【2023年最新版】シンガポール移住に必須!就労ビザの種類・申請条件
シンガポールへの移住・転職の前に立ちはだかる最初の難関がビザ取得。
20種類以上あるビザの中から、EP・Sパス、投資家・起業家パス、学生パス、家族パスなど、日本人の取得が多い就労&滞在ビザを紹介。
2023年の9月からは、新評価基準「COMPASS」が導入され、ますます厳格化がウワサされるビザ取得の詳細に迫ります。
必要な書類からワクチン接種の要件まで、シンガポールのビザ申請前に必読です!
シンガポールの就労・滞在ビザの種類
■ 一般就労ビザ:エンプロイメント・パスとSパス
シンガポールで働く日本人が取得する一般的な就労ビザが、「エンプロイメント・パス(EP)」か「Sパス」のどちらか。
この2つの就労ビザは、就労者個人ではなく、スポンサーとなる雇用主(企業)に紐づくもので、申請も企業側から提出する形。
種類 | 対象・条件 | 有効期間 |
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エンプロイメント・パス(EP) | 専門職、マネージャー職、役員クラスの外国人が対象。必要給与は月額最低5,000ドル(金融サービス業は5,500ドル)で、年齢に応じて増加する仕組み。 | 初回:2年 更新:3年 |
Sパス | 外国人の熟練労働者が対象。必要給与は月額最低3,000ドル(金融サービス業は3,500ドル)以上で、年齢に応じて増加する仕組み。 | 2年(更新可) |
Sパスは、EPに比べて審査基準がゆるく、取得のハードルが低いようにみえますが、雇用先の業種(セクター)や状況によって、企業側が使えるSパス枠(数)には上限があります。すでにSパスの採用枠を使い切っている会社では、Sパス申請はできないので注意。
またEPに関しても、2023年9月1日から、「COMPASS」というポイント制の審査に移行(詳細は後述)。従来、主な審査基準となっていた個人の給与と学歴に加え、企業側における(国籍の)多様性やローカル人材雇用率なども審査ポイントとなります。近年の最低給与額の引き上げとともに、外国人のビザ取得が更に厳しくなることが予想されます。
退社するとEP・Sパスはキャンセル
雇用主に帰属する就労ビザですので、退社するとビザはキャンセル。シンガポール内で次の雇用主を見つけ、新しい就労ビザを取得しない限り、1ヶ月以内にシンガポールを離れる必要があります。
■ 起業家・投資家向けの就労ビザ
シンガポールは、国内の雇用創出や経済の活性化に貢献するビジネスオーナーや投資家、実業家に対して、積極的な誘致を行っています。
そんなトップクラスのグローバル・エグゼクティブ向けに用意されたのが、「アントレ・パス」、「PEP」、「ONEパス」、「テック・パス」、「GIP」。
会社に紐づくEPやSパスと異なり、個人が主体となる就労ビザです。
種類 | 対象・条件 | 有効期限 |
---|---|---|
アントレ・パス(EntrePass) | シンガポールでベンチャービジネスや革新的テクノロジーを有する事業のスタートアップをする起業家・投資家が対象。収入基準はないが、起業家・投資家として一定の条件を満たす必要あり。 | 新規申請・初回更新:1年 以降の更新:2年 |
パーソナライズ・エンプロイメント・パス(PEP) | 既存の就労パス保持者のうち、固定月収1万2,000ドル(約120万円)以上。もしくは国外からの新規申請者は、直近6ヶ月以内の月収が1万8,000ドル(約180万円)以上が対象。 | 3年(更新不可) |
ONEパス | 固定月収3万ドル(約300万円)以上。 または芸術や文化、スポーツ、学界および研究分野で卓越した成果があるトップタレント(給与査定の対象外)。 |
5年(更新可) |
テック・パス(Tech. Pass) | テクノロジー企業のオーナー・創業者・リーダーもしくは技術専門家などが対象。収入基準(固定月収2万ドル以上)、一定規模の企業・製品開発での経験など、条件あり。 | 2年(更新可) |
グローバル投資プログラム(GIP) |
シンガポールに巨額の投資することで、永住権(PR)を獲得できるプログラム。3つの投資条件以外に、事業実績・経験も審査。
|
永住権(5年ごとの更新審査あり) |
通常の就労ビザは、シンガポール労働省(MOM=Ministry Of Manpower)の所轄であるのに対し、テック・パスとグローバル投資プログラムは、シンガポール経済開発庁(EDM=Economic Development Board)の管轄。
手っ取り早い起業家ビザは「EP」!?
上記で紹介した「投資家・起業家ビザ」は、収入だけでなく、ビジネス実績も必要。より手っ取り早く就労ビザを取得する方法は、シンガポールに法人(雇用主)を設立することで、自らの「EP」を申請するというもの。
■ 学生ビザ・研修ビザ
教育水準が高く、英語や中国語の習得にも最適ということで、教育移住先としても注目を集めているシンガポール。
親が就労パスを取得し、一家で移住というパターン以外にも、母子留学という選択肢も可能です。
その場合は、子供が「スチューデント・パス」を取得し、付き添う母親もしくは祖母が「長期滞在ビザ(LTVP)」を申請するという形。労働省(MOM)ではなく、入国管理局(ICA)が窓口となります。
種類 | 対象・条件 | 有効期間 |
---|---|---|
スチューデント・パス | シンガポールの認定教育機関から全日制課程での入学を認められた人。 | 対象者による |
ワーク・ホリデー・パス | 就労・休暇目的の大学生・卒業生(18歳以上25歳以下)が対象。日本を含む指定10ヶ国の大学限定。 | 6ヶ月(更新不可) |
トレーニング・エンプロイメント・パス(TEP) | 実地トレーニングを受ける外国人インターンや研修生が対象。認定大学の学生か、月給3,000ドル以上。 | 3ヶ月(更新不可) |
インターンや研修生を対象とした「トレーニング・エンプロイメント・パス」や、学生を対象とした「ワーク・ホリデー・パス」もあります。
ワーホリで人気のオーストラリアやカナダなどの国に比べると、シンガポールのワーキング・ホリデー制度は6ヶ月間と、短期間のプログラムです。
スチューデント・パスでの「就労」には諸条件あり
「スチューデント・パス」ホルダーが、就労パスなしで働くには、年齢はもちろん、所属教育機関、働ける期間(ホリデー期間など)、最大労働時間など、諸条件があります。
■ 家族ビザ(帯同する配偶者・子・親など)
以下は、就労パス保持者が帯同する家族、シンガポール市民権・永住権(PR)保有者と結婚した配偶者や家族、シンガポールで学ぶスチューデント・パス保持者の母・祖母などに付与される滞在ビザ。
種類 | 対象・条件 | 有効期間 |
---|---|---|
被扶養者パス(DP) | 就労パス保持者の配偶者および子供(21歳未満・未婚)が対象。 EP/Sパス保持者が家族を帯同する場合、固定月収が6,000ドル以上であることが条件。 |
2年(更新可) |
【MOM管轄】 長期滞在パス(LTVP) |
就労パス保持者の両親、事実婚上のパートナー・子どもなど、DPより広い範囲の「家族」が対象。 EP/Sパス保持者が両親を帯同する場合、固定月収が1万2,000ドル以上であることが条件。 |
2年(更新可) |
【ICA管轄】 長期滞在パス(LTVP/LTVP+) |
対象者は以下のとおり
|
対象者による |
対象者によって、管轄(申請先)も異なるので注意。
- 就労パス保持者に紐づくDP/LTVPは、労働局(MOM)の管轄。就労パス保持者のスポンサーである雇用主(企業)が申請。
- シンガポール市民権・永住権保有者、学生パス保持者に紐づくLTVP/LTVP+は、入国管理局(ICA)の管轄。対象者個人が申請。
厳しくなる外国人雇用とビザ取得
外国資本・人材の積極的な誘致によって、発展してきたシンガポール。しかし近年、外国人労働者に対する国民の不満を背景に、外国人雇用を抑制する方向へと転換。
将来的には、国内の総労働力の3分の2をシンガポール人(PRを含む)にすることを目標としています。
■ 雇用政策『シンガポーリアン・コア』
2011年ごろから、雇用政策における主軸として掲げられるようになったのが、「シンガポーリアン・コア」という方針。とくに従来、外国人の比重が大きかった「PMET=Professional, Managerial, Executive and Technical」と呼ばれる上位職について、自国民(PRを含む)の雇用を推進する政策を、次々に打ち出しています。
具体的には、
- Fair Consideration Framework:採用活動において、対象者を外国人に限定した求人を規制。採用候補として、シンガポール人を公平に検討しなければならない。
- 「MyCareersFuture」へ求人掲載の義務付け:EP・Sパスで外国人を採用する前に、政府運営の求人サイトに掲載し、シンガポール人が応募する機会を与えなければならない。
- 外国人採用枠(Quota)の設定:Sパス・WPで雇用できる外国人の上限数を設定。業種、ローカル従業員比率などによって、付与される枠が決定します。
- 外国人雇用税(Levy)の課税:Sパス・WPで外国人を雇用する企業に、外国人雇用税を課税。雇用する外国人が多いほど、支払い金額も高くなる仕組み。
■ EP・Sパスの最低給与の引き上げ
またEPやSパス取得において、基準の一つとなる最低給与額(月給)も年々、引き上げられています。
外国人を雇うときに必要となる最低給料が上がるということは、企業側にとっては負担しなければならない固定費が増大するということ。
体力のない会社は、外国人雇用を絞らざるを得ないかもしれません。これも、自国民の雇用につなげようという雇用政策の一つです。
就労ビザの新評価基準「COMPASS」
■ 基本とボーナスの6項目で計40ポイントが必要
従来の最低給与規定に加えて、2023年9月からEP審査に新しく導入される評価基準「Complementarity Assessment Framework」—— 略称「COMPASS」。
4つの基本項目と2つのボーナス項目で、基準・達成度に応じて加点されるポイント制。
申請者の「給与」と「学歴」だけでなく、雇用主側の「多様性」や「ローカル人材雇用率」など、個人と企業の両面から審査する枠組み。
1項目が0ポイントでも、他の項目で補完可能。合計で40ポイント以上を獲得すれば、合格(EP取得)です!
個人属性 | 企業属性 | |
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基本項目 |
給与
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国籍の多様性
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学歴
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ローカル人材の雇用
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ボーナス項目 |
スキルボーナス
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経済戦略における優先度
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*現在、「学歴」で20点を獲得できるトップ校に認定されている日本の大学は、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、東京工業大学の5校のみ。
なお、以下のいずれかに当てはまる場合には、COMPASSの適用外(つまり免除)となります。
- 固定月給2万2,500ドル(約225万円)以上。
- 企業内転勤者(ICT=Intra-Corporate Transferee)としての申請。
- 1ヶ月以内の短期職務。
COMPASS
■ 簡易診断ツール(SAT)について
「Self-Assessment Tool(SAT)」は、シンガポール政府が提供している自己診断ツール。
Eパス・Sパスの本申請前に、オンライン上で職種、学歴、職歴、そして給与額などを回答することによって、ビザ取得が可能かどうかを簡易に診断することができます。
ただしSATの結果は、あくまでも参考指針。実際の申請での承認を保障するものではありません。
Self-Assessment Tool(SAT)
シンガポールのビザ申請プロセス
■ ビザ申請に必要な書類と審査期間
ほとんどの日本人が取得するEP・Sパスについては、雇用主側から申請するのが基本。
駐在にしろ、現採にしろ、会社の人事(もしくは代行エージェント)が手続きをしてくれると思いますが、就労者が用意しなければならない書類もあるので、早めの準備を始めましょう。
EP | S Pass | DP | |
---|---|---|---|
申請者 | 雇用主 | 雇用主 | 扶養者の雇用主 |
必要書類 |
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審査期間 | 10日以内 | 3週間以内(85%) | 3週間以内 |
■ ビザ申請〜カード受取までの流れ
ビザ申請後のおおまかなプロセスは、以下の通り。
通常、ビザの申請は就労者がシンガポールに移動する前に提出。
ビザが承認されたら、労働省から「In-Principle Approval Letter(IPA)」と呼ばれる承認書が届きます。このIPAは、片道での入国を認める事前承認ビザを兼ねているので、これを持って、シンガポールに入国。
入国後、正式なパス発行の手続き・登録(指紋・写真など)を経て、カードを受領するという流れです。
その他、ビザ申請時の留意点
■ ビザ申請にはコロナワクチン完全接種が必須
現在、30日以内の滞在であれば、Covid-19ワクチンの接種の有無に関係なく、入国が可能となったシンガポール。
しかしながら、13歳以上の就労パスや被扶養者パス、長期滞在パスなどのビザ申請には、ワクチン完全接種が必須条件となっています。
日本で受けたWHO認可のワクチン接種&ブースター記録を、シンガポールの管理システム(NIR)に取り込むこともできます。
Covid-19 Vaccination
■ 12歳未満はジフテリア・麻しん予防接種が必須
12歳未満の子どもについては、被扶養者パスや長期滞在パス、学生パスを申請する際に、「ジフテリア」および「麻しん」の予防接種が必須。
パスの申請前に、シンガポール保健省(HPB=Health Promotion Board)のシステム(HPB)に、予防接種履歴(英文)などを提出し、承認を完了しておく必要があります。
Diphtheria and Measles
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