The Bucket List/最高の人生の見つけ方 - memomaru

The Bucket List/最高の人生の見つけ方

The Bucket List (2007)

最高の人生の見つけ方

全く異なる人生を歩んできた心優しい整備工の男と、傲慢な実業家の男。病院で同室となった彼らは共にガンを患っており、余命半年だった。そんな中、整備工が実業家にあるリストを見せる。それは、死ぬまでにやりたいことを記した「棺桶リスト」で、実行できていないものばかりだった。

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以前別の記事(アラサー女の死ぬまでにやりたいことリスト - memomaru)で少し紹介していたずっと観たかった映画です。余命宣告をされた2人がタイトル通り"The Bucket List"を死ぬ前に消化していくというお話なんですが、ほとんどの人は病院のベッドで薬の副作用などと闘いながら過ごすであろう最後の半年をこんなにも楽しそうに生きるなんてまさに「最高の人生」ですよね。

注意:ここからネタバレを含みます。

自動車整備工場で働くカーターと大金持ちの実業家であるエドワードがたまたま同じ病室で出会います。カーターは仕事中に1本の電話から自らが癌であることを知るんですが、その時の表情がすごく切なかったのが印象的です。仕事中にも煙草を吸っていたから肺癌かな?なんとなく私生活も乱れてそうなどとこの時は安易に考えていたんですが、実はカーターは家族思いで優しくて自分の人生を犠牲にしながらもまじめに働いてきた人生だったんですよね。

一方エドワードはというと病室に自分だけ特別な高級料理を秘書に持ってこさせるぐらいの大富豪ですが、過去に4回も離婚を経験していて現在は独身。元妻に慰謝料を持っていかれて娘にも逢えないという悲しい人生を送っていました。自由奔放にやりたいように生きてきた彼はかなり自己中心的な言動も多いですし、カーターとは正反対な性格ですね。

2人の出会いはエドワードが個室に移せと怒っていたところから最高とは言えないものでしたが、同じ病気で余命半年を宣告されたあたりから互いの体調を心配し合ったりしながら距離が縮まって仲良くなり始めます。こんな風に一般社会の中ではなかなか出会うことがないであろう2人が病気という共通点を持って出会い仲良くなるというところがヒューマン映画っぽくてすごく好きです。

アメリカのヒューマン映画といえば社会問題についてよく表現されがちだと思いますが、この作品も例外なく人種差別的なセリフが間接的に出ていました。カーターが自分の過去について話すシーンで、奥さんバージニアが学生時代に妊娠した時、自分のような"黒人の若造では"工場で働くぐらいしか道がなかったと言っていましたね。自分自身で言っているのでさらっと流れたシーンでしたがやっぱりここにも少し考えさせられるものがあります。

さて話を戻しますが、病院生活中のある日カーターが書き捨てた"The Bucket List"のメモをエドワードが拾い、このリストを一緒に叶えようと提案します。カーターははじめは乗り気じゃありませんでしたが、エドワードの説得により2人はリストを実行するために世界中を旅することになりました。金は俺が何とかすると言って説得するのがエドワードらしいですね。エドワードがいなければカーターのリストは叶うことがなかっただろうな~と思うと人との出会いって大切にしなきゃなと思います。

さて病室から急にスカイダイビングやらアフリカのサバンナで野生動物に出会ったりやらフランスやらインドやらと...こっちまで世界旅行をしている気分で一気に楽しい映像に切り替わります。自家用ジェットで世界中飛び回るなんてエドワードみたいな大富豪にしかできないだろうからそこはちょっと非現実的な感じもしますが、一つずつ叶ったリストを消していって楽しそうに生きている2人を見ていると微笑ましいです。リストには"ローマ"や"ストーンヘンジ"など映像には出てこなかった場所もメモされ線で消されていたので結構な長旅だったんじゃないかなーと思います。

今まで女遊びを全くしてこなかったカーターにエドワードが女性を手配してあげるシーンでは、カーターがきっぱりと断ってエドワードに後で怒っていたのがすごく好印象でした。奥さんのこと大好きなんだと気付きここで家に帰ることを決意したのもかっこいい。逆に、娘になかなか会おうとしないエドワードのためにカーターはわざと車を娘の家の前でとめてあげたのですが、結局その時はカーターに激怒して娘とは再会せずに帰ってしまいます。めっちゃ楽しそうな旅行だったのに旅の最後が喧嘩別れなのはちょっとさみしいですが、お互いがお互いのためになることをしてあげようと思って空回りしてる感じが逆に真の友達っぽいなと思いました。

カーターは家族と幸せそうに過ごした直後に倒れ、癌が脳に転移していたことを知ります。お見舞いに来たエドワードと病院でコーヒー豆の話で盛り上がり2人で大爆笑してました。ここで、「泣くほど笑う」の項目が削除されます。こうして項目がどんどん削除されていくことは夢が叶っているということなので嬉しいはずなんですが、なんだか2人の死へ近づいているような気もして少し複雑でした。最後に「後は頼むよ」といってカーターがリストをエドワードに預けたシーンも少し寂しかったです。こうしてカーターは愛する家族に看取られ人生を終えました。

その後エドワードは娘エミリーに思い切って会いに行きます。2人の会話は直接は映し出されていないのですが、おそらく仲直りしてエミリーの娘(エドワードの孫)にも会うことができ「世界一の美女にキスをする」が達成され、その後エドワードは81歳で亡くなりました。ずっと心残りだった娘との確執が解け、真の幸せを感じてから人生を終えることができたのは素晴らしいことです。

ラストはエドワードの秘書であるトーマスがヒマラヤ山脈に登り、エドワードとカーターの遺灰とリストを頂上の雪の中に埋めて帰るシーンでした。ここで最後の「荘厳な景色を見る」の項目がトーマスによって削除されて2人のリストが全て叶うっていうのがとてもエモい。思えば秘書トーマスもずっとこの2人の旅に同行してたわけで、行く先々で2人と同じように何かしら人生について考え感じながら過ごしてきたと思います。「人生の価値は、誰かの考え方に影響を与えたかどうか」的な冒頭のナレーションをしていたのもトーマスでした。2人をそばで見てきて人生の価値について考えさせられたんだろうなと思います。

残りの人生が短いことを知らされてから出会った2人ですが、こんなに短期間で仲良くなってお互いを支えながら人生の最期を楽しむ姿には勇気をもらいました。大切な人と過ごす時間を増やさなきゃと思わされたり、実際に自分でやりたいことリストを作ろうと思ったり、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなりました。

普通に生きている中では忘れてしまっている、人生において何かすごく大切なことをこの映画を通して考えさせられた気がします。そういった意味で、どんな境遇を生きている人にもお勧めできる作品の一つだなと感じました。同じ監督が出している「最高の人生のつくりかた」という作品も見つけたのでまた時間があるときに観たいと思っています。

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