中間値の定理の意味と多変数関数への応用 | 高校数学の美しい物語

中間値の定理の意味と多変数関数への応用

中間値の定理

axba\leqq x\leqq b で連続な関数 f(x)f(x) を考える。f(a)f(a)f(b)f(b) の間にある任意の実数 kk に対して,f(c)=kf(c)=k となる c(acb)c\:(a\leqq c\leqq b) が存在する。 中間値の定理

中間値の定理の意味

中間値の定理の意味はグラフを描けばわかります。大雑把に言うと2点 A,BA,B を結ぶような曲線は必ず赤い直線と交わるという定理です。 中間値の定理の意味

交点が f(c)=kf(c)=k となる点 (c,k)(c,k) です。

たしかに赤い直線を横切らずに AABB を結ぶことはできないので当たり前の定理です。

まずは,三角関数が登場する簡単な例題です。

例題1

方程式 sinx=23\sin x=\dfrac{2}{3} の解が,π6xπ2\dfrac{\pi}{6}\leqq x\leqq \dfrac{\pi}{2} の範囲に存在することを示せ。

解答

f(x)=sinxf(x)=\sin x は連続である。

23\dfrac{2}{3} は,f(π6)=12f\left(\dfrac{\pi}{6}\right)=\dfrac{1}{2}f(π2)=1f\left(\dfrac{\pi}{2}\right)=1 の間にあるので中間値の定理より f(x)=23f(x)=\dfrac{2}{3} の解が π6xπ2\dfrac{\pi}{6}\leqq x\leqq \dfrac{\pi}{2} の間に存在する。 中間値の定理の例

このように,中間値の定理を使うことで方程式に解が存在することを証明できます。

なお,入試問題では特に「f(a)f(b)<0f(a)f(b) <0 ならば f(c)=0f(c)=0 となるような ccaabb の間に存在する」という形で頻出です。

応用問題

これ以降はかなり難しい話です。

中間値の定理の多変数関数への拡張を考えるために以下の数オリの問題(を少し変えたもの)を考えてみます:

例題2

x+y+z=1x+y+z=1 を満たす任意の非負実数 x,y,zx,y,z に対して,

f(x,y,z)=xy+yz+zx2xyzf(x,y,z)=xy+yz+zx-2xyz

のとりうる値が 00 以上 727\dfrac{7}{27} 以下のすべての実数であることを示せ。

  • 0f(x,y,z)7270\leqq f(x,y,z)\leqq\dfrac{7}{27} であることの証明は省略します。気になる方は→1984年IMO第1問の解説

  • ここでは,f(x,y,z)f(x,y,z)00 以上 727\dfrac{7}{27} 以下の値を全てとりうることを中間値の定理で証明してみます。ff は多変数関数なのでうまいこと一変数関数に変換してから中間値の定理を使います。

証明

f(x,y,z)f(x,y,z)(0,0,1)(0,0,1) で最小値 00(13,13,13)\left(\dfrac{1}{3},\dfrac{1}{3},\dfrac{1}{3}\right) で最大値 727\dfrac{7}{27} を取ることに注意して,

tt の一変数関数 g(t)g(t)

g(t)=f(t3,t3,12t3)g(t)=f\left(\dfrac{t}{3},\dfrac{t}{3},1-\dfrac{2t}{3}\right)

と定義する。

g(0)=0,g(1)=727,g(0)=0, g(1)=\dfrac{7}{27},

gg は連続。

よって,一変数関数の中間値の定理が使えて,

任意の実数 k  (0k727)k\;(0\leqq k\leqq \dfrac{7}{27}) に対して

g(c)=kg(c)=k となる cc0011 の間に存在する。

よって,(x,y,z)=(c3,c3,12c3)(x,y,z)=\left(\dfrac{c}{3},\dfrac{c}{3},1-\dfrac{2c}{3}\right)

とすれば x+y+z=1,x,y,z0x+y+z=1, x,y,z\geqq 0 を満たし,f(x,y,z)=g(c)=kf(x,y,z)=g(c)=k となる。

よって 00 から 727\dfrac{7}{27} まで全ての値をとりうる!

多変数関数の中間値の定理

さきほどの例を一般化してみます。二変数関数 f(x,y)f(x,y) に対する中間値の定理です!三変数以上でも全く同様です。

2変数関数の中間値の定理
  • ff は連結な領域 DD 上で定義されている。つまり定義域内の任意の2点 (x1,y1)(x_1,y_1)(x2,y2)(x_2,y_2) に対してそれを結ぶ曲線 ll がある。
  • ff は連続。

このとき,f(x1,y1)f(x_1,y_1)f(x2,y2)f(x_2,y_2) の間にある任意の実数 kk に対して,ll 上の点 (xc,yc)(x_c,y_c)f(xc,yc)=kf(x_c,y_c)=k を満たすものが存在する。

さきほどの数学オリンピックの例を一般化するだけで全く同様にして証明できます。

イメージは一変数の場合と同じです。

「高さの違う2点を結ぶとき,どんな道を通ってもその中間の高さを絶対に一回は横切る」

「高さ」とは関数値のことです。

二次元の中間値の定理

図の説明:山の地図だと思ってください。 (x1,y1)(x_1,y_1) が出発点。 (x2,y2)(x_2,y_2) が山頂。登るルート ll として青い線を選んでも赤い線を選んでもOK。水色の領域が定義域 DD 。山頂を目指すときにどういうルートで登っても任意の標高を一回は通過する!

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多変数関数は大学に入ってから本格的に学びますが,一変数関数のときのイメージが非常に重要です。

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