2021年 04月 17日
「わからない話」
空が無いといった
そして今百合子は
東京には来ないでといふ
ほんとうに来ないでといふ
僕は驚いて新聞を見る
東京五輪開催といふ文字が踊る
こんなに近くにいて
東京にも行けないといふのに
世界中の選手は集まれといふ
僕は空を見上げて途方にくれる
令和三年四月
『百合子抄(ショウ)』より
桜若葉も繁る間に在るのは、
切つても切れない
政治家たちの癒着と恫喝。
どんよりけぶる地平のぼかしは
五つの輪に滲む濁つた金だ。
智恵子は近くを見ながら言ふ。
永田町の山の上に
毎日出てゐる青い空は
智恵子のほんとの空ぢやないといふ。
あどけない空の話である。
はんきちさん
僕は昨夜小池といふ人が昨夜言った「エッセンシャルワーカー以外の人は東京に来ないで下さい」という言葉を聞いて、ふいに智恵子の「東京には空がない」といふ言葉を思いだしました。
まずエッセンシャルワーカーがわからないし、そんなにいふならもう都市封鎖をしたらどうか、何なら荒川に関所を設けたらどうかなどと様々な考へが頭をよぎり、高村光太郎の「あどけない話」を「わからない話」としてリメイクしたのでした。
ちなみに「百合子抄(ショウ)」も「小池劇場」といふ言葉のリメイクです。
あ、ここでリメイクといふ言葉を使ふのも、え、いかにも百合子流、でしょうか。