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日本政策金融公庫との付き合い方・活用方法は?知っておきたい5つのポイント【教えて!吉田先生】

2024.10.04

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

日本政策金融公庫は小規模・中小事業者にとって強い味方の政府系金融機関です。多くの事業者の方が利用されていると思いますが、日本政策金融公庫との付き合い方や活用法について理解されている方は少ないと思われます。

今回は、日本政策金融公庫との上手な付き合い方について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。

※本記事は2024年9月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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中小企業の成長に日本政策金融公庫の活用は不可欠!

日本政策金融公庫(日本公庫)は、国が株式を保有している政府系金融機関です。一般事業者向けとしては、「国民生活事業」および「中小企業事業」の2つの窓口がありますが、小規模・中小事業者が利用するのは「国民生活事業」になります。まずは、この基本を忘れないでください。

小規模・中小事業者が成長するには、日本政策金融公庫をうまく活用する必要があります。ポイントはたくさんありますが、今回は以下の5つに絞って解説いたします。

〈日本政策金融公庫との付き合い方5つのポイント〉

  1. 日本政策金融公庫の特徴を理解して活用しよう
  2. 創業時期には積極的に活用しよう
  3. 商工会のマル経融資を活用しよう
  4. メインは民間、補完金融として日本政策金融公庫を活用しよう
  5. 日本政策金融公庫を常に利用するように心がけよう

ポイント1:日本政策金融公庫の特徴を理解して活用しよう

日本政策金融公庫最大の特徴は、小口の無担保融資がある点です。融資実績の約8割が1,000万円以下となっており、平均融資残高は935万円(コロナ禍前は700万円前後)と小口融資が主体であり、9割以上が無担保融資です。

また、日本政策金融公庫では経営者保証に依存しない融資を積極的に推進しています。そして、2022年度実績では47.3%が個人事業主であり、法人でなくても積極的に融資を実施していますので、無理をして法人化する必要もないという見方もできます。

基本的には、小口融資を検討するようにしてください。1,000万円を超える融資になると、ややハードルが高くなるという見方もできますので、協調融資などを検討するのも一案です。担保や保証人さえあれば、いくらでも借りることができるという金融機関ではありませんので、そのあたりも前提として理解のうえ利用を検討してください。

また、経済悪化やパンデミック、災害による被害を受けた事業者向けへのセーフティネット支援も速やかに実施されています。セーフティネット利用の場合は、即、日本政策金融公庫に相談するという意識を持ってください。

ポイント2:創業時期には積極的に活用しよう

自治体が実施している創業融資制度(自治体、金融機関、信用保証協会の3社による実施)もありますが、日本政策金融本公庫ですと窓口が1つでわかりやすいということもあり、多くの創業予定者の方が日本政策金融公庫を利用しています。

日本政策金融公庫の2022年度(令和4年度)の創業前および、創業後1年以内の企業への融資実績は2万5,500先となっています。

また2024年4月以降、日本政策金融公庫においては「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できるようになりました。さらに自己資金の要件が撤廃され、利率は一律0.65%引き下げられています。このように緩和・拡充されていますので、創業時期にはうまく日本政策金融公庫を活用するようにしてください。

ポイント3:日本政策金融公庫の「無保証人制度」と無担保・無保証制度である「マル経融資」を知ろう

日本政策金融公庫の通常の無保証人制度のほかに、小規模事業者においては商工会議所や商工会などが実施している、マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の利用もおすすめします。

マル経を利用するためには、原則6か月間の経営指導などが必要(各商工会などにもよる)ですので時間がかかりますが、無担保・無保証、低金利ですし、商工会議所や商工会などの推薦を得られると、その後の融資手続きはスムーズです。そういう意味において、マル経なども活用しながら日本政策金融公庫を活用するという考え方も一案です。

(参考)

ポイント4:メインは民間、補完金融として日本政策金融公庫を活用しよう

日本政策金融公庫は政府系であり、民間金融機関の補完的な立場の金融機関になります。民業圧迫になりかねないため、日本政策金融公庫がメインバンクとして支援することはありません。また、日本政策金融公庫は預金口座がありません。

しかし、創業時などは中心的な立ち位置で創業融資による支援を実施してくれます。創業時は日本政策金融公庫を利用しても、その後の成長のためには地元の地方銀行や信用金庫、信用組合などとお付き合いすることをおすすめします。たとえ小規模事業者であっても、日本政策金融公庫と民間金融機関をバランスよく活用していきましょう。

ポイント5:日本政策金融公庫を常に利用するように心がけよう

繰り返しになりますが、日本政策金融公庫はメインバンクにはなり得ません。しかし、日本政策金融公庫から「常に借りておく」という考え方も一案です。

創業時に多くの方が利用されていますが、返済したらその後はほとんど利用していないケースもあります。融資を全額返済して、その後、数年経過した際に融資の申し込みをすると「新規取引」と同じ扱いをされてしまい、審査が非常に細かくなる可能性があります。一方で、常に借りて返済実績を重ねて一定の残高を継続していると、追加融資の審査などが比較的スムースに進行する場合があります。

日本政策金融公庫は政府系であり、あくまでも補完的な金融機関ではありますが、民間金融機関と同じように常に残高を維持するという考え方も決して間違いではありません。

融資業務以外での活用方法

日本政策金融公庫は融資業務以外にも、事業承継支援、M&A支援、ソーシャルビジネス支援、海外展開など幅広い支援や情報発信などを実施しています。融資以外の相談にも応じてくれる窓口もありますので、ぜひ利用してください。

また、日本政策金融公庫は事業性融資以外にも教育ローンも実施しています。事業融資を受けている事業者も教育ローンは利用可能です。

(参考)
重点的な取り組み|日本政策金融公庫

〈特に注目してほしい支援サイト〉
事業承継マッチング支援(M&A支援)|日本政策金融公庫
事業承継お役立ち情報|日本政策金融公庫
社会的企業・NPO向けソーシャルビジネスお役立ち情報|日本政策金融公庫
海外展開ゼロイチ+|日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、国が株式の100%を常時保有する旨が法律で定められた、民間の金融機関とは異なった政府系金融機関であり、銀行や信用金庫といった民間金融機関から融資が受けにくい事業者をサポートしています。既に事業をスタートしている事業者に限らず、会社を新規設立する場合や新しく起業・開業を予定している事業者も融資が受けることが可能です。ぜひ、上手に活用していきましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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