店員の足元にスマートフォンんを差し入れて下着を盗撮してしまいました。
男性店員が、Aさんの盗撮行為に気付き、Aさんは店員に捕まってしまいました。
Aさんは、通報で駆け付けた三重県名張警察署の警察官によって警察署に連行され、そこでスマートフォンを任意提出し、取調べを受けた後に、帰宅が許されました。
(フィクションです。)
盗撮行為は、各都道府県の迷惑防止条例で禁止されています。
三重県においては、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例という条例で規制されています。
◇公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反◇
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、いわゆる三重県の迷惑防止条例では、Aさんのような盗撮行為の他
・人に不安を覚えさせるような粗暴な言動等
・たかり行為・押し売り行為・景品の買取行為・ダフ行為
・不当な客引き行為・ピンクビラ等の配布行為等
・つきまとい等の嫌がらせ行為
・粗暴な行為による座席の占拠や不当な供与行為
・夜間における静穏を害する行為
・モーターボート等による危険行為
が禁止されています。
三重県の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例は、三重県内に存在する人々の平穏な生活を保持することを目的にしている条例で、違反行為に対しては、懲役や罰金といった罰則規定が定められています。
◇盗撮行為◇
三重県の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例で禁止されている盗撮行為は
①公共の場所や乗り物において、正当な理由なく、衣服等で覆われている人の身体や下着を盗撮する行為(同条例第2条2項2号)
②公衆浴場や、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他、公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けないでいる場所において、当該状態にある人を盗撮する行為(同条例第2条3項)
です。
これら盗撮行為の法定刑は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
◇Aさんの行為を検討◇
Aさんは、パチンコ店の店内において、女性店員の足元にスマートフォンを差し入れて、女性店員の下着を盗撮しています。
パチンコ店の店内は、この条例でいうところの「公共の場所」となります。
そして、スカートの下から下着を盗撮する行為は、この条例でいうところの「衣服等で覆われている人の身体や下着を盗撮する行為」となりますので、Aさんの行為が、三重県の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反となることは間違いないでしょう。
◇刑事弁護活動◇
刑事事件においての弁護士の活動は大きく分けると
①釈放・保釈を求める活動(身柄解放活動)
②刑事処分の軽減を求める活動(冤罪証明を含む)
に分かれます。
今回の事件でAさんは、発覚後に警察署に連行されていますが、逮捕等の身体拘束はうけていませんので、①の身柄解放活動は必要ないでしょう。
そこで、Aさんの刑事弁護人は、刑事処分の軽減を求めるための活動を行うことになります。
盗撮事件を起こして警察に捕まった場合、その後の刑事処分は軽いものから順に
①不送致<②不起訴<③略式罰金<④起訴(無罪・無実<罰金<懲役刑(執行猶予付)<懲役刑(実刑)
です。
Aさんが初犯の場合、スマートフォンに盗撮画像が残っていれば③の略式罰金になる可能性が高いと思われますが、弁護士が間に入って、被害者である女性店員と示談することができれば②不起訴処分となる可能性が高くなります。
また検察庁に送致されるまでに被害者との示談が成立した場合は、不送致の可能性もあります。