転職だけがキャリアアップの手段ではない。社内に目を向けたら、自分らしいキャリアがついてきた - ミーツキャリアbyマイナビ転職

転職しないという選択肢。会社の中に目を向けたら、自分らしいキャリアがついてきた

鳴海さんトップ写真

<プロフィール>
鳴海まい。2015年に株式会社トライバルメディアハウスへ新卒で入社。2017年よりプロデューサーとして製薬・エンタメ・ファッション・オーディオメーカーなどのソーシャルメディアマーケティングやプロモーション、イベントの企画・運営に携わる。2018年にトレンド研究グループ「Spark!」を設立し、所長を務める。2020年10月からマーケティングデザイン事業本部マーケティングデザイン営業部部長。
Twitter:@narumai24


新卒入社した会社で働き続けて数年。いまだに入社時に思い描いた仕事を任せてもらえていない自分と、転職などを通じて着々とキャリアを築いていく友達の境遇を比較し、「このままでいいのかな……」とモヤモヤしてしまう。

マーケティング会社・トライバルメディアハウスに勤務する鳴海まいさんも、そんな一人でした。希望とは異なる部署に配属され、当初は仕事に向いてないと感じ、転職を考えていたといいます。

しかし、入社から数年を経て、リーダーとして仕事をする機会も出てくると、会社と一緒に成長する楽しさを感じ、やりがいを見出していったそう。

現在は同社の執行役員を務め、会社全体の成長のために仕事をする鳴海さん。今いる環境を活かし、キャリアを積み重ねるためにはどうすればいいのか、新卒入社した企業で働くやりがいとは何か、執筆いただきました。

はじめまして、鳴海まいです。私は2015年に新卒でマーケティング会社・トライバルメディアハウスに入社し、現在まで働き続けています。

入社してから2年間は、自社のマーケティングツールを販売する営業。3年目でマーケティングのコンサルティング営業に異動し、その部署のチームリーダーや部長を経て、現在は3つの部署をまとめたマーケティングデザイン事業本部の本部長と執行役員を務めています。法人営業のキャリアを一貫して築いてきました。

このような経歴を見て、「順風満帆な会社員生活だったのかな」と思う方もいらっしゃるでしょう。でも、入社当初は希望と違う部署に配属され、仕事にやりがいを見出すことができず、転職ばかり考えていました。周囲の動きに惑わされ、「転職しない人は挑戦していない人だ」とまで感じていたほどです。

今回は、そんな私の会社員人生を振り返りながら、今いる環境を生かしてキャリアアップする方法新卒入社した企業で働き続けることのメリットについて執筆してみたいと思います。

まさかの営業配属も、自ら仕事を広げる

先ほど申し上げた通り、1年目は自社で開発しているソーシャルメディア統合管理ツールの営業を担当することになりました。

ただ、希望はツールの販売を行う部署ではなく、クライアントにマーケティングプランの提案をする部署。職種も、営業ではなくプランナーを志望していました。そのため、営業という仕事になかなか魅力を感じることができず、毎日テレアポを繰り返しながら、「これが本当にやりたかったんだっけ?」と疑問を抱き、仕事が終わると落ち込む日々でした。

当然、そんな気持ちの1年目はまったく結果を出せず、目標面談では毎回号泣していました。「ああ、私は営業に向いていないんだ。営業以外の仕事ができる会社に転職しよう」と本当に毎日思い、転職サイトに登録し、面接を受けたりもしていました。

しかし、私はもともと負けず嫌いなところがあります。当時いた同期10人のうち、私が希望していた部署に配属されたのは8人。朝礼でそんな彼らの活躍を目にするたび、「絶対に負けたくない!」という気持ちと、「自分も結果を出して、プランニングの仕事をしたい」という気持ちが徐々に芽生えてきました。

そうして2年目からは「結果を出したら何かが変わる。転職のことは結果を出したあとに考えよう」となんとか自分を奮い立たせ、テレアポの件数を増やしたり、ロールプレイングに積極的に取り組んだりして、ようやく個人に与えられている目標を達成することができました。

目標を達成できたこともあり、3年目にはツールの販売に加えて、マーケティングプランの提案を行う部署の営業としても仕事をすることになりました。営業とはいえ、もともと希望していたプランナーと一緒に行う仕事。プランニングの仕事に触れるチャンスがやってきたのです。

そこで、私は任されている仕事だけでなく、積極的に仕事の幅を広げていくことにしました。例えば、社内にたくさんあるマーケティングに関する資料を片っ端から集め毎日勉強をしたり、通常はプランナーが担当する企画出しに自ら手を挙げ参加してみたり。時にはプランナーの先輩に相談し、本来は営業がやる仕事ではない提案資料の作成を任せてもらったりもしていました。

当然、求められていないことまでやり、もともとの仕事をおろそかにすれば本末転倒です。移動などの細かい時間にもできる仕事をこなし、「求められている数値は200%で達成しよう。そのうえで求められていないこともやろう」と決め、仕事に励みました。

仕事への向き合い方が変化した社長賞の受賞

そういった努力を続けた結果、個人の成績として過去最高額の売上を達成し、3年目の年度末に社長賞を受賞することができました

振り返ると、任された仕事だけでなく進んで仕事の幅を広げる取り組みが、自分の調整能力を伸ばしてくれたと感じています。落ちているボールがあれば我先にと取りに行く。その繰り返しを懸命に行うことで、部署や会社の垣根をこえ仕事をする機会をたくさん得ることができたのです。

しかし、その過程では、まだ組織で働くことを心から楽しめていなかったようにも思います。負けず嫌いな性格から、必死に仕事に取り組んでいるものの、意識は自分にばかり向いていました。だから、社長賞が発表された瞬間には、「ほらね」と生意気にも思っていました(笑)。

ただ、表彰式のあと、結果が出せなかった1年目の頃からお世話になっていた上司や先輩、共に切磋琢磨してきた後輩たちがまるで自分のことのように喜んでくれた姿を目の当たりにし、気持ちに変化が生まれました。「あ、こんなにたくさんの人が私のために喜んでくれるんだ」「私はチームとして、会社の一員として、仕事をしているんだ」と強く感じ、これからは自分だけのために仕事をするのではなく、会社のために仕事をするんだと意識が大きく変わったのです。

今思えば、この瞬間が私の大きなターニングポイントでした。

その後、組織というものの魅力に目が向くようになったことで、これまであまり興味が持てなかったマネジメントにも挑戦しようとチームリーダーに立候補。会社で働くなかで不満に思うことが出てきたら、それを会社の「一課題」として捉え、自ら積極的に上層部へ提案するようにしました。すると、今まで一人では見えなかった世界が見えるようになり、仕事をすることがより楽しくなったのです。

課題を解決するために、自ら機会を作り出す

「自分一人で結果を出すのではなく、会社のメンバーと一緒に働く」という意識を持ってからは、多岐にわたる挑戦をしていきました。

若年層のトレンドを研究する「Spark!」を立ち上げ

その一つが、SNSや若年層のトレンドを研究する「Spark!」の立ち上げです。

もともとトライバルメディアハウスは、ソーシャルメディアに強みがあります。とはいえ、さまざまなSNSが立ち上がり、それらの機能が日々アップデートされ、流行も目まぐるしく変わるなかで、いかにキャッチアップしていくかが当時課題となっていました。加えて、自分自身の経験から、マーケティングの仕事は日々変化も激しいため、新卒で入社すると結果を出せるまでに非常に時間がかかることも課題に感じていました。

その2つの課題を解決するために、最新のSNSの動向を調査しながら、必要なマーケティングの知識を学ぶ「Spark!」という研究グループを立ち上げ、有志の後輩たちと一緒に活動できる場をつくりました。弊社には、最低4人から申請でき部費をもらえる「部活動制度」があったので、この制度を利用し最初は部活動として出発しました。

立ち上げ後は、流行のスイーツを購入して撮影したり、実際に話題のスポットへ足を運んだり、活動内容を模索する日々。当時は、Instagramがちょうど流行りだし、「インスタ映え」という言葉がでてきたタイミングだったので、どうすれば「映える写真」が撮れるのか、自分たちで試行錯誤を繰り返しながら知見を積み重ねていきました。

「Spark!」活動風景の写真

少しずつ活動が板についてきた頃に挙がった次の課題は、「いかに部活から業務に押し上げるか」。部活のままでは業務時間内に活動することができないからです。

知恵を絞った結果、定期的に活動報告を社内向けに発信したり、「Spark!」での活動成果をまとめたセミナーを開催したりしました。私自身、これまで何度かセミナーに登壇する機会があったので、挑戦しやすいことから着手していきました。当時は、まだほとんどの企業がInstagramアカウントを開設しておらず、どのように運用すればいいのか模索している段階。どれだけ反応があるのか不安でしたが、蓋を開けてみれば過去最高数の応募を集めることができました。

その成果が、社内でも話題となり、「熱狂ブランドサミット」という会社全体が携わる大きなイベントの4セッションのうち、1つのセッションを「Spark!」に任せてもらえることになったのです。

「Spark!」ソーシャルメディアマーケティングセミナーの写真2

そこでは、実際にインフルエンサーの方々を招き、Instagramでウケる加工の仕方やTikTokコンテンツのつくり方をその場で解説したところ、参加者の心に刺さり大盛況。イベント後のアンケートでもポジティブな意見ばかりが集まりました。

自ら勝手に立ち上げた「Spark!」ですが、その後は業務として携わることができるようになり、「Spark!」経由での社外からのお問い合わせも増えるなど、思っていた以上の結果を残すことができました。

嫌がっていた営業部の部長に立候補

もう一つ印象深いのが、営業部の立ち上げです。というのも、私が入社してから数年後に組織形態の変更があったことで、部という形では営業部が存在しない時期がありました。当時は、さまざまな部署の社員が営業活動に携わっている状態。そんななかで、組織として成長するためには、営業力の補強が急務だと私は考えたのです。

最初に行ったのは、私自身が営業で培った知見を積極的にシェアすること。例えば、当時は社内の会議で「こういった施策をやったらおもしろそう」というアイディアは出るものの、なかなか提案につながらないという課題がありました。

そこで、私がクライアントに提案する際のポイントや方法を社内に共有し、チームメンバーが自発的に提案を行うことができるようコミュニケーションをとっていきました。結果が出た際には、「どのようにアップセルを成功させたのか?」を今度はほかのメンバーに共有してもらい、それを繰り返すことで営業力の強化につながればと思ったのです。

しかし営業部がないことで目標数値の責任が曖昧になっていたり、本来営業に向いていないメンバーまでもが数字をつくらないといけない状況になっていたり、根本的な問題がまだまだ存在すると感じました。やがて、これまで実践してきたことを体系的に行うためにも、やはり営業部をつくったほうがいいのでは……と思うようになりました。

そうした事情から、私は営業部の発足を社長に直談判し、営業部長への立候補も同時に行いました。トライバルメディアハウスには社内コミュニケーションを奨励するために会社から補助が出る「サシのみ制度」というものがあるのですが、その制度を使って社長に時間を取ってもらったのです。

いつもなにかを提案する際に心掛けているのは、「提案する前に」仲間を集めておくこと。この時も、以前から営業部の必要性は感じていたので、ちょっとしたランチのときや仕事終わりのタイミングに自分の要望を同僚たちに共有し、応援してもらえる体制をつくっておきました。また、OKが出た時になるべくすぐ動き出せるよう準備することは、相手の立場からも安心感が違うと感じたのです。

結果、挑戦の機会を与えてもらい、インサイドセールスの立ち上げや、新規営業チームの営業力強化などを継続的に実行。当初3人だった営業メンバーも今や11人となり、やっと組織的に営業ができる土台まで整えることができました。

新卒で社歴を重ねたからこそ挑戦できた

こうして、私は4年目にあった意識の変化をきっかけに、リーダーとして仕事をしながらさまざまな挑戦を行ってきました。一人で黙々と売上のために仕事をする時よりも、メンバーたちと協力し、組織全体として成果を上げることには、ダイナミックなおもしろさがありました。会社と一緒に成長するのが楽しく、最近は会社を自分のものと思っている節すら出てきています(笑)。

近年は転職が当たり前の時代になり、「キャリアアップ=転職」というイメージもあると思います。しかし、自分の経験を振り返ってみると、転職がすべてではなく、一つの会社でキャリアアップの機会を得ることもできると感じます。そのために大切なのは、現状の不満を「文句」という形で終わらせるのではなく「課題」として捉え、既存の制度などを利用して仲間を集め、会社に提案することです。

提案といっても、必ずしも提案らしいカチッとした提案でなくてもいいのです。私自身、プレゼン力に自信があるわけではありませんが、地道に部活動やサシのみといった会社の制度を利用し、仲間集めをしてきたことが、挑戦する機会を得ることにつながったと感じています。

「Spark!」イベントでの写真
「Spark!」イベントでの様子

ただ、これには新卒で入社した会社だったからこそ「挑戦しやすい側面」もあったかもしれません。

何もできなかった新卒時代のことを知ってくれている人がいるからこそ、育まれる信頼関係もあると思います。営業部長に立候補した時もそうですが、私自身の志向や経歴を知ってくれているからこそ、ポテンシャルも込みで仕事を任せてくれた。もちろん、結果を出すことは重要ですが、私がこれまでチャレンジし続けていることも分かってくれているので、たとえ失敗しても許される空気があり、安心して仕事に取り組むことができています。

また、社会人として働き始めたのが今の会社なので、会社のカルチャーが体に染み付いており、単純に仕事がしやすい側面もあると思います。しかしこれらは、新人から一つの会社で働き続けてきたからこそ得られるメリットです。もちろん、そこにあぐらをかいてはいけないので、最近は中途入社のメンバーからの意見も積極的に聞き、より良いカルチャーに変えていくことができるよう意識して取り組んでいます。

ちょっとだけ先の目標に向けて歩むキャリア

ここまでの自分のキャリアを振り返ってみると、7年間で自分のキャリア観に変化があったことに気づきました。

社会人として働き始めると、よく5年後・10年後のキャリアを考えるべきだと言われると思うのですが、私はそれが苦手でした。未来に向けた目標を持つことも大切だと思いますが、「そんな先のことは分からない!」と思っていたのです。女性は、出産や育休などのライフステージの変化も重なるため、なおさらです。だから、上司からビジョンを求められても、うやむやに答えてきました。

ただ、今になって思うのは、私の場合は長期的なゴールを決め、そのゴールに向かってやるべきことを棚卸ししてステップアップしていくキャリアより、「今の自分の能力」と「会社の資産」と「今やりたいこと」をかけ合わせ、“ちょっとだけ先の目標”を決め挑戦し続けるキャリアが合っていたということ。

もともと私は営業部長になりたかったわけではありませんでした。ただ、目の前のことに必死に取り組んでいった結果、営業部長という現在のキャリアがあります。節目を迎えたタイミングでふと振り返ったときに、気づけば自分らしいキャリアが形成されていた。そういう形もありなのではないでしょうか。

「転職しなくても一つの会社で自分らしいキャリアを積むことはできる」。今後のキャリアを考えるうえで、選択肢の一つとしてそう捉えるきっかけにしてもらえたらうれしいです。

(MEETS CAREER編集部)

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