2021年 11月 17日
フォルテピアノを求めて冬の旅へ…
最近、クリスティアン・ベザイデンホウトの弾くフォルテピアノの音色に魅せられている。
彼は1979年に南アフリカで生まれたオーストラリアのピアニスト。
先日少し書いた《詩人の恋》でこの人の音楽を初めて聴き、その夢のようにはかなくまるで降り始めの淡雪のように消えるフォルテピアノの響きがとても好きになった。
彼は、エラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラとの共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲も録音しており、そちらも生まれたての音楽が眼前で繰り広げられるような新鮮な魅力に満ちた名演で、今最も好きなベートーヴェン演奏かも知れない。
そして今聴いているのがハイドンのピアノ・ソナタ集。
清潔でありながら微かに哀しみをたたえたフォルテピアノの響きがハイドンの音楽にはとてもふさわしいし、その少し謎めいた陰影がスカルラッティーの音楽を思わせる所もあって、聴いていると次第に別世界に誘われるような気持ちになる。
このアルバムには現在のドイツ国歌の旋律となっている弦楽四重奏曲「皇帝」第2楽章のハイドン自身による鍵盤編曲版も収まられていて、こちらもどこか夢の中を彷徨うような幻想的な味わいに満ちた演奏でとても美しい。
これから年末にかけて、しばらくフォルテピアノによる幻想的な音楽の世界を探し求める冬の旅が続きそうな予感がしています。